本能寺の變。
歴史上の大きな謎のひとつだと私は思つてゐる。
何故、明智光秀は謀反に及んだのか。
そして、あれほどのことを起しながら、將來の戰略を持つてゐなかつたのは何故なのか。
明智光秀ほどの男がその後の展望もなしに發作的に謀反に及んだとは考へ難いのだが・・。
もうひとつ、信長の遺體が見つからない
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光秀も懸命に搜させたが見つからなかつた。
單に本能寺が炎上したからといふのは理由にならない。
作者は小説の形式を取りながら、これら謎を解き明かしてゐる。
光秀謀反の動機については、端的にいへば、リストラ目前の初老の男が、窮鼠猫を齧む心境で起した事件だといふ解釋である。
それはそれで納得できないことはないのだが、その後の無策さの説明にはなつてゐない。
もうひとつの、信長の遺體が見つからない謎については、本能寺爆發説を採つてゐる。
本能寺は堺鐵砲商人の取引所でもあつたため、表御殿の下に煙硝藏があつたといふのだ。
こちらのはうは、さうもあらうかと納得できた。
小説形式だが、光秀の視點といふよりは歴史的な事實の羅列になつてゐるので、むしろ津本史觀による歴史書といつた趣きがある。
2005年5月2日讀了。