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“ただの人間には興味ありません”がありません『涼宮ハルヒの憂鬱』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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今回は『涼宮ハルヒの憂鬱』をレビューします。漫画版は完結から7年が過ぎていますが、原作小説はなんと9年半ぶりとなる新刊『涼宮ハルヒの直観』が出たばかり。いまレビューせずしていつするか! というわけで、言わずと知れた大ヒット作、宇宙人や未来人や超能力者たちとハチャメチャで面白おかしい非日常を過ごす学園物語です。

原作小説の著者は谷川流(たにがわ・ながる)さん、キャラクターデザインはいとうのいぢさん。コミカライズの担当はツガノガクさんで、2005年から2013年までKADOKAWAの「月刊少年エース」で連載され、単行本は20巻で完結しています。ストーリーは、2011年に刊行された原作小説の11巻『涼宮ハルヒの驚愕(後)』までを、多少の前後はありますが、おおむね忠実に辿っています。

『涼宮ハルヒの憂鬱』作品紹介

涼宮ハルヒの憂鬱

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完結『涼宮ハルヒの憂鬱』 全20巻 谷川流・ツガノガク・いとうのいぢ/KADOKAWA
『涼宮ハルヒの憂鬱』を試し読みする

世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団

周囲の目なんかまったく気にせず、思い立ったら即行動のハチャメチャ女子高生・涼宮ハルヒ。そんな彼女にいつも振り回される普通の男子高校生キョン(本名不明)。無表情で寡黙な自称宇宙人・長門有希。先輩で萌え担当の自称未来人・朝比奈みくる。“閉鎖空間”で暴れる光る巨人“神人”と戦う“機関”のメンバーで自称超能力者・古泉一樹。そんな4人が所属しているのが、通称「SOS団」という同好会。

(S)世界を
(O)大いに盛り上げるための
(S)涼宮ハルヒの団

の略という、思いつきにもほどがあるだろ、と言いたくなる名称です。命名はもちろん、団長・涼宮ハルヒ。でも、なぜこんな名称にしたのか? は、のちに判明します。派手な設定から細かなエピソードまで、実はいろいろちゃんと繫がっているのもこの作品の魅力です。

放課後になると不法占拠した文芸部部室に集まってお茶を飲んだりコスプレしたりゲームをしたり、休みになったらなにか面白いことを探しに行こうと集まってお茶したり。わりと普通な高校生活をエンジョイしているようで、実は少し(S)不思議(F)な出来事と遭遇していたり、でも涼宮ハルヒ自身は気付いていなかったり。「ビミョーに非日常系学園ストーリー」という作品のキャッチコピーは、実に絶妙です。

私ももういい年なので、読んでいるともう遠い過去となった青春時代を思い返したり懐かしくなったり自身の黒歴史にギャーッとなったりもするのですが、そのいっぽうで、いい年していまだにわりと涼宮ハルヒに共感できるところもあったりするのです。面白くない日常は、自分で面白く「する」ものだ、と。結局のところ自分次第。楽しんだもの勝ちだと思うのですね。

あの有名なセリフが、ない。

何度も繰り返し読んでいる作品ですが、とはいえ最後に読んでからしばらく経っていたため、本稿を書くのにあたって改めて1巻を開いてみて驚きました。冒頭の高校入学直後、クラスメートに涼宮ハルヒが自己紹介をするあの強烈な印象のシーンに

「ただの人間には興味ありません。」

がありません。名乗ったあとすぐに、

「この中に宇宙人・未来人・異世界人・超能力者がいたら あたしのとこへ来なさい 以上!」

と続くのです。原作小説やアニメで有名なセリフではあるのですが、なんと漫画版では欠けている! 十数年越しの衝撃でした。あ、いえ。決して批判するつもりではなく。あらゆるセリフを完全に原作と一致させる必要などありませんし。むしろ、何度も読んでいたはずなのに、いまごろ気付いたのか! と自分にびっくりした次第です。

涼宮ハルヒの憂鬱

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完結『涼宮ハルヒの憂鬱』 全20巻 谷川流・ツガノガク・いとうのいぢ/KADOKAWA
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『涼宮ハルヒの憂鬱』のレビューページ

関連ページ

「涼宮ハルヒシリーズ」角川スニーカー文庫特設ページ

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