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シーボルトの弟子として当代一の蘭学者と謳われた高野長英は、幕府の鎖国政策を批判して終身禁固の身となる。小伝馬町の牢屋に囚われて五年、前途に希望を見いだせない長英は、牢名主の立場を利用し、牢外の下男を使って獄舎に放火させ脱獄をはかる。江戸市中に潜伏した長英は、弟子の許などを転々として脱出の機会をうかがうが、幕府は威信をかけた凄まじい追跡をはじめる。
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Posted by ブクログ
現代に事実を知っているだけに、非常に読むのが辛く、苦しかった。 氏いわく、「事実と事実の間を埋めて行く資料が乏しい中で。考えをめぐらす作業の辛さ、面白さを語っている。が、これほどまでにリアリティに迫る文学があるだろうかと息をのむ。 間道、街道が好きでちょくちょく行くことが多い為、場面と人の息遣い...続きを読むを想像しながら読んだためになかなか進まなかった。 蛮社の獄による処刑としか習っておらず、1850年という時間にさらし首になった彼。逃亡の時間は13年。科学のツールが無い現代とは違うとはいえ、捜査から逃れる我身を守るツールもない。灼熱、豪雨・暴風、極寒積雪、そして捕縛に寄与するミラ美との目と口から逃れる全てが描かれている感じ。 上は上州・信州・越後への旅。山歩きで少しは知っているエリアだけに、わらじで着物で歩くその姿、食事の粗末さ、体力に驚嘆するばかり。
吉村昭が描く、逃亡物語は、本当に息が詰まるような緊迫感で、リアリティがすごい。 どんな取材をすれば、ここまで迫真迫る物語が描けるのだろうか。 他にも、逃亡を描いた物語にも当てはまる。 物語にグッと引き込まれてしまう。
現代に比べてSNSやインターネットなどの情報拡散ツールが圧倒的に少ないのに、各藩の村人たちの結束力や幕府の徹底した捜索により現代より遥かに逃げ延びるのが困難な世界で行く先々で多くの人に協力してもらいながら間一髪で逃げ延びる高野長英。 歴史の授業では「蛮社の獄で捕らえられたが牢屋に放火して脱獄、後に捕...続きを読むらえられて自殺」程度しか教わらなかったので詳しい背景が分かりとても面白い。下巻も楽しみ。
江戸時代の獄中はこういうものなのかと感じられた作品。 牢名主という存在があったのかと興味深く感じられた。 上巻は獄中生活から幕末の世を見ている様子が感じられる。
蛮社の獄で捕らえられた開国論者、という予備知識しかなかった。 この弾圧が理不尽なものだったのは理解できる。 高野長英というひとが、蘭学を本当に頑張って、その道の第一人者であったのもわかる。 頑張って勉強して一人前の学者になって国のために働くつもりがこんな目に遭って 逃げ出したかった気持ちは、わからな...続きを読むいではない。 ただ、他に方法がなかったのかもしれないが 彼のやり方は事有るごとに誰かを巻き込みすぎる。 逃げろ、がんばれ、と思う気持ちの裏で 巻き込まれ多かれ少なかれ犠牲になった人々のことを思ってしまうと 彼の道行きを100%応援することがどうしてもできない。
高野長英が政治犯として牢獄に入るところから小説は始まる。 牢獄内での凄惨な生活、その後との脱獄と逃亡生活。読む者の心も締め付ける程の描写。自分が他人から追われているような錯覚。 この『逃げる』ことの心理描写は、吉村昭の得意とするところで、「桜田門外の変」、「彰義隊」でも存分に堪能できる。 下巻が楽し...続きを読むみだ。
夫のふるさと岩手県水沢市の誇る文化人。生家を訪れたことがあり、墓も義母の家と同じお寺にあるので何故か親近感が沸く人物。 興味があってこの本を読み始めたけど、その生きた時代の厳しさと人間くささが印象に残る。長編小説だけど、一気に読める魅力ある一冊です。
幕府の政策を批判して収監された高野長英が脱走してからの逃走劇を描く。 逃走生活は長年にわたるが、そのあいだに長英は色んな人を頼る。人は一人では生きていけないし、いざという時に頼れる人がいることの大切さが分かる。 若干長くて、読むのに体力を要した。
政治犯として無期懲役を食らったところ金を使い脱獄。 行き先々で迷惑をかけながらも生き抜いていく生命力の強さは 史実では傲岸不遜な長英先生を表しているといえなくもない。
破牢の末、高野長英は武蔵(板橋、戸田、浦和、大宮)上州、越後から母に会いに故郷水沢へ。その逃避行は圧倒的なスリルに富み、また長英の心の動き、多くの支援する人々との暖かい交流。幕府の威信にかけた追跡はとても100年前とは思えないような鋭さで、思わず読んでいる私自身が追われているような緊迫感があります。...続きを読む私にとっては浦和(大間木)大宮(片柳)など住んだことのある近隣の場所の昔の佇まいを感じさせてくれる楽しさもありました。
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