井上ひさしのレビュー一覧

  • 父と暮せば
    短いので軽く読めるけれど、深い重い。でも前を向ける。
    世界は残酷だ。でも、生きている人は前を向いて生きていかなくちゃいけない。それが生きられなかった人に対する努めで、次に生きる人への義務だ。死んだように生きていてはいけない。
  • 東慶寺花だより
    最近、DVDを見て興味出て来て原案となった本作品を読みました。
    いくつもの話があり面白かったです。
    それ以上に映画化の際、随分印象が違う話になったんだなって楽しくなりました。
    色んな評価があるんだろうけど、原作も楽しかったし、映画はもっと楽しかったですよ。
    本読みしてから、映画見て見て。
    樹木希林さ...続きを読む
  • 百年戦争(下)
    複数巻の長編を平行に読破しよう月間。ゆるゆるとでも続けないと。

    秋子くんが猫になったまま行方不明となり、人間に戻った清と良三の間で、今後の猫 vs 鼠戦争をどうするのか、そもそもなんでそんな話になったのかという方向へ。

    「ドン松五郎」方面の動物大戦争でずっと進むかと思った上巻から全く方向性の変わ...続きを読む
  • きらめく星座 昭和オデオン堂物語
    第二次世界大戦中の東京、オデオン堂というレコード屋一家とその仲間たちのてんやわんや。
    いい曲ならばジャズのような敵国音楽だって取り扱う店の方針、だけでなく、長男の正一が脱走兵となり憲兵に追われているせいで、非国民の家だと非難されるオデオン堂。とはいっても彼ら自身は「反骨の家」といったイデオロジックな...続きを読む
  • 吉里吉里人(下)
    再読。と言っても、あらかた話は覚えてなかったので新鮮な気持ちで読めた。改めて、一流の作家の先進性、世の中を見る慧眼に驚かされた。

    細部では今となっては、古臭く効果を減じている部分もあるが、物語が提起している話題は全く古びていない。逆に言えば世の中変わっているようで変わってないわけだが・・・

    個人...続きを読む
  • 日本語教室
    我々日本人が無意識にやっている、日本語のささいな使い分け、日本語の成り立ち、構造など、筆者の深い教養と分かりやすい説明で興味深く読め、勉強になった。また、外来語を漢訳した際に生じた齟齬というべきもの。権利や自由の話。日本人の考え方に、漢字の選択が影響したというのは面白かった。
    読み通してみて、日本語...続きを読む
  • 父と暮せば
    とても短いので、戯曲を初めて読む人にも薦めやすいのではないかと思う。
    ちょっと甘い感じもするが、声高に戦争の惨禍や悲劇を訴えるのではなく、普通の人間のささやかな日常を破壊する恐ろしさを通奏低音のように流し続ける。幽霊の父は、実際には父を見殺しにしたと思っている娘の妄想かもしれない。妄想が死にそうな人...続きを読む
  • 不忠臣蔵
    吉良邸討ち入りに参加しなかった赤穂浪士のそれぞれの事情を連作短編にした本。
    400ページを超えるボリュームもさることながら、内容の点でも、ずっしり来る。
    討ち入りに参加することの方が安易。誰か、何かのために生き続ける道を選んだ方がいばらの道。
    討ち入りは太平の世になり、活躍の場を失い、それ以外に生き...続きを読む
  • 井上ひさしの 子どもにつたえる日本国憲法
    時々読み返す、好きな本です。
    やさしくて、力強い言葉と、イラスト。

    剣より強いものがあって、それは戦わずに生きること。

    まさしくそうだよなぁ、と。
    力で解決しようとするのではなく、言葉を尽くして話し合い、解決しようとすること。

    読み返すたび、初心に戻るような、足もとを確かめるような気持ちになり...続きを読む
  • 吉里吉里人(上)
    面白い上に、内容が濃いです。余計な話がたくさん出てきますが、全く飽きさせません。上中下巻で1,500ページほど有りますが、あと二冊、楽しんで読めそうです。
  • 私家版 日本語文法
    著者が日本語文法について語ったエッセイです。

    一方で橋本進吉、山田孝雄、時枝誠記らの文法について紹介し、他方では谷崎潤一郎から丸谷才一までの『文章読本』について論じ、さらには著者自身の「偏痴奇論」が展開されるという次第で、感心させられたりニヤリとさせられたり、とにかく楽しんで読めました。

    文法の...続きを読む
  • ムサシ
    すっとぼけた柳生宗矩が魅力的。
    さまざまな登場人物が言葉を変えて
    殺し合いを非難するさまに
    著者の強いメッセージを感じた。
  • 井上ひさしの読書眼鏡
    いろいろな、エピソードを交えた読書案内。
    ことば、大江健三郎、原子力、作者の興味はいろんな方面に拡散してゆく。だからこそ、面白い読書案内になっているとも思える。
  • 吉里吉里人(上)
    東北の小さな村、吉里吉里が日本からの独立を宣言!吉里吉里国を名乗る。馬鹿げた話なんだけど、あの手この手に手が凝っていて面白い。
    無駄な会話、話の本筋には不要な余計な描写が数多くあるのだけど、ユーモアのセンスに富んでいてかなり笑えて嫌に感じない。
    この吉里吉里国独立宣言時にたまたま居合わせた、売れない...続きを読む
  • 東慶寺花だより
    江戸時代の東慶寺を舞台に、いろいろな事情を抱えて駆け込む女達の物語。東慶寺のシステムや当時の人々の暮らしや価値観が分かって面白い。北鎌倉東慶寺の紫陽花の季節だけではない、四季おりおりの花の魅力も引き出されており、またじっくり見学したと思った。
  • 吉里吉里人(下)
    吉里吉里国に移民した古橋健二の身に、さらなる椿事が出来します。吉里吉里国で開発されたという新薬を争奪しようとする争いに巻き込まれたかと思えば、吉里吉里国に新設された文学賞を次々に獲得し、新大統領の地位に就き、ついには脳移植手術の第一号患者となって、美女の殺し屋ベルゴ・セブンティーンの身体に脳を移植さ...続きを読む
  • 吉里吉里人(中)
    期せずして吉里吉里国の独立運動を間近で見ることになった小説家の古橋健二は、吉里吉里国の繰り出す「切り札」に、何度も驚かされることになります。

    一方で彼は、吉里吉里国の裁判に巻き込まれ、さらに吉里吉里国独特の「女紅場」で出会ったケイコ木下(きおろし)と将来を誓い合って吉里吉里国の国籍を獲得するなど、...続きを読む
  • 井上ひさしの日本語相談
    押しつけがましいところがほとんど無い。「ことば」というものに真剣に向かい合いながらも、分かりやすく、柔らかく諭すように書かれている。
    「このように考えたらいかがですか?」のように書いてある。
    強いていえば、「こういう日本語の使い方は間違っている」、「こうするのが正しい!」というような部分があっても良...続きを読む
  • 吉里吉里人(下)
    ラストがいやにあっけなかったのだが、物事というのはそういうものなのだろう。
    最後の最後に明かされる吉里吉里人と吉里吉里国の真実を知ると、もうテーマが深すぎて……。

    終盤まではドタバタ小説だと思っていたら、何とも悲哀のこもった、そしてしたたかでギラギラした小説でありました。

    ひとことで言えば面白い...続きを読む
  • にほん語観察ノート
    一つの題目に対して2頁半程度なので、大変読みやすい。
    井上ひさしさんながらの視点で分かりやすくユーモアを交えて書かれている。
    しかし一番頷きながら「お見事!」と感じてしまうのは、お上に対しての皮肉を交えた文章だ。さすが、井上ひさしさんだ。