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完結直前!今だからこそ「貞本エヴァ」を読むべき!|RABマロン話題の漫画レビュー

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マロンさん『新世紀エヴァンゲリオン』バナー

どーもマロンです!さぁ新年一発目の漫画レビューです!
今年、時代を代表するアニメ映画が公開されます…何かわかりますか…?
そう!ついにシリーズ完結となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されますー!そこで今回はキャラクターデザインを務めた貞本義行さんが描くもうひとつのエヴァンゲリオン…漫画版「新世紀エヴァンゲリオン」をレビューしたいと思います!

新世紀エヴァンゲリオンとは

新世紀エヴァンゲリオンは1995年10月4日から1996年3月27日にかけて放送された全26話のTVアニメである。1997年には劇場版も公開され衝撃のラストに物議を醸した。大災害「セカンドインパクト」が起きた世界を舞台に、巨大な汎用型決戦兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットとなった14歳の少年少女たちと第3新東京市に襲来する謎の敵「使徒」との戦いを描く。
第三次アニメブームを生み出す程社会現象となり、キャラクターの精神描写と、謎が謎を呼ぶ難解ストーリー、斬新な表現でセカイ系と呼ばれる新たなジャンルを作り上げた時代を代表するアニメである。
2007年からストーリー、設定を再構築した『新劇場版ヱヴァンゲリヲン』シリーズ4部作が始まり、いよいよ今年完結を迎える。

マロンとエヴァンゲリオンとの出会い

エヴァンゲリオンには複数の魅力がある。キャラクター、メカニック、難解なストーリー、ディテールの細かい世界観、デザインセンス。
筆者がハマったきっかけはキャラクターである。中学生の頃にエヴァンゲリオンの旧劇場版が公開される時期にエヴァンゲリオンのキャラクターが様々な場所で目に触れるようになった。その度「なんて無駄の無い線だ…!」と子供ながらに思いました。90年代のアニメのキャラクターデザインは大きな目や前髪だったり、極端なディフォルメが多い中、エヴァのキャラクターは非常にシンプルなデザインであった。目も鼻はこれ以上大きくても小さくてもダメという絶妙なバランスだった。そんな絵が気になり始めた頃、深夜にエヴァンゲリオンの一挙放送が始まり、それを観てからはハマるのは一瞬だった。
最初はロボではなく人造人間という設定に新鮮さを感じ、ロボットにはできないしなやかなアクションが気持ちよかった。アスカ登場からはシンジとのラブコメ的なやり取りも楽しく見続けていたら、後半から漂う異常な空気感にやられ、憑りつかれたようにアニメに没頭。劇場版を観終わった後はあまりの衝撃に放心状態になったほど。

もうひとつの世界「貞本エヴァ」とは

そんなエヴァのキャラクターデザインを務めた貞本義行さんが漫画を描いたのがいわゆる『貞本エヴァ』である。アニメが原作であるものをコミカライズしたものでキャラクターデザインをした本人が執筆するのは大変珍しいのではないだろうか?これは貞本さんがアニメーター・イラストレーターでありつつ、アニメ雑誌「ニュータイプ」にて連載経験もあったからだろう。
貞本エヴァのまず重要となる所は圧倒的な”公式感”である。エヴァンゲリオンの魅力には当然キャラクターデザインもあった。特に綾波レイの当時の人気は凄まじく、芸能人がコスプレをしたり、漫画やゲームにも綾波レイを意識したキャラクターが乱立したほどだ。そんな貞本さんの描く美麗なキャラクター達は漫画の中でも”本物”の輝きがあり、アニメと漫画との違和感を無くした。
そして今なお論議されるエヴァの世界の謎…当時はいくつもの謎本が出版され、ネットでは様々な論争が飛び交った。その度ファンは少しでも謎を解くためにヒントを集めようとアニメや設定資料集、庵野監督のインタビューなど隅々までチェックした。そんな中でファンが注目したのが貞本エヴァである。
貞本エヴァではアニメで語られなかった設定や、濁していた部分がわかりやすくまとめられている。これは岡田斗司夫さんのYouTubeチャンネルでも語られているが、貞本さんが曖昧なものを描くのを嫌うらしく、非常に難解なエヴァンゲリオンをわかりやすくまとめられているという。

アニメ版エヴァと貞本エヴァの違い

では大まかにアニメ版のエヴァと貞本エヴァの違いはどんなところか書き出してみよう。まずシンジの性格が少し違います。
アニメ版は内気な少年という感じでしたが、貞本エヴァのシンジはその当時の若者像である無気力、無関心、無感動といった感じ。時にはクラスメイトの鈴原トウジやエヴァ二号機のパイロットである惣流・アスカ・ラングレーに毒を吐くなど若干腹黒い一面を見せる。
更にアニメ版でもショッキングなトウジが左足を失うシーンは、トウジの「死」へと変更されよりハードな展開となった。(これはプロデューサーから子供が死ぬのは止めてくれと言われたからで、企画当初では死ぬ予定だったのである意味設定通りであるらしい)
一番の違いは最後のシ者と呼ばれる渚カヲルかもしれない。アニメ版は完璧超人といった感じで、全てに達観した考えを持ち、感情が揺れる事などなかったのだが、貞本エヴァではシンジと価値観の違いでぶつかり合いながらも親睦を深めていくという、シンジと同世代の少年のような描かれ方をしています。その中でシンジの

「前歯全部折ってやる」

というアニメ版では絶対聞けないであろう台詞も生まれました。(笑)
そしてシンジの父親である碇ゲンドウのシンジへの愛憎入り混じった妬みが描かれている。これはアニメ版には描かれなかった感情で、妻のユイの愛情を一心に受けるシンジを妬んでいたとある。
このようにキャラクターの感情の動きはアニメよりわかりやすくなっている。
こういった人物像だけではなく、ストーリー展開上描かれなかった使徒もいたりする。

観たかったエヴァ

エヴァンゲリオンは本来、大団円で終わる予定であった。(企画書の最終回に大団円と書いてある)しかし、庵野秀明監督の完璧主義によりアニメの制作はレッドゾーンに突入、庵野監督の精神状態も不安定となり、それが作品にも反映された。それゆえにエヴァは伝説的な作品になったとも言えるが、多くの視聴者が望んだラストとは違ったものとなった。それを証拠にエヴァは多くのハッピーエンドの結末を迎える二次創作が作られ、公式からのスピンオフで、ゲームや漫画などでも視聴者が望むべくラストを用意された。しかしそれはあくまでスピンオフであり視聴者の渇きを癒すものではなかった。
どれもファンにとっては”本物”ではなかったのだ。だが前述でも書いたように漫画には”公式感”があり、紛れもなく本物エヴァだった。
そんな中、原作には無い綾波レイとの交流や旧劇場版でアスカ量産機に襲われるシーンでシンジが助けに入るなど、当時の僕はえらく感動した記憶がある。それでいてエヴァの世界観を逸脱しないバランスで物語を展開して見せてくれた。
最終回は救いのあるラストで、エヴァの世界には無かった冬の世界も見せてくれたのには驚いた。キャラクター達が穏やかな日常を過ごすあのラストに救われた人も多いのではないだろうか。

なぜ今貞本エヴァを見るべきか

僕はエヴァンゲリオンが大好きなのだが、人に勧めることがなかなかできない。それはキャラクターの思考やストーリーが難解であり、視聴者の希望の展開にはならないからである。僕は人に作品を勧める時、その作品を見て、「スカッとする」「ゾクっとする」「感動する」「笑える」など、どういう気持ちになって欲しいかを大切にするが、エヴァに関してはどんな感情になるか全く予測ができない。
しかし貞本エヴァは一本のストーリーにちゃんとまとめ、キャラクターの心情がわかりやすく、落ち着くところに落ち着いている。(そんなのエヴァじゃねーって人もいるかもしれないが)
今から『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に向けて作品予習しようとする人がいたら、恐らくTV版を観て頭に「?」が浮かび、旧劇場版を観て「???」が浮かぶことだろう。そんな時は漫画版を読む事をお勧めする。読めばエヴァとはどういう話だったのかスッと入ってくるだろう。それを踏まえた上で新劇場版を観ればより『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を楽しめます。
テレビ放送開始から25年経った今、あの時衝撃を受けた僕たちエヴァチルドレンの中でまだエヴァは完結していない。一体どんなラストを見せてくれるかはわからないが、観終わった後、僕たちはようやくチルドレンから大人になれる気がする。

さぁ!準備はできた!どんな最後も受け入れるぞ!

紹介した作品はこちら

『新世紀エヴァンゲリオン』

完結『新世紀エヴァンゲリオン』 全14巻 貞本義行・カラー/KADOKAWA

RABマロンの描く”シンジ、レイ、アスカ”!

マロンさん『新世紀エヴァンゲリオン』バナー

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