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日本の中世を代表する知の巨人、兼好が見つめる自然や世相。その底に潜む無常観。たゆまない求道精神に貫かれた随想のエキスを、こなれた現代語訳と原文で楽しむ本。現代語訳にも原文にも総ルビ付き。 ※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
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Posted by ブクログ
兼好法師の人生観と信念の在り方について書かれた随筆である。時代は日本の中世だが、現代の私たちも考えることについて書かれているので、読みやすい。優秀な人の日記をのぞき込んでいる感覚で読める。 無常感が兼好に大きく影響を与えている。例えば、季節の移り変わりは急に起こるのではなく、次の季節が徐々に進...続きを読むんだ結果であること。出来事(本書では祭り)のピークだけでなく、始まりの準備段階や終わりの静けさまで味わってこそ、真の出来事を見て体験したことになると言っている。これには、共感の声が多数上がるのではないかと思う。最近だと「エモい」という言葉の一部に包含されてしまぅている気もするが、振り返ることも出来事の体験だと考えると、私たちは数ある物語を今も体験し続けていて、撚糸のように数ある出来事の延長線上に生きているのだろう。つまり、一生をかけて出来事を紡ぎ合わせていくのだ。 また、自分との対話が真の友人との会話なのだと兼好は主張する。万人に当てはまるとは思わないが、言わんとしていることは分かる。誰も話を聞いてくれない、話をする人がいないと嘆く大人は多い。それは、今の友人関係では話しづらい内容だと自覚していると言っているのと同じだ。そんなことを言ったら、いつまでも思いは募るばかりである。だったら、自分に発散させれば気兼ねなく、会話をすることができるというものなのだろう。 兼好法師は、無常観を存分に味わうことが人間のあるべき姿だと考えているのではないだろうか。それゆえに、人生の無駄をそぎ落としスマートな生き方を良しとしている気がする。目標達成のためには時間を大切にし、人間関係では無駄な主張を抑え、五感を感じるように生きることを本書から学ぶことができた。
吉田兼好こと、卜部兼好とされている。兼好法師の死後、草庵に残っていたものを、まとめたもので、243段あり。 ビギナーズ・クラシックスは、よい部分の抜粋で、しかも、現代訳と原文、解説となっていて、比べながら読める。 文庫版もあって、すきなところ、感じるところ、ぱらぱらと辞書感覚で気軽に読めるのがい...続きを読むい。 冒頭しか知らなくても、こういったダイジェスト版で拾い読みをして、やがては作品全体を知ろうとするものです。 また、各段も、すべてが大事ではく、そのところどころを読むだけでも十分役に立てるかと存じます。 序段 つれづれなるままに、日暮らし硯に向かひて、心にうつりゆく由なしごとを、そこはかとなく書き付くれば、あやしうこそもの狂ほしけれ 今日はこれといった用事もない。のんびりと独りくつろいで、一日中机に向かって、心をよぎる気まぐれなことを、なんのあてもなく書きつけてみる。すると、しだいに現実感覚がなくなって、なんだか不思議の世界に引き込まれていくような気分になる 3段 よろづにいみじくとも、色好まらざらむ男は、いとさうざうしく、玉のさかづきの当なき心地どすべき どんなにすばらしくても、恋の真味を知らない男は、非常に物足りない、みごとな玉製の盃の底が抜けたように、見かけだけで男の魅力が欠けている 8段 世の人の心惑はすこと、色欲にはしかず、人の心は愚かなるものかな 色欲ほど人間を迷わせるものはない、なんて人間はばかなんだろう 19段 折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ 四季の移り変わるようすは、何につけても心にしみるものがある 29段 静かに思へば、よろづに過ぎにしかたの恋しさのみぞ、せむかたなき 心静かに思い出にふけると、何事につけ、過ぎた昔の恋しさだけがどうしようもなくつのってくる 30段 人の亡き後ばかり悲しきはなし 人の死後ほど、悲しいものはない 75段 つれづれわぶる人は、いかなる心ならむ 紛るる方なく、ただ独りあるのみこそよけれ 時間を持て余す人の気がしれない 何の用事ものかくて、独りでいるのが、人間にとっては最高なのだ 79段 よき人は知りたることとて、さのみ知り顔には言う 立派な人は知っていても、知ったかぶりをしないものだ 108段 寸陰惜しむ人なし 短い時間を積み重ねて大切に使う人はいないものだ 109段 過ちは、やすき所になりて、必ず、仕ることに候ふ 失敗というものはきまって、なんでもないところで、やらかすものなんです 155段 世に従はむ人は、先づ機嫌を知るべし 世の中の動きにうまく合わせようとするなら、なんといっても時期を見逃さないことだ 170段 さしたることなくて人のがり行くは、よからぬことなり 大した用事もないのに、人を訪ねるのはよくない 175段 世には心得ぬことの多きなり この世の中には、わけのわからないことが多いものだ 233段 よろづのとがあらじと思はば、何事にもまことありて、人を分かずうやうやしく、言葉少なからむにはしかじ。 人前でどんな過失もないようにしたい、と思ったら、何事にも誠意をもって当たり、人を差別せず礼儀正しく、よけいな口をきかないのが最上である 243段 問ひ詰められて、え答へずなり侍りつ 問い詰められて、応えられなくなりました (兼好の父が、8歳の兼好に問い詰められたのをかたっています) 了 目次 ()は段数 自己発見の道へ つれづれなるままに(序) 出世の本道とは いでや、この世に生まれては(1) 政治の倫理規正 いにしへの聖(2) いい男の条件 よろづにいみじくとも(3) 長寿への警鐘 あだし野の露(7) 女の色香の威力 世の人の心(8) 住まいは人なり 家居の、つきづきしく(10) 蜜柑の木を囲う独占欲 神無月のころ(11) 友あれど心の友はなし 同じ心ならむ人(12) 読書は古人との対話 独りともし火のもとに(13) 旅は心のシャワー いづくにもあれ(15) 四季の移り変わり 折節の移り変はるこそ(19) むなしい欲望の遺跡 飛鳥川の淵瀬(25) 思い出は心をうるおす 静かに思へば(29) 葬儀と後日談 人の亡き後ばかり(30) 月見る女の心配り 9月20日のころ(32) 悪筆は個性の表現 手のわろき人の(35) ばかを嘲る大ばかもの 5月5日、賀茂の競べ馬(41) 独善の悲哀 仁和寺にある法師(52) 住まいは夏向きに 家の作りやうは(55) 会話のマナー 久しく隔たりて(56) 求道者の覚悟 大事を思ひ立たむ人(59) 芋代に財産食いつぶす 真乗院に、盛親僧都とて(60) 謎文字の歌 延政門院いときなく(62) 既視体験のふしぎ 名を聞くより(71) 「うそ」の分析 世に語り伝ふること(73) 利に群がる蟻人間 蟻のごとくに(74) 孤独の哲学 つれつれわぶる人(75) 軽薄人間の定義 今様のこととも(78) 無能の能ということ 何事も入り立たぬ(79) 未完の完ということ 羅の表紙は(82) 偽善も善、偽悪も悪 人の心素直ならねば(85) 滑稽なる骨董品 ある者、小野道風の書ける(88) 怪獣猫またの正体 奥山に猫また(89) 決心即実行の難しさ ある人、弓射ること(92) 生と死は隠れたコンビ 牛を売る者(93) 過度の執心は破滅のもと その物に付きて(97) 生き字引の翁又五郎 尹大納言光忠入道(102) 男は女に磨かれる 女のもの言ひ掛けたる(107) 女の本性ねじけ論 かく人の恥ぢらるる女(107) 人生はこの一瞬の積み重ね 寸陰惜しむ人(108) 安心にひそむ危険 高名の木登り(109) 勝つ思うな、負けぬと思え 双六の上手(110) 分相応にふるまえ 40にも余りぬる人(113) 良友と悪友の条件 友とするにわろきもの(117) 鰹の生食の始まり 鎌倉の海に(119) ペット飼育批判 養ひ飼ふ物には(121) 男子の必修科目 人の才能は(122) 鏡に映る醜い顔 高倉院の法華堂の三昧僧(134) 始めと終わりの美学 花は盛りに(137) 生前の心得 身死して財残る(140) 京・関東の比較論 悲田院の尭蓮上人は(141) 家族愛の政治論 心なしと見ゆる者(142) ありのままの死 人の終焉のありさま(143) 理想の老境 ある人のいはく(151) 無常迅速ということ 世に従はむ人(155) 春の日の雪仏 人間の営みあへるわざ(166) 訪問のマナー さしたることなくて(170) 自己本位を貫け 貝を覆ふ人の(171) 酔いどれ百態 世には心得ぬこと(175) 人生は一点突破 ある者、子を法師に(188) 独身礼賛論 妻というものこそ(190) 夜の輝き 夜に入りて(191) 「うそ」と人間鑑定 達人の人を見る眼(194) 非理には非理を 人の田を論ずる者(209) 味噌の酒肴 平宣時朝臣、老いののち(215) 貧富平等論 ある大福長者(217) 技と道具との連携 よき細工は(229) 無技巧の技巧 園の別当入道は(231) 社交の極意 よろづのとがあらじ(233) 主体ある精神を 主ある家には(235) ずっこけた感涙 丹波に出雲という所(236) すり寄る美女をかわす意地 2月15日、月明かき夜(238) 父と問答の思い出 八つになりし年(243) 解説 兼好と「徒然草」 作者・作品の紹介 付録 「徒然草」探求情報 兼好略年譜 「徒然草」参考系図 卜部氏系図 天皇家略系図 平氏(北条・大仏・金沢)略系図 堀川家系図 「徒然草」関係京都略地図 ISBN:9784043574087 出版社:KADOKAWA 判型:文庫 ページ数:306ページ 定価:720円(本体) 発行年月日:2002年01月 発売日:2002年01月25日初版 発売日:2015年08月25日39版
つまみ読みだけど、とても面白かった。手にとって良かったと思える一冊。 印象的なのは特にこの二つ。 ●人生は、長くも思えるが、実際は今この一瞬の積み重ねである。何かしたいのであれば、今日の夜、明日の朝と思わず、今この一瞬に行動せよ! ●目の前の一事に全力であたれ (弓2本のくだり)怠け心が出てく...続きを読むる隙も与えず、やろうと思ったその瞬間からすぐさま実行せよ。 人生訓的な内容がとても心に刺さる。 当時の余談もめちゃくちゃ面白い。高官のラブレター代筆とか。 あと兼好法師は女性に厳しい。
わかりやすい!読みやすい。訳の後にある一言が、おもしろかったり新たな視点だったり解説だったり。それが、読者にとっての徒然草に幅をもたせてくれる。 繰り返し読んでもっと咀嚼してみたい。
兼好さんの考える生き方考え方振舞い方指南本。今に通じる話ばかりでなかなか刺さるものがあります。ちょっとひとと話すときに気をつけねばと考えさせられました。
古文への最初の出会いとその後の一般的な付き合い方が、日本人を古典から決定的に引き離していると思います。 「ビギナーズ・クラシックス」シリーズは、原文の直訳だけではなく、訳文の中に解説的な補足と文意をより理解しやくする表現を加筆してくれています。 例えば有名な序段の一文。訳文の括弧内は、訳者の配慮で...続きを読む加筆されたと思われる表現です。 原文 つれづれなるままに、日暮し硯に向かひて、心にうつりゆく由なしごとを、そこはかとなく書き付くれば、あやしうこそもの狂ほしけれ。 訳文 (今日はこれといった用事もない。のんびりと独りくつろいで、)一日中机に向かって、心をよぎる気まぐれなことを、なんのあてもなく書きつけてみる。すると、(しだいに現実感覚がなくなって、)なんだか不思議の世界に引き込まれていくような気分になる。 括弧内の有無で理解が全然違います。 鎌倉時代に書かれたエッセイが、こんなに自由な主張をしていたとは全然知りませんでした。無常観を底にした随筆ですから、これを特に高校生のような時期――散漫で、傷つきやすく、知識も浅いとき――に、「高尚な」文学として紹介してしまえば、古典との修復不可能な関係と、致命的な眠気に導くこと簡単です。 しかし実際には、くだらない話や自慢話も収められた、フランクに触れられる内容です。 なんだか、おじさんのFacebookへの投稿みたいな感じですよ。
改めて勉強してみた。やはり吉田兼好の視点はいいね。ビジネス社会でも役に立つ。弟子が難しい仕事をしているときは師匠は見守り、簡単なところになると「気をつけろ」とアドバイスをするくだりなど、なかなかいい視点だ。もう一度読みたい。
徒然草の内容に関心があっても、古文は苦手という人にオススメ。先に意訳があり、内容を楽しんだ後に原文を眺める、という仕様になっており、各段に解説もあってわかり易い。個人的には、先に古文がある方が読み慣れているので、少々心地悪かったが、読み終わる頃には古文の意味合いがスムーズに入ってくるようになったので...続きを読む、古文の練習としてもある程度意味のある本なのだと思う。兼好法師の鋭利且つ独特な視点は、現代にも十分通ずる内容だ。
今から700年前の随筆であるが、現代にも通じるところが多い。 ●無常迅速:考え方や価値観、繁栄、生死は常に変化 ●牛を売る者:生死は常に身近にあり、死があるからこそ生が引き立つ。 ●高名の木登り:ミスは油断したときに(安きとき)に起こる ●未完の完:あまりに完成された者は趣が無く、どこか欠けていたり...続きを読む、足りない方が趣があるものである。(そのためわざと未完で終わらせる建造物がある) ●蟻のごとくに:多くの人は名誉や金銭のために、蟻のようにあくせくしているが老いと死はすぐにやってくる。名利に明け暮れている人は、老いが近づいていることを意識しない(老いや死を恐れない)。一方で、無常の原理をわきまえず、老いと死を必要以上に恐れる愚人もいる。
高校に入試問題などで読んだ(解いた)のが最後…問題として解くのではなく、随筆としてじっくり読めました。兼好法師の自然や世相に対する美意識と真理を貫いた人間観や教訓は確かな説得力をもってズドンと胸に落ちました。何度でも読み直したい一冊。
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ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
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