香納諒一のレビュー一覧

  • 川崎警察 真夏闇
     1970年代、昭和の川崎を舞台にした『川崎警察』シリーズ第二弾が登場。何と言っても読みどころは、巷に溢れる凡百の警察小説シリーズと異なり、昭和という時代とその世相を背景に起こる事件を、その当時の方法で捜査してゆくという点に尽きる本シリーズなのだが、70年代を関東で過ごしたぼくにとっては、当時の空気...続きを読む
  • 川崎警察 真夏闇
    上手い!
    話の運びの上手さから事件が次々と展開を替えていくのを、読者は車谷刑事と共に事件にのめり込んで行かされる。この展開がスムーズであるため無理なく楽しめた。
    返還前の沖縄からの麻薬密輸から、政財界のフィクサーの殺害、密輸に関わって死亡した母親の思い、沖縄の貧しさの中で助け合いながら育った子供たち...続きを読む
  • 砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌
    刑事たちの捜査を描いた中編が3編、[砂時計][日和見係長の休日][夢去りし街角]全部好き。それぞれ別々の個性や捜査手法をもつ刑事達が地道にコツコツと捜査し真実に辿り着く。派手さはないが中身が濃い秀作揃い、読み応えあり!
  • 砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌
     ほとんど国内小説を読まなくなってしまったのは、今の国内ミステリの作家が知らない人ばかりになってしまったからである。読者とともに作家も歳を取り、ぼくという読者より大抵年上であった作家たちの新しい作品が製造中止のような状態になってしまったからである。基本的には新しい作家の新しい作品に関する情報を自分が...続きを読む
  • 川崎警察 下流域
    3年前に初めて読んだ時香納諒一は文章が上手いと思ったが、久しぶりのこの本も面白かった。今回は泥くさい刑事もの、こんなリアリティのある作品も書くんだ。
  • 絶対聖域 刑事花房京子
     本作には二つの際立った特徴がある。『刑事コロンボ』を代表格とする、いわば犯罪者の側から語ってしまう倒叙ものであること。これは花房京子シリーズに課せられたシリーズとしての約束ごと。シリーズ読者であればそこにこそ期待するわくわく感が最初から期待させられる。

     もう一つの特徴は、本作に限っては全編刑務...続きを読む
  • 名もなき少女に墓碑銘を
     たまたま手に取った作品だった。
     正直あっという間に読んでしまった。
     疑問符をつけたがる向きはいるかもしれない。割り切れなさを嫌う人もいるかもしれない。
     けれど、そのリアリティの乏しさにこそ、魅力がある。
  • 川崎警察 下流域
     泥臭いタイトル! というのが本を手に取った瞬間の感想。でも、わかる。香納諒一の匂いが、最初からする。香納作品の基本として大事な要素の一つとしてぼくは挙げたい。それは物語が展開する舞台としての土地勘なのだ。そう。もともとが具体的な実在の地名を多用する作風。しかし、そこに半世紀前というさらなる設定を加...続きを読む
  • 逆転のアリバイ 刑事花房京子
     『刑事コロンボ』ファン必読の花房京子シリーズ、2018年6月以来の第二作が登場。倒叙ミステリーの代表とも言われるコロンボですが、これを日本に置き換えての作風で綴るのが、まさかの香納諒一とは驚くけれど、かといってハードボイルドや警察小説の名手が、突然本格に目覚めたということでもなく、コロンボの風味に...続きを読む
  • 幻の女
    ここまで愛した女は一体本当は誰なんだ?設定が面白く、死後すべてをなげうって探す男の純情さと、むなしさ。
  • さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ
    知らなかった、こんな上手い書き手がいた。って当たり前だ、自分の乏しい読書生活じゃ出会ってない作家は山ほどいる。
    しかしこの探偵さんは魅力的だ。
  • さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ
     辰巳翔一のその後を描いた中編シリーズの開幕である。

     この探偵には、既に三つの顔がある。写真週刊誌カメラマン。私立探偵。そして廃墟カメラマンだ。香納諒一が小説家として踏み出して間もない頃、この探偵は初めて生み出された。既に中年という領域に足を踏み入れていたぼくの眼には、若い作家の作品とは思えない...続きを読む
  • 蒼ざめた眠り
    被写体である廃墟とは? 廃墟の持つ影の深さ、交わされたいくつもの追憶の気配、止まったままの時間、背景に水平線。海と太陽と夜明け前のブルー。ページを開いたところから、一行一行を思わず噛み締めるようにして読んでいる自分に気づく。時には何度も読み返したり……。これじゃいつになっても終わらないな、と心...続きを読む
  • 絵里奈の消滅
     『絵里奈の消滅』再読。昨秋、本書を読み終えて、この主人公にとても好感を抱いた。刑事を辞めて、新宿で「金で頼まれたことを請け負う」ことで生計を立てている孤独な一匹狼・鬼束啓一郎。ノンストップの探偵小説として楽しく読み終わってのだが、その段階でこの作品が『熱愛』の続編であることを知った。半年も経った今...続きを読む
  • 無縁旅人
    実はあんまり期待せず読み始めたんだけど 面白かった。地味だけどね。
    内容はツライ話なんだけど ベテラン刑事2人の人柄と 辻原と舞子の不器用なんだけど 必死な人との関わり方。子供っぽいけど 他人への愛がある。そこに救いというか 読後感の悪くない感じがあるような。
    それにしても岩崎母子には うんざり。
    ...続きを読む
  • 刑事群像
     最終頁を閉じると同時に思わずうーんと唸ってしまった。唸りにも二通りある。不満のうーんと、満足のうーんである。今回は後者の唸りで、うーんの後にすごいな、と付け加えた。繊細に積み上げた造形物のように、まるでマクロなスケールを持った定規で計算され描かれた設計図のように、思われるが、おそらくそうではあるま...続きを読む
  • 幻の女
    「義務教育と、受験戦争と、弁護士になるための徹夜の勉強で、十代から二十代の前半を過ごし、人間はみな平等だと、煮ても焼いても食えないような戯言を押しつけられ、それを押しつけられている方が楽だとどこかで思いさえしながら生きてきた。
    頭のなかでだけ、様々なことを理解して、理解しきれないことにはなるべく関わ...続きを読む
  • ただ去るが如く
    久しぶりの香納諒一は、長かったけどぐいぐい引き込まれて一気に読み切った。
    うーん、感動。いい話だった!

    香納作品に出てくる男性はいつも、女性に一途で紳士で、
    不器用でとほうもなくカッコイイ!

    今回の主人公、優作も同じ。
    自分が引き起こした事件で解散に追い込んでしまった組の組長の娘を
    いつしか想い...続きを読む
  • 幻の女
    「五年前に愛を交わしながらも突然姿を消した女、瞭子と偶然の再会を果たした弁護士の栖本誠次は、翌朝、彼女の死を知った。事務所の留守電には、相談したいことがあるとの短い伝言が残されていた。手がかりを求めて彼女の故郷を訪ねると、そこには別の人間の少女時代が…。」
    すごく興味のある内容だったので読んでみた。...続きを読む
  • あの夏、風の街に消えた
    2007/11/4ジュンク堂住吉シーア店にて購入。
    2009/10/12~10/16

    京都で下宿する師井厳のもとに、なぞの男風太が現れ、父親が不始末をしでかしたので、すぐに自分と一緒に東京へ来い、と言われる。とまどいながらも風太とともに東京へ向かった厳は新宿にある角筈ホテルに投宿することに。ホテル...続きを読む