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突然の災厄が、嘉兵衛を襲った。彼自身がロシア船に囚われ、遠くカムチャツカに拉致されたのだ。だが彼はこの苦境の下で、国政にいささかの責任もない立場ながらもつれにもつれたロシアと日本の関係を独力で改善しようと、深く決意したのである、たとえどんな難関が待ち受けていようとも…感動の完結篇。
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Posted by ブクログ
▼疾風怒濤、涙、涙、の最終巻。 ▼高田屋嘉兵衛は、ひょんなことからロシア軍艦に「拉致」されます。なんてひどいこと。ところが、ロシア軍人の側も、別段「悪の権化」なわけではありません。彼らなりの事情と道理があって、拉致った。(そのあたりの事情のために、第5巻めいいっぱい全部使ってますから) ▼嘉兵衛...続きを読むは、全く言葉が通じないのに、なんとなくロシア下士官と、「信頼と友情」を作り上げてしまう。ここンところが理不尽にすごい。 ▼ただ、それでもストレスと不信感で大変に疲弊する。やがて、日本に戻れる日が来る。人質の交換が狙いなんだけど(ゴローニン事件)、ここでまた嘉兵衛が大活躍して、 「人質じゃなくて、俺を交渉人にしろ。俺を信用しろ。解放しろ。そしたら俺が、日本に軟禁されているロシア下士官を解放してくる」 という無茶苦茶な交渉を、なんと飲ませてしまう。ここがすごい。 ▼そして有限実行、全てを成し遂げてしまう。このあたりは歴史の流れの「幸運」も、もちろんありますが。そして、いろんなことがあった、1年以上にわたった、ロシア人たちとの、別れ。ロシア人たちの「大将!ウラー!」の大合唱。 ▼この事件が終わったところで、この小説、晩年の司馬節は、しゅるしゅるしゅる・・・・と融通無碍に終わってしまいます。さささささっと、嘉兵衛の余生。ゴローニン事件から10年以上平和に長生きしたんですが、死の間際に「たいしょう、うらー、とさけんでくれ」と言って亡くなった。 ▼これは、分かりますね。その時期の生死ぎりぎりの色々な出来事と、人間関係が、いちばん刻み付けられた愛着のある風景だったんでしょうね。実に芳醇な人間ドラマでした。パチパチ。この枯淡の深みは、司馬さんの小説群の中でも晩期のものにしかない味わい。
末記の谷沢永一氏の解説が明媚。もう一度読みたい。 ・畏れ入るの精神(日本的精神) ・愛国心は国民である誰もが持っている自然の感情。この感情は可燃性が高く平素は眠っている。これにこと更に火をつけようと扇動する人々は国を危うくする。 ・意地悪の功罪 ・科学や文学が商業(商品経済の隆盛)の後から踵を接して...続きを読む興る ・利という海で泳ぎながら自分自身の利に鈍い人間の魅力(利他の精神) ・裸の人間同士の関係の中に国籍は関係なくなる。
この時代、差別が強く辛い思いをした人がたくさんいたのでしょう。蝦夷地の人もそうですけど、主人公の高田屋嘉兵衛さんも。貧しく身分の低い中きら登りつめた主人公は立派です。
ついに最終巻。『サンケイ新聞』で1014回に渡って連載された歴史小説である。 本巻は,嘉兵衛とロシアのリコルドとの,不思議で,純粋で,思慮深く,責任感のあるやり取りが余すところなく描かれていて大変面白かった。 しかも,両者とも実際に日記のような記録を残しているので,その記録を基にして,ある出来...続きを読む事(言動)に対して,嘉兵衛側から見た描写・感想と,リコルド側から見た描写・感想を並列して解説されていて,これがとても興味深いのである。その時の二人の機微に触れることができて,臨場感で溢れている。 江戸時代の後半に,ロシアとこういうやり取りをした一船頭がいたとは。 最終巻を読むためには,第5巻の長々としたロシアの説明は必要だったんだなと納得した。 題名にちなんだ部分を転載しておこう。 かれが,その晩年を送るために都志本村に建てた屋敷は,小さな野にかこまれていて,季節には菜の花が,青い沖を残して野をいっぱいに染めあげた。(p.347) 菜の花はむかしのように自給自足のために植えられているのではなく,…中略…肥料になって,この都志の畑に戻ってくる,わしはそういう廻り舞台の下の奈落にいたのだ,それだけだ,といった。(p.348) みなさんも書いているように,ロシアの船が去って行くときの 「ウラァ、タイショウ」 「ウラァ、“ぢあな”(ディアナ)」 の場面では、目頭が熱くなっちゃったよ。 人間はわかり合えるんだよ。
司馬遼太郎が江戸時代の商人高田屋嘉兵衛の生涯を描いた長編歴史小説全六巻。日露双方、文化、風土の違いはあれど分かり合える部分も多いのが印象に残る。 江戸時代も後半、蝦夷地の開発が進む中、高田屋嘉兵衛はロシアとの争いに巻き込まれ日本が捕虜としたゴローニンの報復的にロシアに囚われる。 あくまで一商人の...続きを読む嘉兵衛なのだが使命感や大局を見渡す視点など江戸時代の人々の文化的な水準の高さを表象しているように思える。言葉遣いや態度など司馬遼太郎は浄瑠璃の影響を指摘している。 日本が初めて本格的に直面する近代国家の進出。硬直的な幕府の官僚と対象的な嘉兵衛の生き方、態度を現代社会に置き換えてみるとどうなるのだろうか。 嘉兵衛の故郷淡路島。対岸の本州に送る菜種油の原料の菜の花が咲きほこる地。そして故郷を飛び出し船乗りとなる嘉兵衛。江戸時代の商品経済の勃興を象徴した題名。 司馬遼太郎ならではの日本人論とロシア論も含め、間違いなく歴史小説の名作の一つでしょう。
2014.11.12 いい作品だった。 嘉兵衛の生き方に魅了された。 外交とは真剣勝負であり、結局は個人の信頼関係が大事。そして、その積み重ねなのだ。 仕事も全く一緒だね。
松前藩においては、統治する蝦夷事情にあまりに暗く、さらには蝦夷人に対して極めて横暴であった。対して、意外にも幕府は蝦夷人の人権を保障する姿勢を表明していた。北方領土をめぐる日露の問題については、あのまま蝦夷を天領とし続けて松前藩に戻すことなければ、決着を見ていたやも知れない。
高田屋嘉兵衛さんの6冊に渡る物語を読破しました。高田屋嘉兵衛さんについては歴史の教科書で少し習うくらいでした。実際は函館の発展に大きく貢献し、ロシアと日本の外交にも大きく貢献して一商人の範疇を超えており、とてつもなくスケールの大きな方でした。確かに江戸時代後期に現れた快男児であったと思います。嘉兵衛...続きを読むさんとリコルド少佐との友情もなかなか良かったです。読んでいて元気が出る本でした。(^o^)/
読んだきっかけ:古本屋で50円で買った。 かかった時間:9/23-9/30(7日くらい) あらすじ: 突然の災厄が、嘉兵衛を襲った。彼自身がロシア船に囚われ、遠くカムチャッカに拉致されたのだ。だが彼はこの苦境の下で、国政にいささかの責任もない立場ながらもつれにもつれたロシアと日本の関係を独力...続きを読むで改善しようと、深く決意したのである、たとえどんな難関が待ち受けていようとも……感動の完結編。(裏表紙より) 感想:
嘉兵衛、ロシアに拉致される。長かったけど読んでよかった。リコルド少佐との友情。嘉兵衛の人徳。外交交渉を町民がやってのけたこと。全く知らなかった出来事、これは知っとくべき。
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