橋本治のレビュー一覧

  • 橋本治のかけこみ人生相談
    普段購読している新聞にも週に1回人生相談がある。複数の回答者がいるのだが、一読してその質に優劣があることがわかる。優秀な回答者は、(通常視野の狭くなっている)相談者が気づかない側面から新しい視点を提供し、「なるほど」と思わせる気付きを与える。そうでない回答者は表面的な回答に終始し何の役にも立たないア...続きを読む
  • 日本の行く道
    いつもなら橋本氏の著書を読むと新しい視野が開けてきて、「言われてみれば確かにそうだ!」と手を打つのだが、今回は納得感に乏しかった。
    総論として言わんとするところは、「もう進歩を目指すのは止めようよ。地球も社会も壊れちゃって幸せになれないよ。」というもので、産業革命以前、それが難しければ1960年以前...続きを読む
  • 失われた近代を求めて(上)
    2010年~発行した同タイトルの全三巻の構成を二分冊に編集したもの。

    まず本書は「評論」であって、日本の近代文学史を体系立てて理解するような近代文学史の本ではないし、近代に活躍した文豪の生い立ちなどがわかる評伝本でもない。
    我々が近代文学史を学ぶと必ずぶつかるいくつかのテーマ、キーワードについて、...続きを読む
  • 「わからない」という方法
    おもしろかった。わからないからやる。普通、わからないからやりたくないと尻込みしてしまうが、だからこそやってみるというのはすごいなぁと感心した。自分にはそんな下地はないが、わからないけどやる、から、わからないからやるという意識に転換できればいいなぁと思い。やるしかないのだから
  • 院政の日本人 双調平家物語ノート2
     ここまで読んでくると、社会に対する橋本的時間概念んがどのように構築されてきたのか、橋本版双調平家が、なぜ、明日香以来の古代史から平安時代にいたる王朝交代について、延々と記述されているのか、納得できるような気がする。
     大きな年表では直接読み切れない血と権力の関係を解きほぐす「根性」とでもいうべき努...続きを読む
  • 権力の日本人 双調平家物語ノート1
     長く、枕元本として安眠のための導眠剤本としてころがっておりましたが、製本が独特で、ページが固いのが玉に瑕で、寝転がりあおむけ読書には向きません。寝てしまうと結構分厚い本が顔のうえに落ちてきますが、その際ページが自然に閉じて頭にこつんと当たるというわけです。
     だからというか、仕方なくうつ伏せで読む...続きを読む
  • だめだし日本語論
     へえー、この二人が出会うんだ。まずもって、そのことに感動。丸谷才一と山崎正和のセットのような取り合わせが、だんだんなくなっていってさみしがっている人にはなかなかいいセットだと思っていたら、橋本治君がなくなってしまった。
     この人とこの人を、という「人物」がまた一人いなくなったことをとてもさみしく思...続きを読む
  • 古事記
    懐かしい本です。橋本治君がなくなってしまって、遺品整理をしています。子供たちに読んでほしいと思って、ずっと昔に同居人が購入した本です。
     名著です。少年少女に読ませるだけではもったいない。例えば、岩波文庫の古事記は、アマテラスが生まれる前にくたびれてしまいますが、この現代語訳だと眠くなりません。すら...続きを読む
  • 「わからない」という方法
    わからない人が抱える「何がわからないかがわからない」という点をうまく使って、何もかもをスポンジのように吸収してしまう方法論。
    気づきを得るためには、常にアンテナをピンと張る必要がある。加えて、これまでの蓄積とリンクさせれば、飛躍させることができる。
    知性する身体という擬タイトルに痺れた。
  • リア家の人々(新潮文庫)
     橋本治は19世紀も、20世紀も、江戸も、あれこれみんな総括して見せて、たぶん、最近の新書では「平成」も総括していたと思うが、おしまいには借金も総括して逝ってしまった。さびしい。
     1969年で終わるこの小説は、「昭和」というよりも、「戦後」を総括して見せているとぼくは思った。
     しつこく低いアング...続きを読む
  • 上司は思いつきでものを言う
    身近にいる「思いつきでものを言う人」を分析したいと思って買った本。
    本の内容からいってその人にはまったくあてはまらなかったが、働く職場のことを考えながら読むと、非常に面白かった。
  • 無花果少年と桃尻娘
    木川田くん、通称ゲンちゃんと別れた磯村君。何だか、「桃尻娘」の頃と遠く離れてきた感じが濃厚なんだけど、結構いいんですよね、寂しさが、ずっと漂っていて。講談社文庫で買えるのかな?
  • これで古典がよくわかる
    受験生を対象に書いているせいか、ふだんの橋本治の本に比べるとかなり読みやすい。兼好法師が徒然草を書きはじめた当初は若者だったにちがいない、という意見はおもしろかった。""
  • ちゃんと話すための敬語の本
    10代向けに書かれた内容であるが敬語の成り立ちや違い(尊敬・謙譲・丁寧)がよくわかる.敬語は人と人には距離があることを前提とした言葉である.「距離がある」と好き嫌いや尊敬とは違うというのは納得.
  • たとえ世界が終わっても その先の日本を生きる君たちへ
    序章,第一章まで読んだ.面白い!(2007年)再度読み始める.第6章にまとめの部分があり、全体の把握に最適だ.この先、どうしたらいいのか? の解答として、"まずは日本人が天動説から地動説に戻って、「自分たちが社会の上に乗っかって動いている」という謙虚な意識を取り戻さないと「心のある論理」は生まれてこ...続きを読む
  • いま私たちが考えるべきこと(新潮文庫)
    私達が瞬間的にたびたび考えることを言葉にしました、というような内容。これだけ巧みに言葉をつないで論理を形成していけるということに脱帽しました。

    後ろの方にある、「個性を伸ばす教育」のあたりは自分とほとんど考えていることが同じでびっくりしました。

    本当は「前から思っていたこと」なんじゃなくて、「「...続きを読む
  • いつまでも若いと思うなよ
    これは、若い女性に向かって言った言葉ではなく、老いに向かっていく自分に対しての言葉。
    体は確実に老いていくのに、そして体は何度もその信号を送っているのに、脳がそれを認めない。

    人間というのは幼いころから成長曲線が右肩上がりで、いざ下り始めると、新しい出来事を記憶しにくくなってしまう。
    だから、若...続きを読む
  • いとも優雅な意地悪の教本
    前著「知性の顛覆」で知性とモラルの関係について語り、今回も「暴力」と「意地悪」の違いから始まり、いつもの通りどんどん脱線しながら簡単に結論に行き着かない。この過程そのものが「巨大なる知性・思索」の結晶なのだけれど、自分にとっても、発達障害などの外来で子どもの行動分析にもとても役に立つ考察になっている...続きを読む
  • 知性のテン覆 日本人がバカになってしまう構造
    とても大事なことが書かれている一冊である。
    一読では消化できないので、メモとする。

     日本の伝統芸能では自分を「消す」ものなのに対し、SNS時代の自分とはまず「出す」ものであるという変化。この変化が石原慎太郎の太陽の季節による「肉体=性欲の肯定」あたりにあるという話を見ると、今の後期高齢者の「マッ...続きを読む
  • 性のタブーのない日本
    明治以前の日本社会には、性的モラル(道徳的規範、価値観)はあったが、性的タブー(許されない、非難されるべきこと)はなかった。

    題材として、『古事記』『源氏物語』や絵巻物、春画などが取り上げられ、それらが今風の言葉で冗談交じりに解説される。