帚木蓬生のレビュー一覧

  • 安楽病棟
    長編ではあるが、ショートストーリーが集まったような構成。一つ一つ良い内容であり、考えされるものである。とても良い。
  • アフリカの瞳
    アフリカにある某国でエイズ勢力が跋扈している。アパルトヘイトから解放された矢先のエイズ禍。低所得者層では、効果的な抗エイズ薬は買えない。彼らは製薬会社から人体実験のモルモットにされ、黒人政府には踏み台にされていた。そんな所に日本人医師・作田が多くの人達と共にエイズと戦う。
    興味深く読むことができた。...続きを読む
  • 水神(下)
    水に恵まれない土地で愚直に懸命に生きる百姓たち。
    渇水に苦しむ村に、筑後川の水を分配する工事を考える庄屋助左衛門。
    近隣の村の庄屋達と共に五庄屋が身代と命をかけて取り組む大事業を描く話です。
    上巻から読み進め、下巻では何度も涙がこみ上げてきた。
    村の百姓たちも庄屋も侍も金貸も、それぞれに感情移入して...続きを読む
  • 白い夏の墓標
    科学的な内容が大半を占めているが、人物の表現は純文学のよう。知的興味をそそる一方で、登場人物の切ない思いが綴られた良作。
  • 国銅(下)
    長門の奈良登りで過酷な苦役の日々を送る国人が、
    大仏造営命を受け仲間と共に奈良へ旅立つ・・・

    黒虫の考え方、言葉がとても好き。
    また、歌や詩には大きな力があることを改めて感じる。
    人にとって大切なものは何か、この時代の人々の生きる様、
    色々な事を考えさせられる重量感ある話です。

    続きが気になって...続きを読む
  • インターセックス
    「エンブリオ」の続編としてのミステリー要素と、性分化疾患や性差医療を正面から取り上げるドキュメンタリー要素が交錯しあって、最後まで目が離せなかった。なんといっても圧巻なのは、IS当事者が誰にも言えずに悩み続けた挙句、それぞれがみつけ、つかんだ自分の生き方を語るシーン。語れるようになるまでに、どれだけ...続きを読む
  • 水神(下)
    百姓や庄屋の頑張りももちろんですが、反対派の庄屋や管轄する奉行の生き様も素晴らしく描かれています。
    なかなかに涙腺を刺激してくれます。
    ラストの描写はわかっていながら、「よかった。あぁよかった!」と心から思ってしまいます。
    上下巻共に素晴らしい読み物でした。
  • 水神(上)
    本書は2009年8月末に単行本として出版されているもので、本年6月に文庫化されたものだから既読本である。再読すると往々にして当初の感動イメージが損なわれることがあるのだが、本書はかつて読んだときの感動がそのまま再現された稀有な例で兎に角読んで絶対に損はさせないと太鼓判を押せる作品だ。

    本書の舞台は...続きを読む
  • 水神(下)
    本書は2009年8月末に単行本として出版されているもので、本年6月に文庫化されたものだから既読本である。再読すると往々にして当初の感動イメージが損なわれることがあるのだが、本書はかつて読んだときの感動がそのまま再現された稀有な例で兎に角読んで絶対に損はさせないと太鼓判を押せる作品だ。

    本書の舞台は...続きを読む
  • アフリカの蹄
    傑作。
    ただ感動。
    帚木さんの本はいま別のを読み進めているが、
    この"アフリカの蹄"は越えられないと思う。

    アパルトヘイト下の南アフリカが舞台。
    心臓移植を学ぶため、一人日本から留学した作田信。
    友人のサミュエルと恋人のパメラとの出会いから、
    黒人スラム街の診療所を手伝う事に。

    ある日から黒人の...続きを読む
  • 安楽病棟
    痴呆になりつつある数人の老人の描写から始まる。この人のようになるのかあの人のようになるのか……。それぞれの理由で痴呆病棟に入院になる。
    次は病院での様子を看護婦の目で教えてくれる。家族にとっての毎日は身内であるゆえの辛さや苦しさがあるのだと思える。仕事としてのほうが冷静に対応できるのかも知れない。痴...続きを読む
  • 三たびの海峡
    朝鮮から強制連行されて、無理やり炭鉱の仕事をさせられる。それが、海を渡る最初の経験。ぎりぎりで生き延びてやっとのことで国へ帰るのが二度目。三度目は炭鉱町のその後の状況を知り、自分に約束したことを為すために日本へ渡る。

    強制連行、炭鉱労働、会社の横暴、これらのことを日本人が朝鮮人に対して行ったことを...続きを読む
  • 聖灰の暗号(下)
    やはりこの作家は凄い。文句なし☆×5。13世紀フランスにて実際におきた血ぬられた過去を示す一通の古文書を一人の日本人歴史学者が偶然発見することから物語は始まる。バチカンによる実際に起きたカタリ派の粛清を史実に基づいて一級のミステリーに仕上げてある。驚愕すべきは古文書が全て筆者の創作。「 彼らの生きた...続きを読む
  • 風花病棟
    かざはなびょうとう と読むのですね。
    10人の医師が診療に携わる姿勢が、それぞれの立場や周りとのかかわり方から浮かび上がる。
    命と向き合うことを職業に選んだ彼らは、人と向き合い学びながら生きている。真摯に人と関わっている。お金のためでも自らのプライドのためでもなく。病を得た人とゆったりと真面目に関わ...続きを読む
  • 三たびの海峡
    第二次大戦中の朝鮮人強制連行・強制労働に関して
    深く考えさせられる作品だった。

    この本はフィクションだけれど、実際にこういう体験や思いをした人たちが
    大勢いたという事実は忘れてはいけないことだと思う。

    最期に彼のとった(と思われる)行動は賞賛される内容ではないし
    彼自身にとっても最善であったのか...続きを読む
  • アフリカの蹄
    心臓移植を学ぶために、アフリカに留学した日本の外科医師の物語。
    アフリカの「実際」を見ていくうちに、それまでとこれからの自分の道に違和感を感じ始める。

    国際協力がどのような意味を持つのか
    何のためにその道に進むのか
    自分の意思と照らし合わせながら読み進めた

    時代設定が人種差別のもっとも激しい時代...続きを読む
  • ギャンブル依存とたたかう
    パチンコ、麻雀、競馬、競輪…。「庶民の娯楽」という美名の陰で、急速に増えつづける依存者の群れ。この本には「地獄への片道切符」に乗ってしまった人たちの末路が描かれております。

    僕は西原理恵子を始め、伊集院静や白川道など、確実にギャンブル依存症の作家のエッセイや作品を読んで、彼らの日常を笑ってみていた...続きを読む
  • 風花病棟
    いろいろなお医者さんが出てきます。
    自分もあのなかで取り上げられるようなお医者さんになれたらいいな。
  • 風花病棟
    生きることのさみしさと、喜びとが、しんみりと沁みてくる。

    死と向き合う医者という仕事は、同時に自分の生き方をも見つめ直すことになる。

    父の生き方、戦争という歴史、貧困、癌、・・・・・扱っている題材は、どれも生き方を見つめ直させるものばかりだが、
    作中に描かれる、花の記憶が、作品に灯りをともしてい...続きを読む
  • アフリカの瞳
    ノンフィクションなのではないか?
    と思わせるほどの小説でした。

    アフリカに蔓延るエイズ、そのエイズと政府に立ち向かっていく日本人医師と彼の仲間たちの様子を描いた物です。
    世界各国でエイズは今も蔓延しています。圧倒的に多いのはアフリカですが、日本でもエイズ患者は多くいます。決して他人事ではないのだと...続きを読む