中上健次のレビュー一覧

  • 新装新版 十九歳の地図
    中上健次の身体性の強いくらくらするような文体のはじまりはこんな感じだったのかー。
    「枯木灘」より「軽蔑」より濃くて尖ってて良い。本当にこれは十九歳で読むべきだったなあとは思いつつも、今読んでも疼くものがある尖りかた。
  • 千年の愉楽
    生と死、エロスとタナトス、あの世とこの世、文字と声、文学と物語…それらの混淆と対峙。10年ぶりに読んだけど、改めて名作。
  • 千年の愉楽
    夏芙蓉の甘い薫りが漂うと金色の鳥が甘い蜜を吸いに来る。熊野の山は烏天狗が舞い、天女が羽を休めにくる。龍は天へと昇っていく。鶯の声、梟の声が聞こえ銀色の川が流れる。蓮の池の上につくられた浄土は路地という。四民平等に憤り竹槍で刺されるは落人狩りをした土民たちの再現か。千年もの長きに渡って受け継がれてきた...続きを読む
  • 千年の愉楽
    日本人ならこいつだ!!と久々に思えた傑作。
    この濃さがたまらなくよい。
    『カラマーゾフ~』一族の濃さも最高lvだが負けてない。
    路地という閉鎖空間ももちろんこの濃度をあげているが。
    人物は粗野なのに文体は精選、
    内容は血なまぐさいのに視点は常に冷徹。
    この対比が、切り詰めた空気を作っている。
    部落地...続きを読む
  • 千年の愉楽
    ★★★
    山にへばり付くような土地作られた”路地”は、昔は町への出入りも制限され、男たちは革をなめしたり土木仕事をするしかない集落だ。
    オリュウノオバはその路地のただ一人の産婆で住民の親世代は全員取り上げた。夫だった礼如さんは寺の和尚がいなくなってから在宅の坊主になった。坊主と産婆の夫婦である二人は、...続きを読む
  • 千年の愉楽

    圧倒的な物語力

    物語の強度に圧倒された。

    「血」の持つ宿命に抗いながら翻弄される男たちと、その生と死を見守る語り部たる産婆。

    作者のいうところの「路地」、すなわちひとつの(被差別)部落の中で展開するストーリーがこれほどまでに広がりと深さと崇高さとエロスを持ち得るとは。

    登場する6人の男たちの魅力も...続きを読む
  • 紀州 木の国・根の国物語
    こう、並べて読んだからかもしれないが、上記の天皇百話、下巻にこの中上の文章が入っていないことが不満に思えるほど、天皇制、差別構造、それらの総体としての日本を考えるときに、この本は必読書なのではないか?80年代初頭という時代を背負っていることは確かだが、現代に生きる我々から地続きの場所から発せられてい...続きを読む
  • 千年の愉楽
    この世の彼岸、生と死がただ循環する路地世界の中で、血脈の時を越えた年代記であり、それを見届ける聖の物語である。その異界いや新世界に一読者として浸るのはまさに愉楽であり皆苦でもある。新たな小宇宙を創り出す著者の力量には感服です。
  • 紀州 木の国・根の国物語
    ルポと小説の間の「物語り」とでもいうのか。
    こういうかたちの作品は貴重だと思う。
    読みながら何かに触れているような手応えがあった。
  • 千年の愉楽
    密度の詰まった濃密で圧倒的な文章にノックダウンされます。登場人物も生き生きとしていて鼓動まで伝わるかのようです。美男率高し。中上の書く青年は本当魅力的。映画はどうなるんだろう?!
  • 十九歳のジェイコブ
    上の花村氏もそうだけど読む人を選ぶ、のかな?でも、渇いた狂気の世界だからこそ覗き込みたくなるのかも。
  • 千年の愉楽
    彼の著作の中で私が最も好きな本だ。一人の作家の多くの作品の中で一番好きな作品と言うものを選び出す方が難しくあるが、この物語は醜い、儚い、力強い、そして美しい。
  • 岬

    舞台は和歌山、田舎、インターネットも何もなく他の世界とつながりようもない時代。
    閉じた人間関係、どろどろのしがらみの中での愛憎、ふりほどけそうもない。
    主人公は土方の仕事が好きで、毎日汗を流して、精錬潔癖に生きれたらと思ってる。
    でも自分に流れる血がそれを許さない、最後はあの男への復讐を遂げる場面で...続きを読む
  • 作家と酒
    小説家や詩人や漫画家たちによる、お酒にまつわる44編。
    大酒呑みの話が読みたいと思って手に取った。きっと何名かはそういう作家がいるに違いないと。
    結果的に想像以上の面白い話が読めて満足した。お酒での失敗談も、お酒にまつわる思い出も、作家の表現力で楽しく読めた。時代の空気まで伝わってくる。
    困るのは、...続きを読む
  • 千年の愉楽
    秋幸3部作よりも、鳳仙花や千年の愉楽のような女性視点で描かれる中上健次作品が好き。
    例えば、夕焼けがきっぱりと夜に包まれるまでの描写一つにしても、その美しさに衝撃で震える。谷崎潤一郎も真っ青。
  • 新装新版 枯木灘
    肉体労働の描写、山や梢、風や光の美しさの表現がとどまるところを知らない。(温かい日を受けた葉が光を撒き散らすように等)内容としてはちょっと飽きるというか、またその話〜?みたいな感覚は否定できないのだけど、たまにくる繊細で顎にクリーンヒット!みたいな、思わず手が止まるような感覚の文章が出てくるから最後...続きを読む
  • P+D BOOKS 鳳仙花
    女の一生。
    あまりの緻密な描写に中上健次は実は女だったのでは?と疑うほど。2度読み返したが情景描写があまりにも美しくてうっとりする瞬間瞬間。

    最初は説明描写が多いなーと思っていたが、気がついたら言葉の海で泳いでいた。
    カルマの渦中で生きて行く生々しいフサの一生。
    矛盾と心細さと強さが、その時の空気...続きを読む
  • 新装新版 十九歳の地図
    土や動物さらに排泄の臭いがまとわりつく生活空間に厭世観が漂う。若者、社会に抗う彼らの心情に時折共鳴するも隔絶も伴ってしまう。それは読者自身の俯瞰化なのか、登場人物への蔑みなのか、それとも言葉では明確化できない混沌した感情なのだと結論づけても物語は完結へと向かわない。筆者、中上健次は結末の道程を読者に...続きを読む
  • 奇蹟
    中本の一統、高貴にして穢れた血の最終章とも言うべき一冊。
    主人公は若死にする運命の中、駆け抜けるように生きたタイチ。
    中上健次の作品に出てくる男性は、どんなに零落してもかっこいい。嫁より朋輩を大事にするなど、昭和的ではあるが、たしかに一昔前の男性はそういった強さを持つ人が多かったような気がする。今は...続きを読む
  • 岬

    朝日新聞の和歌山文学紀行での紹介本である。読んでみて、岬へ家族でピクニックに行くことと甥っ子がクジラを見に行くということで和歌山ということがかろうじてわかる程度である。最後が性交で終わる。