頁を繰る手が停まらなくなった。大阪を主な舞台とした事件モノである。
物語は主にブンこと文田刑事の視点で綴られる…「飯を食い損なった…」とブツブツ言う場面も多いのだが、地道に捜査活動に勤しむブン…得られた情報を整理して繋げようとし、対外的な押し出しも好い50代のベテラン刑事の総長…研修中のキャリアとし
...続きを読むて、特段に何かに励むという程のことが求められるのでもないらしい中、独自の推理で大胆に事件の謎を追う萩原…事件現場や関係者が動き回っている大阪を踏み越えて、近県や四国方面にまで捜査の手は拡がる…不思議な事件の裏に、複雑な不正が在って、犯罪の連鎖を起こしてしまっていたのだった…
ブンと萩原とのやり取りに関しては、東西の人の気質の違いや、文化のぶつかり合いというようなモノを取り込もうという意図で綴られたというようなことだが、私はそういうようにも思わなかった。これは出身や学歴や職務上の経験が様々な捜査員達が集まって活動しているという「群像ドラマ」として、何やら何時もつまらないことで言い争いをしている者達が見受けられ、居合わせる年長者が少しばかり呆れているという、多少笑える場合も在る場面として出て来るに過ぎないと思っていた。
この作者に独特な感も在る、作中人物達の軽妙なやり取りに乗って事態が疾走するというスタイル…1980年代後半、作者の「初期作品」ということだが、その頃からそういうスタイルだ…例えば、電車の駅のホームで煙草を蒸かすというような、イマドキは禁止になっている仕草の描写に“時代”は感じるのだが、相当な年月を経ても古臭くない…