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刑務所に一般市民を招くオープンデイ。盛況に沸く中、元受刑者の首吊り死体が発見され、会場は瞬く間に騒然となった。路頭に迷っての自殺を有力視する刑務官たち。しかし、現場に居合わせた警視庁の花房らは疑問を抱く。死んだのは弱者を食い物にしてきた男。自ら命を断つとは考えにくい。捜査陣の介入に刑務官たちは頑なな拒絶を貫こうとする。彼らは何を守ろうとしているのか――? 名手の技が光る傑作倒叙ミステリーシリーズ!
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Posted by ブクログ
本作には二つの際立った特徴がある。『刑事コロンボ』を代表格とする、いわば犯罪者の側から語ってしまう倒叙ものであること。これは花房京子シリーズに課せられたシリーズとしての約束ごと。シリーズ読者であればそこにこそ期待するわくわく感が最初から期待させられる。 もう一つの特徴は、本作に限っては全編刑務...続きを読む所を舞台にしていること。それも刑務所の祭典として一般公開されるばかりか女性歌手までがステージに上がって美声を披露してくれるという特別な日を事件にあてがっていることである。 事件そのものは、早い段階で読者の目に曝される。殺意がどこにあるのか? コアとなる部分は既にオープンになってはいるものの、なぜこの殺人者がこの被害者をターゲットに選んだのか? は当面謎というかたちで我らがヒロイン花房京子の捜査がスタートする。殺人が実行されたのは、刑務所の祭典のさなか。映像化した作品も観てみたくなるようなある意味スケール感のあるプロットである。 読者の目の前に曝された殺人事件の裏側を読み解くのが、そもそも本作の推理小説としての醍醐味なのだが、いくつかミスリードを誘う伏線なども仕掛けられていてなかなか一筋縄ではゆかない。刑務所という一種のアニマルファームが舞台であるからこそのカオスがあり、それを律する職業に携わる者たちの規律の重要さは決して軽くないように見える。 例によって花房京子の眼のつけどころこそ物語の鍵であり、そこに気づいてゆく真犯人の苦渋が読者目線での読みどころにもなってしまうのは、倒叙ミステリーの構図そのものである。 ちなみに少し前にぼくはアンデシュ・ルースルンド『三年間の陥穽』のレビューをネットにあげたのだが、レビューした作品は小児性愛犯罪の世界的ネットワークを根絶せんとする警察官と潜入捜査官の物語であった。本書『絶対聖域』では、小児性愛犯罪が殺人の重要なファクターとして描かれている。世界でも日本でも、一般社会の中に隠れた異常性愛による犠牲者が存在することを、またも垣間見せられる。こうした異常者は犯罪を犯すそのこと以上に、むしろ異常性を隠蔽することに心血を注ぐ。どちらの作品でもそうした傾向が見られたことに、現代の隠された罪の情景を見せられた想いである。 花房京子が暴く真実は相当に痛い。倒叙型ミステリーとしての形だからこそ書けたであろう犯人側の苦悩の深さが痛いのだ。被害者側の屍が曝される場所と本作タイトルとの関わり方を読者としては想像してゆきたい。 さて本書の一番の個性だが、それは作品の舞台となる刑務所そのものであろう。刑務所の地図が冒頭に示され、読者は公開当日の一般客の目線で刑務所のなかに足を運び入れる。そちらの面白さも格別なのが本書の特徴なので、改めて刑務所のそのような祭典についてネットで調べてみた。 ちなみに東京拘置所(旧小菅刑務所)では、コロナ前には「矯正展」という形で受刑者の作品展示と、刑務所棟の外観見学のみが行われていたようである。ちなみにコロナ後に開催される2023年12月に実施される矯正展は、東京国際フォーラムで実施されるそうだ。本書を読んだ後では相当に残念な場所であるように思う。拘置所見学という機会は、今のところ残念ながら失われてしまっているようである。刑務所や拘置所を見学したことのある方、興味のある方は、本書でしっかりその雰囲気を味わって頂きたいと思う。入所された経歴をお持ちの方はもちろん別として。
刑務所に一般市民を招くオープンデイ。盛況にわく中、元受刑者の首つり死体が発見された、会場は瞬く間に騒然となった。現場に居合わせた警視庁の花房らは疑問を抱く。 花房の目は女権の綻びを見逃さない。
主人公の2作目。推理と展開がちょっと強引なところは前作と同じだから、これはこれでプロットとして合っているのか。全体的に文体が軽く読後感に残るものが少ないような気がする。
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