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人間と認められるのは十二歳以上、十二歳未満の子供は狩り立てられてしまう……衝撃のディストピアを描く表題作を新訳で収録。『ユービック』と同一設定の中篇「宇宙の死者」、現実崩壊SFの傑作「地図にない町」(新訳)、晩年の異色作「シビュラの目」ほか、幻想系/子供テーマSF全十二篇を収録する傑作選
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Posted by ブクログ
「地図にない町」を含むファンタジー色の少し強い短編集。ファンタジー色が強いとは言っても、日常に感じた違和感に対して自分が狂っているのでは?と疑問を抱かせる描き方はディックそのものです。足元から揺らいでしまう不安感がたまらないです。 風変わりなところでは「妖精の王」、「欠陥ビーバー」(冴えないビーバ...続きを読むーが主人公の寓話なのです!)。印象的なのは「宇宙の死者」急速冷凍された遺体が半生者となっているという設定など「ユービック』に通じる不気味なものがあります。子供の教育を扱ったものや、人工妊娠中絶を扱って炎上した表題作など、作品に現代が追いついてきた感がある作品集です。コロナで隔絶された日常をディックが経験したらどんな作品を著したでしょうか?
表題を含む12篇のSF短編を収録した本。 著者の他の作品と同様かそれ以上に、独特な世界観が繰り広げられている。 個人的には、8番目の『新世代』が皮肉たっぷりで話の落としどころも意外で面白かった。 子どもの人格が歪むのは全て親の養育が関係しているため、18歳まではロボットに人間の子どもを育てさせよう...続きを読むという社会の話。 親の身勝手さへの風刺、全て親の養育に原因があるとする理論への風刺、見方によってはどちらとも取れると思われる。 また、最終作の『シビュラの目』は、最後、 著者の、自国への祈りにも似た愛が感じられて胸を打った。
現代的ファンタジーから古典的なSFまで12+1編を詰め込んだ短編集。冷戦時代のアメリカを痛烈に批判する姿勢を強く感じる。 描写は飛び飛び&奇想天外な部分もあり若干読みづらいが、尖ったアイデアはどれも秀逸。 私のベストは『新世代』『ナニー』『フォスター、おまえはもう死んでるぞ』
表題作と『地図にない町』を読んだ。 ・表題作:12歳未満の子供は人間とみなされず両親の希望があれば中絶トラックによって回収、処分されてしまう。かつての中絶の概念が拡張され、人間とみなされるかどうかは、産まれてくる前かどうかではなく、代数(高等数学)を扱える年齢以降の世界となっていた。 表題作は後ろの...続きを読む解説を読むと中絶批判の作品として取られることが多いらしいが、全然そんな風には受け取らなかった。人間として人権を与えられる根拠、基準は何かといった普遍的な問いが題材だったと思う。私の考えは本書で扱われた内容とは違うがそれはまた別の機会に。 ・地図にない町:ある日駅員に定期を買いに来た男が降車駅として指定した駅は存在しない駅だった。駅員がそれを説明しても、男はそんなはずは無いと強弁するが、地図を見せられ駅が存在しないことが示された瞬間、男は忽然と姿を消してしまう。 最近映画『メッセージ』を観たばかりだったので、似た主題を感じた。記載したような導入部がキャッチーで面白かった。
これまで読んだフィリップ・K・ディック作品とは少し毛色が違うものが多かったような印象を受けます。 「妖精の王」はファンタジー要素が強く、珍しくしっかりとハッピーエンド! 「欠陥ビーバー」はビーバーが主人公の作品だし、「父さんもどき」は子供たちが主人公(私の頭の中ではスタンドバイミー的な雰囲気でした。...続きを読むいや、内容は全く違いますが)です。 ほかはいつものPKD作品ぽい、不思議な終わり方やディストピア的作品です。 個人的には「宇宙の死者」が面白かった。 「フォスター、お前はもう死んでいるぞ」は命を金で買う的な時代。主人公はいささか過敏というか過激な気もするが、周りの状況と自分の置かれた環境を考えるとああいう気持ちになってしまうのも分かる。 「人間以前」は誰が人間であるということを決めるのか?というひとつの問いが示されている。内容的に中絶問題の関係者から抗議もあったようですが…。 ところであの終わりはどういうことなんでしょうかね。
ファンタジー色が強いものから、古典的なディストピアの話まで、全部趣向が違っていて粒ぞろいの話が集まっている。 表題作の「人間以前」がやはり面白い。フェミ的に反発があると思うけど、批判的な側面に偏らないで、もしこんな世界があったら、という空想で生き生きと描いているのが良い。 あとは、「地図にない街」...続きを読む「新世代」あたりが、先の読めないSFもといファンタジーでよかった。 ただ、SFは短編じゃなく長編が好きだと思った。
表題作が興味深いのだが、巻末収録短編のタイトルが「シビュラの目」である… 私はSFを完全に誤解していたなぁ、だから手を出さなかったんだろう、SFは全てにおいて「無機質なもの」と思い込んでいた。人間の在り方も科学的に進んでしまう事で精査され、人間味が薄れ、設定の奇抜さを楽しむもんだと思い込んでた。設定...続きを読むの奇抜さで競う、と言うのはBLにもある側面だ。 収録作の『ナニー』に差し掛かっているが、ほぼ球体のアンドロイド家政婦ロボットの話。旧式は新式と対決すると、性能の差、と言う絶対値を打ち破る事は出来ない。人間の様に「火事場のクソ力」なんてものはスペックになければ出すことが出来ない。旧式のロボットは修理するより買い換えた方が安いと言うのに何故人間は「修理してでも直してくれ」と思ってしまうのか。機械が機能として行った事でしかないのに、それにたいして感情を生み出してしまうのか。機械を通して人間が人間であるが故の人間味を表現できるのがSFと言うジャンルかもしれん。旧式は新式に勝てない、と言うスペック差を凌駕しトム・フィールズ家のナニー(ロボット)は新式と闘って勝ち、自身もボロボロになってしまった訳だが、トムは新型に買い換えた方が安いと散々言われても愛着のあるロボットを修理に出すがトム自身はなぜ自分の家のナニーが壊れかけているのかの本当の理由を知るのは後になってからだが、旧式なのに新式に勝てたのがナニー自身に(家を守らねば)を言う使命感があったのか、と思い、その部分で私の好きなアンドロイドものじゃねぇか、となったのだが、その辺はスルーの着地点だった(笑)俺ん家のナニーを傷つけたやつは許せない、これは俺の家のナニーなのだ、だからおいそれと新品と取り換えるなんて出来ない、と言う気持ちは「役に立ってくれる機械」に対する愛着なのだが、その愛着が高じるとこういう結末になる訳だ…人間って愚かで可愛い生き物だと言う事もSFには書いてあるなぁ。 ホラーありSFありダーク・ファンタジーあり、実にバラエティ豊かな短編集だ。『宇宙の死者』を読んでるんだが、死んでからも「半生期」が残っていて冷凍保存された遺体にプラグを繋いで精神活動が呼び出せるとか、設定が面白い。 「新世代」、無論SFであるが、子供の成長に悪影響を及ぼすのは幼少期の環境・親との関係であるとされ、生まれた直後から教育機関で子供は育てる人間には接触させず、アンドロイドが子供の成長に携わる。9歳になるまで絶対に親は子供と接触してはならない、会う時は許可申請、そして開拓者精神でたたき上げで生きて来た主人公が子供の初めて会った後、子供は親(つまり生身の人間)が実験動物と同じ匂いがする、と言う…どちらが幸せなんだろう…ディック自身、親がきちんと愛情を注ぎ親の責務として子供を育てない人間がいると言う現実に対し憤りを抱いているからこう言う作品を書いたんじゃなかろうかと思うが、人間が人間に触れないで人間として育つ筈がなかろう、と思うよ。
いくつかのファンタジー短編のあと、SF短編が続く。 SF初期の空気が感じられて面白い。 個人的には、表題作の「人間以前」が凄いと感じた。 確かに、突き詰めれば、そういうことだよな。
【由来】 ・ 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】
ペシミスティックで、哀れと悲哀が全編に漂うなあと思った。時代なのか、それがディックの特徴なのか。 翻訳の仕方があまり好みじゃなかったというのもあるかも。原書読んでないのに偉そう言えないけれども。 短編集で読みやすかった。
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