再読です。
ややドロドロした本が続いたので、真っ直ぐな物語が読みたくなって。
江戸時代、両側を川に挟まれながら台地ゆえに水が回らず、困窮する村々。そこの五人の庄屋が立ち上がり、私財をなげうって筑後川に堰を設けて村に水を引くまでの物語です。
彼らの無私な熱意は藩を動かし、最初は反対をした他の庄屋や町の
...続きを読む商人をも巻き込み突き進んでいきます。
悪人が一人も出てこない、真っ直ぐな話です。真直ぐゆえに、ストーリーの曲折は少ないのですが、それを十分にカバーする力があります。
でも、地図くらい付けて欲しかったなぁ。どうも水路の構造が理解できずに、話が見えなくなるところがありました。
==================
12-055 2012/06/07 ☆☆☆☆☆
『国銅』に続く帚木さんの2作目の歴史小説です。奈良時代と江戸時代の違いはあれ、難工事に臨んだ庶民の話というテーマは同じです。
「大石堰」とか「五庄屋物語」で調べると様々な記録がネット上に存在します。帚木さんは福岡県小郡市生まれ、調べてみると大石堰の近くです。たぶん小さい頃から聞かされていた話なのでしょう。
読み応えのある、ページをめくる手が止まらなくなる様な上下巻です。全ての登場人物が見事なほど善人として描かれ、その分物語として浅くなった感じはするものの、それを補って余りある程に貧農の痛々しいまでの生活と諦念が書き込まれます。
庄屋達の見事な心意気、それを支える武家や商人達、そして希望の未来へ進み始める農民たち。
帚木さんらしい端正で抑制の効いた文章と相まって、静かで爽やかな感動を生む作品です。