相手との距離が縮められない人や、会話が続かない
ような人を救うと位置づけられた一冊。人とのコミュニ
ケーションを深めるために大切なことは「何を話すか」
ではなくて「何を聞くか」だという考えに基づいて、25の
キラークエスチョンを挙げて、その使い方と効用を説いて
いる。
確かに、なるほど
...続きを読むと思うようなクエスチョンになっている
のだけれど、ワタシがこの本から感じたのは、これら
クエスチョンそのものではない二つのこと。
一つは、ファンタジークエスチョンのすすめと題された
19番目のクエスチョン「今ここにタイムマシーンがあっ
たらどうする?」を読んで感じたこと。
この章を読んで、最近まったく夢をみていないという
ことにはたと気づいた。ここで言っている夢というのは、
眠っているときにみる夢ではなくて、空想や妄想のこと。
目の前の現実や生活を慌しくこなすことで一日が終わって
いて、こういう夢をみる時間がなくなっている。
でも、馬鹿げたことや奇想天外なことを空想するゆとり
って持つべきなんじゃないか。それが日々の生活に潤い
を与えてくれるんじゃないか。筆者の山田さんが指摘する
とおり、"方法論や定石の中でみんなが行き詰っている
とき、軽々と壁を飛び越えることができるのは案外、常識
外れの空想や妄想だったりする"のかもしれない。
そんなことを考えた一章だった。
もう一つは、ラストクエスチョンと題された26番目の
クエスチョン「あなたはなぜ今、この本を読んでいるの
ですか?」の章に記された筆者・山田さんの思い。
人通りの多い繁華街を歩いていたとき、老人が仰向けに
なって真っすぐに倒れていた。その時のことをこう書いて
いる。
"ところが、男が明らかに異常な状態で倒れているのに、
誰ひとりとして彼に声をかける者はいなかった。まるで
ゴミでも落ちているかのように、みんな男を避けながら
足早に歩いていた。
最悪なのは僕も同じで、人を待たせていることを心の
言い訳に、男に話しかけることはしなかった。
自分を含めて、世界のすべてが嫌になった。"
この一節に、正直、頭をガツンと殴られたような感覚に
陥った。それは、この嫌悪感をワタシも感じたことが
あるから。
山田さんは、今この時代は他者への関心が明らかに
弱まってきていると嘆いて、会話をすることの意義を
こう説く。
"忘れがちなことだけど、会話というのは質問と応答の
くり返しで成立するものだ。そして質問は、相手に関心
がないとできない。
つまり会話とは、他者に興味関心のある者にしか本来
できないものなのだ。「大丈夫?」と聞ける人は他者に
関心のある人だろう。つまり、「愛」のある人なのだ。
…(中略)…自分以外の世界に対する関心の強さが
その人の愛の強さなのだ。"
前述した嫌悪感を感じなくなったらもうオシマイ。この
嫌悪感を忘れずに、もう一歩踏み込んで「大丈夫?」と
声をかけられるような愛をもった人間でありたい。
そんなことを考えさせてもらった。
予想外にワタシに効いた一冊。五つ星。