啓文堂新書大賞でみて。
非常に面白かった。
難しい単語を使っていないし、
例えが絶妙でわかりやすかったし。
例えば、
人間と人間以外の動物に隔たりがあるのは、なぜか。
人間が徒競走で圧倒的な1番となったのは、
足が1番速かっただけでなく、
2番手から25番手の走者が休んだから。
つまり、2番手から25番手の人類が滅んだから、とか。
むかし、馬に噛まれた人がいて、でも電車に乗って帰った、
それは馬が草食動物であり牙をもってないためで、
犬歯が小さいため殺人には凶器が必要な人類も同じだ、とか。
森から草原に追い出されたことが、
人類が人類である直立二足歩行の始まりであったという説は知っていたが、
その直立歩行が敵を見つけるには便利だが、敵にも見つかるとか、
見つかったら最後、短距離走に弱い直立歩行では逃げられないとか、
確かに言われてみればそうだ、という点を指摘されるのは、
ある意心地よい感じ。
類人猿の中での人類の二大特徴である、犬歯の小ささと直立二足歩行から紐解かれた、
人類誕生はこんな感じ。
発情期がなく、授乳中も交尾化なことから、
おそらく一夫一妻制であった人類は、
自分の妻子に食糧を運んでくるために直立二足歩行を進化させ、
雄同士争う必要がないので犬歯は小さくなった。
既成の知識がひっくり返されるのも、
背負い投げをきっちり決められたようで、気持ちがいい。
石器や骨格の研究から、
脳が大きくなって石器を使い始めたのではなく、
石器を使い始めてから(肉を食べられるようになり)、
消費エネルギーの高い脳を大きくすることができた、とか。
石器については、
獲物を倒すために使われていたのではなく、
最初、死肉を食べるために使われていた、とか。
さらに、
草原で動物の死骸を探して食べるのには、
長距離歩行、長距離走が可能という直立二足歩行が利点となり、
さらに肉を妻子の元に持って帰ることより、
ホモ属が生き残っていった、とか。
種として生き残るためには、
個体としてる強くなることよりも、
集団として食べられるよりも多く産めば良いとか。
また、以前より抱いていた疑問、
ホモ・サピエンスより体格が良く、狩猟生活に向いていそうなネアンデルタール人が
なぜ滅んだのかということについても書かれていた。
端的に言えば、寒さとホモ・サピエンスだが、
ホモ・サピエンスの、動き回るのが得意な燃費の良い細い体、
寒さに対する優れた工夫と、力を必要としない優れた狩猟技術だろうということだった。
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの交雑については、
もうちょっと触れてほしかったかな。