日下三蔵のレビュー一覧

  • 大聖神
    中村春吉秘境探検記「幻綺行」に続くシリーズ初の長編。素晴らしいのは、装丁の見事さ。パラフィンフィルムの破れ具合やしわのより方、新刊なのに古書に見える装丁の凝り具合に感動。SF用語を排しているのに、内容はSFであり、主人公の中村春吉のバンカラぶりが面白くて一気に読めた。併録の「自転車世界無賃旅行者 中...続きを読む
  • 静かな終末
    収録作品数が多くバラエティにとんでいるのでお得感はあるが、落ち着かない読後感。
    その中で、表題作が素晴らしく光っている。次に収録されている「錆びた温室」とセットで読んで欲しい。
  • キスギショウジ氏の生活と意見
    読み終わってから表紙を眺めるとジワジワ面白い。SF作家とひねくれた読者(SF読みにとってひねくれているという言葉は賛辞だと思います)との掛け合いめいた後書きが好きです。
  • くらげ色の蜜月
    著者の小説は「大いなる幻影」と「猟人日記」しか読んだことがなかったが、代表作とは言えないこの短編集読んで改めてミステリ作家としての戸川昌子を見直した。
    面白い!昭和感漂う男女の関係をテーマとした官能ミステリとも呼ぶべき佳作揃い。
    もっと他の作品も読んでみたいのだが、ほとんどが現在古書でも入手が困難な...続きを読む
  • 火葬国風景
    決して文章が美しいわけでも構成が練られてるわけでもないのに、何故だか「すごい」と思ってしまった。
    作品ごとのムラは多いし筋書きは荒唐無稽なものがまぁまぁあるんだけど、そのばらつきがある種の「あやしさ」として魅力的に映る。

    『恐ろしき通夜』、最初は「毒でも盛ってんのかな?」って予想しながら読んでたけ...続きを読む
  • 緋の堕胎 ──ミステリ短篇傑作選
    濃すぎて読むのがとても疲れる。どの話も、ミステリを逸脱した思考実験的な試みを感じるけれど、著者が狙ってそうしてる感はなくて、なんていうかちょっと怖い。
  • くらげ色の蜜月
    戸川昌子の短編集。60年代末から70年代初頭にかけて発表された作品が収められている。戸川昌子を読むのは初めてで、作家というよりたまにテレビで見かけたカミナリ様みたいなパーマをかけたおばさんというイメージが強い。収録作はどれも純粋なミステリとは言い難い内容。かといって奇想とか変格という感じでもない奇妙...続きを読む
  • 筒井康隆、自作を語る
    2014年から2017年くらいにかけて行われた筒井康隆が自作について語るトークショーや対談集をまとめた一冊。筒井康隆の素晴らしい記憶力と、インタビュアーである編集者の博覧強記ぶりによって、どのように名作の数々が生まれたのかを知ることができるし、当然その誕生の背景も様々な面白おかしいエピソードに彩られ...続きを読む
  • 堕地獄仏法/公共伏魔殿
    書かれたのが、六十年代という半世紀前の作品群とは。現代にも通じるテーマ。政治と宗教の関係からVR,国営放送等、最近も社会を騒がせたモノが多く、いかに筒井康隆が社会を鋭く見ていたか分かる。
  • 堕地獄仏法/公共伏魔殿
    おもしろかった。
    AIという言葉こそ使われないものの、発達しきった人工知能が人間の欺瞞をあばく話がいくつかあって(いじめないで、やぶれかぶれのオロ氏など)すなおに笑える。「時越半四郎」は、AIではないけど、やはり日本人の不可解な思考回路を笑いとばす話で最後にちょっとしんみり。しかし、これ、1966年...続きを読む
  • 筒井康隆、自作を語る
    けっこう今までの日記などでの言及と異なるコメントがある(たとえば『フェミニズム殺人事件』に成立についてのコメントは『幾たびもDIARY』でのコメントとニュアンスどころではない差があると思う)のが気になった。基本はトークショーの文字起こしだし、普通にいろんなこと忘れていて当然だと思うので、そのこと自体...続きを読む
  • 夜の終る時/熱い死角 ──警察小説傑作選
    初期の警察小説。時代の空気は古いものの、懐かしいさを感じさせるが、展開は、かっこいい。アメリカの警察ものに通じる。
  • 夜のアポロン
    カテゴリはミステリなんだけど、実際に取っ組み合うお話はほとんどないんじゃなかろうか。『ほたる式部秘抄』くらい?
    ほぼほぼ全編、人、特に女性や少女の心の暗部が繰り返し語られていて、結構胸焼けしてしまった。加えて、権力に対する嫌悪感もひしひしと。
    その分、いつもとテイストの違う『ほたる式部秘抄』がやけに...続きを読む
  • 松風の記憶
    後年の人の死なない短篇群を先に読んでいたから、ことに若い人が死ぬ話は辛い。それだけ人間がよく書けているということでもあるのだろうが。
  • 紙の罠
    『危いことなら銭になる』の原作。ちょーど、読んでる時にガラスのジョーを演じたエースのジョーの訃報を聞いちゃったわ。
  • 丹夫人の化粧台 横溝正史怪奇探偵小説傑作選
    横溝正史の作品には、「長編はめちゃくちゃ面白いが短編はそこまででも…」というイメージを持っていたのだけれど、この本を読んでそれは大間違いだったと気付かされた。あの短いページ数でこれだけのドラマを見せてくれるなんて。それはものすごい技巧であるのに、それを必要以上に感じさせず、さらりと読ませてしまう。す...続きを読む
  • 夜のアポロン
    「夜のリフレーン」と対を成す単行本未収録短篇集。76年から96年の16作。
    改めて言うが単行本未収録でここまでのクオリティ。全然書き散らしていないのだ。
    「小説の女王」と呼ばれる所以もここで、小説への愛が小説を書かせているのだ。
    一作ごとに語りの形式を工夫し、作者の好みや興味を突き詰めることで熟成さ...続きを読む
  • 夜のアポロン
    日下三蔵氏の執念が生んだ短編集、とでも言うべきか、版元を超えてタッグが組まれ、「夜のリフレーン」と対を成す一冊。
    いわゆる幻想小説にカテゴライズされる作品が主だった「夜のリフレーン」と異なり、少しヴォリュームがあるミステリーを中心に収められている。
    とは言いつつ幻想的なテイストが横溢するものがあった...続きを読む
  • 夜のアポロン
    短編集16編
    忘れられていた原稿がみごとに蘇って読むことができた幸い.どれも素晴らしく皆川ワールドである.特に表題作,兎狩り,死化粧が好きだった.ほたる式部秘抄は軽妙でシャレっ気があって結末が明るくこういうのもいい.
  • 赤い猫 ──ミステリ短篇傑作選
    無駄がない良質な短編集。発行から随分時間が経っているのに、古くささではなく懐かしさを感じる。良い本です。