「できなかった自分にしか拾えない気持ちがある」
「できなかった自分だけが見つけられる才能がある」
夢に破れた重い経験を持つ者が放つ言葉に心打たれました。
子供の頃の夢はサッカー選手でした。文集でもそう書いていましたが、実際はそんなのなれるわけなんてないと小学生ながら分かっていましたし、自分の力量と才能の限界、現実の差にも気づいていました。
譲れないものを持たず、壁を見つけては避ける手段を考え、物事に抗うことをせずに生きてきました。自然と我慢する癖がついていた気がします。
この作品は、そんな自分とは正反対に誰よりも強い執念を持った少女・いのりが、夢に破れた青年・司とフィギュアスケートで世界を目指す物語です。秘めた才能と固い意志を武器にみるみる上達するいのりの成長っぷりには、この後の展開に胸躍る気持ちと、自分を正されるような感覚になり、悔しさが込み上げてきます。自分にもここまでの執念があったらと…。同時に司の心情に共感する部分も多くあります。
後悔と挫折を経験した自分だからこそ、コーチとして導ける世界がある。
2人の主人公が駆ける世界への道に目が離せません。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
score37~40、Short Program5
本筋はけっこうシリアスなはずが、ところどころ笑える要素が入っててつい笑う。特にすずちゃんのお顔マッサージと本編に入らなかったアレコレの一コマ。
いのりはジュニアクラスに昇格後、強化選手に選ばれ合宿に参加。いのりサイドのストーリーではライバル光ちゃんとのからみがハラハラする。そして、いのりのこととなると平静でいられなくなりつつある光ちゃんも気になる。
司先生の、指導者が集まる飲み会の話が興味深い。今回じっくり読みたくなったのはここ。
「成長期の女子選手は跳べなくなる」といういわば都市伝説と言うか言い伝えと言うかそんな話があるそうですが、それに関する「実はこうなんじゃないか」な話がかなりリアル。確かに女子は生理が始まったり体型を気にし始めたりという時期に来るから、そこで伸び悩む子が出てくることもあるんだろうなぁ。
で、無理な食事制限したりホルモンバランスが乱れて骨が弱くなったうえ、回復する間もなく練習を繰り返して疲労骨折…。
こんな話の後、終盤読んでてぞっとした。腰のサポーター??ひょっとして腰悪いのか光。