元ライターの渋谷直角の短編集。まず、インパクトのあるタイトル。そして、ほかの話のタイトル。
・空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋
・ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園
・口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画
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…と視点が本当にいじわる。実際、そんな人達がこっけいに描かれているので、痛い奴だなーと笑っていたら、読後はものすごく心がズキズキしていた。
お話的には、自我を持ってしまって、自己表現をしていたり、強烈なこだわりをもってしまった人達が、何かしらひどい目に合うという話です。
タイトルの話(カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生 )では、のし上がるためには手段を選ばない、メジャーデビューを目指す歌手の女の子が、トラックメーカーや有名なプロデューサーに体を売りまくる。そして体を売りまくった結果…っていうのが落ちなのですが…
全体を通して描かれているのは、「好きなもの」や「夢」を持ってしまったことによる呪いです。
例えば、とある男がはじめて行ったクラブで強烈な初期衝動をDJをはじめる。その初期衝動は純粋だったが、活動をはじめると、いろいろな欲が出てくる。
オオバコで回したい!モテたい!あいつ俺よりもセンスないのになんで!?嫉妬!
次第に心が腐っていく。そして、俺を認めないマジョリティ側が悪いんだ!となっていく。自分が20代そこそこときに感じていたことなのですがね。めんどくさい奴だよね。
あれ!?これって何かに当てはまりません…。
そう、ご存知!まどかマギカですよね。
「希望を祈ればそれと同じ分だけの絶望が撒き散らされる。」
京子という魔法少女と台詞なのですが、魔女少女のシステムと「夢」を持ったしまった後のシステムはおんなじだわ~と。先に願いは叶うか、願いを叶えようとするかの違いです。
そう思うと、現実厳しいわー夢を持てなんて、言えないっすわ…となってしまうところろ、ちゃんとこの漫画には、少しの希望を残してくれて、「口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画」って話で、絶望からそれでも俺は好きなんだ!やるしかない!っていうのが落ちで、ただ単にシニカルな視点だけではなく、そういう精神論をあって、最後は精神論的展開が好きな自分にとっては、最高でした。また、この後に出た「リラックスボーイ」ではその先のが描かれているような気がして、とにかく今後も渋谷直角の漫画は買い続けると、ここで宣言しますわ!