ポプラ社ノンフィクション ジュニア版シリーズから。
『三省堂国語辞典』、略して『三国(さんこく)』の編集をしている著者が、児童にも分かりやすく「国語辞典を作ってどういうこと」を伝える。
辞書には、新しい言葉を載せたり、元々辞書に載っているが現代では意味が変わったものの書き換えを行ったりする。
...続きを読むそこで辞典を作る人達は、常に辞書に載せるための言葉を探す「ワードハンティング」をするのだ。本やテレビから得るものもあれば、町にでて自分の足で探すこともあり、これはなかなか楽しそう。学校の自由研究でも使えそうですね。
例えば「天麩羅・天婦羅」は辞典に載っているが、メニューで書かれた「天扶良」(変換できなかった!)も載せた方がいいのかな?同じ公園の立て札で「ハトに餌を『あげないで』『やらないで』『与えないで』」って数種類混合しているんだけど、それぞれのニュアンスの違いはなんだろう?(←とても面白いんだけどさ、流石に同じ公園の立て札だったら統一させないんだろうか^^; 私は仕事の案内文章やお便りでは「言葉は統一しましょう」ってチェックされるので気をつけるようにしてるんだが^^;)
載せる(修正する)言葉は決まった、しかしそれを説明する文章はどのようにしよう?現在でもたくさんの辞書・辞典が出ているが、同じ用語でも本によって説明文は違う。これは辞典の特徴によるので「編集会議」などで決めたり、先輩の文章を参考にしたりする。
著者が、説明文章を悩む章には笑ってしまいました。「ライター」という言葉を一言で説明するには?他の辞典を引いたり、ライターを買って分解してみたり(読者は真似しちゃダメよ笑)、説明文を書いては書き直しを繰り返し…、結局徹夜してできた説明はこちら。
「ライター:タバコの火をつける器具」
…ꉂꉂ(๑˃▽˂๑)…発火石だとか電子だとか、理由はどうでも良くてとにかく「火をつける」って、徹夜してたどり着いたこの一文!
これね、気持ちはわかるんですよ。私も児童向け案内文章で「SDGSとは何か」「葉っぱは何故紅葉するのか」などを子供に分かる言葉で2行で書くために1時間はかかりますから( ˙◊˙ ;)
現在ではインターネットが発達して、紙であろうと電子であろうと辞典で調べることが少なくなったという事実がある。しかしインターネットにはない辞典の良さもある。インターネットだと誰が書いているのか分からず信憑性に欠けたり、学問的すぎると大変長く難しいこともある。そこで著者は学問的はさておき、「日常で知りたい範囲だったら三国で調べてね」ということを心がけて簡素な文章にしているのだそうだ。
そして辞書に載せる言葉は時代により変わる。「ヤバい」が悪い意味から良い意味に変わったような言葉の変化もあるし、「パねえ」のような新しい言葉が定着することもあるし、「普通に良い」という日本語の教科書に載っているのとは違うニュアンスを説明する必要も出てくる。
言葉として間違っているように思えるが、しかし言葉というのは理由があり生まれるものだ。「普通に良い」が定着したのは、その言葉でないと表せない事象があるのだからそれを辞典に載せたい。
そんなこんなで言葉ハンターである著者。「言葉ハンター」というのは、言葉って面白いんだ、その面白さをみなさんに知ってもらいたい!という言葉好きな人のことなんです。