1 この相場氏の著書は、震える牛(食品偽装問題がテーマ)に続く作品です。ガラパゴスとは、南米エクアドルの沖合にある島々です。題名のガラパゴスは、日本の製造業が国際標準からかけ離れ、競争力を失っている状態を揶揄した言葉です。
2 相場氏は、「デフォルト」でダイヤモンド経済小説大賞を受賞。その後の「
...続きを読む震える牛」は、ベストセラーになりました。
本書は、主人公の田川刑事が活躍するサスペンス小説です。勿論、警察小説として、迫力があります。また、派遣労働者と正社員との処遇格差を赤裸々に訴えた労働問題小説の一面もあります。
この「ガラパゴス上」は、田川刑事が、派遣労働者の自殺事件を他殺と判断し、被害者の特定と周辺を洗い出していく物語です。
3 私が、書中で心に留めた事を私見を加えて、3点書きます。
(1)「他社の幹部達は、社員は家族などと甘い考えを平気で垂れ流していたが、松崎(トクダモーターズ社長)は、こうした情緒的な気分を社内から徹底的に排除する事に努めた」 ●私見⇒過去に欧米の人事がもてはやされ、信賞必罰の成果主義を取り入れた企業が多々ありました。結果は失敗したケースが多く、家族主義的雇用制度に戻したそうです。日本の風土(年功序列等)を充分考えた対応が必要です。関係者の意見をよく聞いて、時間をかけるテーマです。
(2)「従業員の個人的な時間や性格などは、はなから経営陣の眼中にはありません。洗脳して、ロボットにしてしまえば、後は企業の好き放題です」 ●私見⇒こんなに極端かつ資質に欠ける経営者がいるとは思えません。経営陣のレベルの低さは救い様がありません。熟慮して、退職した方がよいかも?
(3)「我々(請負・派遣労働者)は部品や備品と同じ扱いで、外注加工費としてカウントされている。我々は部品以下の扱いでした。正社員に、“お前はクズだ、ゴミだ”と罵倒され、耐えてきました」 ●私見⇒迫真を狙った、やや誇張表現です。私が勤めた会社にも、非正規社員が多くいました。職場での差別的な扱いはありませんでした。処遇差はあったと思います。しかし、社員登用制度があり、正社員になった人も多いいました。
4 まとめ:
ガラパゴス上では、警察小説として、自殺を他殺と断定し、犯人を追い込んでいきます。そのプロセスの中で、日本社会の暗部を掘り起こし、読者に問題提起します。
日本企業の発展の背後には、労働環境の二重構造(正社員✖️非正規社員)があります。私達は、よくスポーツなどで、“勝ち組、負け組”と口にする時があります。しかし、生活面では、区別の無い社会が良いですね‼️