深水黎一郎のレビュー一覧

  • 言霊たちの反乱
    60~100頁の短編と中編4つを収録。いずれも徹底した言葉遊びで楽しませてくれますが、本当にこんな人がいたら、相手をさせられる側はものすごくイライラすることでしょう。

    『漢(おとこ)は黙って勘違い』では、日本語に同音異義語がとても多いことに着目。主人公が「言いまつがい」ならぬ「聞きまつがい(笑)」...続きを読む
  • 世界で一つだけの殺し方
    科学もピアノも割と好きなので楽しく読めましたが、興味ない人に瞬一郎君の薀蓄はつまらないのでは(そういう人はそもそも読まないか)。
    トリックは薄々察しがつくもののちょっと変わっててまあ面白いのですが、作中の言葉を借りると私はホワイダニットに重きをおくタイプなので動機はそれでいいの…と脱力。
    あ、瞬一郎...続きを読む
  • 言霊たちの反乱
    バカミスの類いだが、最後の「情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群」という短編は、唯一少しだけシリアスで、メディアの報道の仕方への批判的作品になっていた。これが一番面白かった。
  • 美人薄命
    〇 概要
     主人公の磯田総司は,弁当配達のボランティアで老婆,内海カエと出会う。家族を失い,片目の視力を失い,貧しい生活を送るカエは,愛し合いながら結ばれなかった男との思いでを総司に語る。その悲しい恋物語の裏には,総司の人生観を一変させるような秘密が隠されていた。さまざまな事象について,ある一面と異...続きを読む
  • エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ
    エコール・ド・パリとは著者そのもの
     エコール・ド・パリ ー 名前は聞いたことがあっても、明確な定義があるわけではない彼らについて知る人は少ないでしょう。モディリアーニや、シャガールなどの作品は実際見たことがありますが、華やかな印象派の画家たちと比べるとあまり好きな画風ではありませんでした。
     作品...続きを読む
  • 美人薄命
    表紙に惹かれ購入。ミステリ要素が邪魔に感じてしまった。でもカエの心情を詳らかに語ってしまうのも興が無い気もするし・・・。面白かったけど何か物足りなさを抱いた作品でした。
    あらすじ(背表紙より)
    弁当配達のボランティアで老婆・カエと出会った、大学生の総司。家族を失い、片目の視力を失い、貧しい生活を送る...続きを読む
  • 言霊たちの反乱
    用法で変化する言葉の不完全さをコメディタッチでおちょくり倒す短編集。扱うテーマの割に新喜劇を見ているような軽い読み味。ミステリーアリーナに繋がるマスメディアへの描写も多々あってオッとなった。あと『ビバ日本語!』に全裸中年男性が登場して笑った。
  • 美人薄命
    若者と老婆の交流を描いた、ミステリ長編。
    全体的な雰囲気や展開は、割とありふれたもの。
    ただし、ミステリ面は巧みで、結末はそれなりに捻ってある。期待を裏切らない程度には面白い。
    しかし、著者は若者を描くのが苦手に思える。他のキャラクター描写の水準を考えると、ちょっと紋切り型というかお粗末で、そのへん...続きを読む
  • 花窗玻璃 シャガールの黙示
    芸術探偵神泉寺瞬一郎のシリーズ。
    ヨーロッパ旅行中での一事件を手記にまとめ、日本に帰って叔父がそれを読んで推理するという流れ。いつもながら漢字の表記にはじまりステンドグラスの云々などうんちくもたっぷりw
    で、内容は・・・まあいつも通りという感じでしょうか。うんちくを楽しみつつ事件の推理を楽しむ。そし...続きを読む
  • 最後のトリック
     「読者が犯人」というミステリー界最後の不可能トリックのアイデアを2億円で買ってほしい…という手紙を受け取ったミステリ作家を描いた作品。
     読者が犯人というのは,フェアなやり方では不可能である。この作品のトリックも,香坂誠一なる人物の得意な体質(不特定多数の人に自分が書いた文書を読まれると体調が悪化...続きを読む
  • トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ
    神泉寺瞬一郎のシリーズ。これは作品内で時系列がちゃんとあるんですね。先日読んだ「ジークフリードの剣」の次になってる。そこら辺の話もでてきてるし。
    今回は歌劇『トスカ』公演の真っ最中に舞台上で起きた殺人。真相に至る推理もさることながら、この手の話に疎い自分からすると歌劇とか知らない世界をいろいろと勉強...続きを読む
  • 花窗玻璃 シャガールの黙示
    瞬一郎がフランスに遊学していた頃の話し。作中作としてカタカナを使わないで記述するという目論みもあり。途中にあった「あいつら」の白痴的表現は確かに許しがたい。ルビも素晴らしいのに!色々面白く読めた。
  • ジークフリートの剣
    若干いろいろ詰め込み過ぎな感じがしなくもない。オペラのうんちくはともかく女医さんのくだりは主人公のクズっぷりが鼻にもついたしなあ。
    その辺を除いたら綺麗にまとまった一冊だとは思うんだけど。
    ていうかぽっと出てきただけの探偵役が一体なんなんだろうと思ったらシリーズ探偵的な人物だったんですね。知らずに読...続きを読む
  • 五声のリチェルカーレ
    深水黎一郎による、学芸タッチの中編ミステリ。
    デビュー作から考えると、特異な起承転結はないが、代わりに文体や表現、セリフ等で所々個性を滲ませている感じがした。
    様々な学術的知識やエピソードをはさみつつ、話の構成は緻密で、上手くまとまった作品だと思う。
    ただし、少し文章は硬質すぎるか。自分の好みの問題...続きを読む
  • 五声のリチェルカーレ
    深水黎一郎の作品は,メフィスト賞受賞作の「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!」を読んでみたいと思っていながらも,未読。この作品が始めての作品。
    予備知識なしで読み終わった。読み終わった段階の感想は,驚くことはできたけど,「なんか違和感があるな?」というもの。パラパラと再読しても,なかなか違和感がな...続きを読む
  • 人間の尊厳と八〇〇メートル
    サクサク読めるのと読後感の良さよ。こういう味わいのミステリって他になんかあったかなぁと、何とも例え難い。各々の話でのキャラクターたちが語る内容が面白かった
  • 人間の尊厳と八〇〇メートル
    こじんまりとしたバーで、「わたし」が初対面の男から持ちかけられた、謎めいた“賭け"の行方は・・・。

    短編集です。
    ちょっとした日常の謎とか歌野晶午みたいなワンアイデアで一本くらいの軽いミステリとかバラエティに富んでいます。いい意味でも悪い意味でも統一感がない一冊かもしれません。逆にいうとどれか一本...続きを読む
  • 人間の尊厳と八〇〇メートル
    深水黎一郎のミステリ短編集。
    表題作は日本推理作家協会賞作品、これはよかった。洒落た感じと、切れの良い起承転結、読後感も良好。
    それと「蜜月旅行」は楽しめたが、他が微妙だった。
    メフィストデビューの作者の色合いは不安定であり、どちらかといえば、“らしさ”がない作品のほうが好き。
    となると、相性はよく...続きを読む
  • ジークフリートの剣
    本書は『トスカの接吻』のサイドストーリーに位置付けられます。
    物語では、念願叶ってジークフリード訳を射止めた主人公が、舞台で喝采を浴びるまでの苦悩や葛藤が描かれています。
    こうして書いてみると、およそミステリっぽくないのですが、そこは芸術探偵シリーズで卒のない作品を産んできた作者のこと、細かな伏線、...続きを読む
  • トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ
    事件の中に芸術趣味が違和感なく溶け込んでおり、物語を構築する巧さが光ります。
    事件の謎自体は、凶器の入れ替わりという地味なものですが、それがオペラの舞台上で行われたことにより、印象深くなっています。
    そのオペラに関する蘊蓄の量は膨大ですが、前作同様読みやすく、興味すら湧きます。
    第二の殺人ではダイイ...続きを読む