貞観政要は、唐王朝の二代目 太宗李世民626〜649年のお話。帝王学、トップの心得をまとめたもの。
この本は、遣唐使で伝えられて、明治天皇、昭和天皇や尼将軍の北条政子、徳川家康も愛読していたほど。歴史ロマンがある。
いつの時代にも、トップやリーダーは重い責任を背負っており、それなりの覚悟が必要で
...続きを読む、本書から学んできた歴史がある。
本編は、全十巻もあるそうで、それを筆者が編集してくれた親切な本となっている。
いずれもシンプルなメッセージで、事柄ではなく人に向けた教訓で、心に響く。
◇創業か守勢か。
創業、守勢とも、それぞれで大変であるが、築き上げたものを、守りながら繁栄させていくことは、難しい。
その心得となるのが貞観政要。
◇我が身を正す。
トップは部下の手本、信頼を得て説得力を持つには正しく自分を戒めなければならない。
これを維持するためには、手本となる人を見つけたり、古典に学んだり、緩んだ時に諫言をくれる部下との信頼関係を築くことが必要。
またトップの信頼がないと部下は、従っているように見えて、心服していない。これでは長続きしない。
そして、どんなに名君であっても、人間なので失敗、緩む時がある。部下、周りから諫言されても、我が身を正すという観点で受け入れることも大事。これはわかっていても難しいこと。
◇緊張感を持続する。
政治が安定している時にこそ油断なく、緊張感を持って臨むことが重要。
気付いた事があれば、心の中に思っている事があれば、遠慮なく口に出さなければいけない。
このことは、トップだけがではなく、組織全体でその覚悟・意識を持っていなければならない。
全ては、小事から大事に至る。
少しの気の緩みで、これくらいはいいだろうということがいけない。
将来の大事に至る小事を見極めるのが、トップの仕事。
◇諫言に耳を傾ける。
トップも人で暴走する事がある。
おべんちゃらを言う部下は可愛いが、気がつけば周りは全て茶坊主という事態となる。
本当の情報があがってこなくなり、判断を誤ることになる。
そういう意味で外部からの経営幹部を受け入れることは、腐敗を排する有効な手段なのだろう。
◇自己コントロール。
欲は、何かを成し遂げるには良いが、制限が効かないという特性がある。また無欲だと発展が無い。
名君と暴君は、自己コントロールにかかっている。
私利私欲に向かない、無私、自己犠牲の精神で人民を引っ張る。公の心を持つ。
上杉鷹山が領内より罪を犯した罪人が死刑執行の際、自身の反省として自室にこもる。法を犯す者を出したのは上の責任だとして、自分の罪と捉えている。
すごい。
◇謙虚にそして慎重に。
リーダーは責任がある。皆の生活に責任があるのだから、慎重に判断し、負けない判断が必要となる。
そして謙虚でないと、部下も聞いてもらえないと思い諫言はしてくれない。
◇初心忘れるべからず。
はじめは熱意を持って取り組むが、無私を何年も続けると、緊張感が緩んでくる。
自身の心の状態を知ることが大事。
太宗が完璧ではなく、少しゆるんだり人間的な面を見せることも、親しみやすく、この本の守勢の難しさに説得力を持たせている。