『幼女戦記』幼女✕架空戦記を深堀り解説!【元ネタ考察】【ネタバレあり】
2013年に刊行されたカルロ・ゼン先生のラノベを原作に、コミカライズやアニメ化、2019年には劇場アニメが公開された『幼女戦記』。ケレン味しかないタイトルですが、その中身は意外や意外、“架空戦記もの”と表現しても遜色ない硬派な戦争ドラマです。
「魔導」というファンタジー要素を効果的に取り込みながらも、登場する戦闘教義(ドクトリン)や作戦行動は実話ベースのものも多く読み応え抜群! そんな『幼女戦記』の魅力をぶくまる書店員が徹底解説します。
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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事には一部ネタバレを含みます。
目次
『幼女戦記』とは? 原作やメディアミックスをざっくり解説
もともとは「Arcadia」という小説投稿サイトで連載・完結済みだった作品が、エンターブレインで書籍化されたのがラノベ版『幼女戦記』。2016年4月からコミカライズ連載開始、2017年1月からTVアニメ放送開始、2019年には原作の流れに沿いつつオリジナルエピソードを加えた劇場アニメが公開された。
ラノベ版はシリーズ累計発行部数400万部を突破、映画は興行収入約4億円と大ヒットを記録(実写版『賭ケグルイ』『東京喰種2』が興収3億円ほど)。アニメ2期、劇場版第二弾への期待も高まっています。
Arcadia版、ラノベ版、コミカライズ版、アニメ版とメディアごとにキャラデや設定、ストーリが少しずつ違うので、見比べて違いを楽しむのもおすすめです。
『幼女戦記』のあらすじ
2013年の日本に暮らすエリートサラリーマンが、リストラした同僚の逆恨みにあって殺されてしまう。そして、神を自称する謎の存在Xによって、魔法が存在する異世界に幼女、ターニャ・デグレチャフとして転生させられるのだった。転生先の世界は戦時下にあり、貧しい孤児が生き残るためには軍隊で出世するしかない! 安全な後方勤務を目指して職務に邁進するターニャだが、その思惑とは裏腹に銃弾砲弾肉片が飛び交う最前線の戦場ばかりへと派遣され……。
『幼女戦記』の登場人物
主要人物
ターニャ・デグレチャフ
金髪碧眼に透き通るような白い肌の小柄な幼女。その可憐な外見は“フェアリー(妖精)”というコールサイン(無線通信に置いて割り振られる符号)が与えられるほど。弱冠9歳にして、高い魔導適性と冷徹な判断力で次々に戦果を上げ、国内では銀翼突撃章の栄誉に輝いた英雄“白銀”と讃えられ、国外では“ラインの悪魔”と恐れられている。後の第二〇三航空魔導大隊での活躍など、功績は数え切れない。
黙っていれば可憐な美少女のはずなのに、ついつい恐ろしげな顔芸を披露しがち。というのも実は、「見た目は子ども、頭脳は大人(30代のサラリーマン男性)、その名は白銀ターニャ・デグレチャフちゃん!」だからである。
天才でも秀才でもない自分にコンプレックスを感じながらも、職務を全うしていたところ、恨みを買って殺害される――という幸の薄さが、後方勤務を希望しつつも前線に送られ続けるターニャとしての今生にも現れているよう。兵士は人的資源、感情はコストと捉える合理主義の権化。
存在X
電車に撥ねられて死亡した主人公の前に現れた謎の存在。本人は創造主(神)を自称するが、主人公は「悪魔」もしくは「存在X」と呼んでいる。無神論者や合理主義者が増えたことを嘆いており、人間に信仰心を取り戻させるために主人公を転生させたり、特定の人間に神の加護を与えるといった干渉を行う。
1巻で主人公がコンタクトしたゼウスっぽい老人以外にも、仏に似た複数の腕をもつ男性、鎧を装着した騎士など、さまざまな「存在X」が存在しているようだ。
帝国軍
【第二〇三航空魔導大隊】
ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ
ターニャの初めての部下。魔導適性があるために徴兵された徴募組で、幼年学校卒業後にターニャが小隊長を務める第二〇五強襲魔導中隊第三小隊に配属。ターニャとバディを組んで過酷なライン戦線の死線をくぐりぬけた。その実績が認められ、第二〇五強襲魔導中隊長シュワルコフ中尉の推薦で促成将校課程に進み、後に少尉任官。第二〇三航空魔導大隊の編成時にはターニャ編成官の副官として働き、自身も厳しい選抜試験を突破して大隊の一員となる。初陣では戦場の惨状に圧倒され、戦うどころか嘔吐してへたり込む有様だったが、ターニャとともに戦場を駆けるうちにすっかり逞しくなり、ターニャをして「優秀すぎる部下」と言わしめた。
東條チカ先生曰く「ヴィーシャだけは紅一点にしようと思って、かわいくなれ、かわいくなれと念じながら描いています」とあって、ヴィーシャがいるシーンだけは背景に花が咲きがち。珈琲を入れるのが上手という家庭的な一面も持つ。原作小説やアニメと異なり、筋金入りのターニャ大好きっ娘として描かれている点が見どころの一つ。
マテウス・ヨハン・ヴァイス
第二〇三航空魔導大隊の副長兼第二中隊長。地獄の選抜試験をくぐり抜けてきた猛者の一人。当初は“堅物”とも言える真面目さがたたって、古い教範どおりに動いてしまうなど、とっさの機転が利かなかった。しかし、二〇三大隊で実戦経験を積むことで軍人として成長。ターニャが全幅の信頼を置く副長となった。
明るく朗らかな性格で、隊員たちの士気を上げるムードメーカーとしても、ターニャから頼りに思われている。
ヴォーレン・グランツ
士官学校を卒業したばかりで、祖国を守る使命感に燃える新任航空魔導師。戦況悪化によって、卒業するやいなや最激戦区であるライン戦線へ投入され、ターニャ並びに二〇三大隊の教導を受ける。戦場でターニャの戦いぶりを見て彼女に心酔する。
魔力量の多さとメンタルの強さを買われて、二〇三大隊隊員のタイヤネン准尉が食あたりで離脱した穴を埋める補充要員に抜擢された。ヴァイスの副官役を務めるようになるまで成長する。
ヴィリバルト・ケーニッヒ
第二〇三航空魔導大隊の副長兼第三中隊長。長髪、姫カット、キツネ目がチャームポイント。軍人にしてはノーブルな見た目通り、他の中隊長に比べて物腰穏やか。小説版には一度名前が登場するだけで、ほぼコミカライズ版、アニメ版のオリジナルキャラクター。
ライナー・ノイマン
第二〇三航空魔導大隊の副長兼第四中隊長。頑健な体と勇ましい性格を持つ。戦闘時に冷静さを欠くことがあり、海軍との演習中に戦艦のマストを破壊してしまったことも。小説版には登場せず、コミカライズ版、アニメ版のオリジナルキャラクター。
【軍首脳部】
ハンス・フォン・ゼートゥーア
帝国軍参謀本部戦務参謀次長。ルーデルドルフと並んで帝国の将来を担うエリートで、穏やかな物腰と学者然とした振る舞いが特徴。前世からの知識を活かして、俯瞰的視点で戦争を見通し、この時代の常識を覆すような提案をするターニャを高く評価していて、第二〇三航空魔導大隊を彼女に授けた人物でもある。ターニャの希望を汲むためにさまざまな便宜を図るが、結果としては彼女を前線で酷使することになっている(悪気はない……はず)。
エーリッヒ・フォン・レルゲン
帝国軍人事局課長。優秀かつ真面目な常識人で、将来を嘱望されているエリート将校。ターニャのことを、兵士を人間と思わない無慈悲な“戦争狂(ウォーモンガー)”と恐れている。彼女を前線に配置することで戦争が激化するのを危惧して、ターニャを後方に置こうとしているため、図らずもターニャと利害が一致。それゆえ、彼女からは「互いを信頼している良い関係」と勘違いされて懐かれてしまい、胃が痛い思いをしている本作随一の苦労人。
クルト・フォン・ルーデルドルフ
帝国軍参謀本部作戦参謀次長。同期の友人であるゼートゥーアとは対照的に豪快で軍人らしい性格の持ち主。大局的な視点から作戦指揮を取っていて、軍令の大半に関わっている。しかしゼートゥーアほど現実主義者ではないようで、軍大学時代にも「鋭敏かつ精力的ながらも、空想癖の傾向有り」という評価が下されている。
ターニャを“孫娘”呼ばわりするなど、年相応の子ども扱いする数少ない軍人。
【その他所属】
アーデルハイト・フォン・シューゲル
新型演算宝珠開発を行う、帝国軍技術開発部の技術開発部の主任技師でエレニウム九七式、九五式の開発者。魔導工学・概念術理学の天才として知られているが、「機能美に欠ける」という理由で安全機構を除外しようとする、技術試験が失敗すると被験者のせいにするといったMADな価値観を持つ。
エレニウム九五式を聖遺物として完成させるため、存在Xから祝福を受けた後はMADさが抜け、綺麗なシューゲル博士に生まれ変わった。
エーリャ
わがままボディで早起き体質なヴィーシャの幼年学校同期でルームメイト。ヴィーシャに「極東のニンジャみたい」と評されるほど耳ざとい情報通で、上官からも「諜報員に向いている」と言われているそう。現在は中央軍に所属して様々な任務に従事しているというが……。
レガドニア協商連合軍
アンソン・スー
協商連合軍の航空魔導師。国家と国民への忠誠心、若い兵士と共に死ぬ覚悟を胸に秘めた軍人の鑑であり、妻と娘を思いやる優しい父でもある。また、帝国がオースフィヨルドを奇襲した際には、作戦の意図を素早く読み取りってスクランブル出動をするなど指揮官としての優秀さも伺える。ライン上空でターニャと会敵したことがあり、祖国を苦しめる“ラインの悪魔”を憎んでいる。開戦当初から参戦していたベテラン。一兵士としてもターニャに肉薄する実力を持つ。
合州国軍
メアリー・スー
アンソン・スー大佐の娘。戦局の悪化に伴い、母親とともに合州国へと亡命する。ほとんど家にいなかった軍人の父親を深く愛しており、父を助けるため共に戦いたいと願う。その願いが存在Xに聞き届けられ、奇跡を授けられた。
メアリー・スーという名前は、理想のオリジナルヒロイン(俗に言うオリキャラ)を指す隠語。
『幼女戦記』相関図
複数国家が登場する上に各国の組織も多岐にわたり、物語が進行すると登場人物が昇進して階級が変わったりもするので、ふと迷子になりがちです。基本だけ押さえたミニマムな内容ですが、帝国の主要人物相関図と所属、帝国と帝国を囲む列強の関係を図にしてみました。
『幼女戦記』漫画版の魅力
① 『幼女戦記』というタイトルなのに内容はハードな架空戦記
ようじょせんき。舞台は戦時下のとある町、厳しい現実の中で健気に生きるかわいらしい幼女を主人公に日々の悲喜交交を描く――という戦争?日常ほのぼの漫画を連想する(?)タイトルですが、そんな貧弱な想像力をあざ笑うがごとく、本作内ではハードな“戦争”が描かれています。
しかも、異世界転生ものにありがちな「俺TUEEEEEE」系かというとそうでもない。確かにターニャは無双しがちだが、そこが物語の肝ではないのである。人間が過去に犯した過ちを転生者視点で眺めながら、そこに至った経緯をリアルタイムで感じ、行く先に絶望する――これぞ架空戦記の醍醐味ではないだろうか。
② 天使と見紛う美少女なのに中身は悪魔!?
エレニウム九五式を起動させるため神に祈りを捧げる姿は、敵国軍司令部の面々が「なんと無垢な」「神よ…!!!」とひれ伏しそうになるほどの超絶美少女ターニャ。しかしその時本人はひたすら神を呪っていた……!
外見は天使・中身は悪魔というとなかなかベタなギャップですが、ここまで突き詰められるとその魅力の前にひれ伏さずにはいられない。小さな体で、いかつい部下たちを威圧し牽引する姿にもキュンキュンしてしまいます(でも絶対上官にはほしくない…)。
③ 後方勤務を希望しているのに常に前線へ……
過酷な戦場で勇敢に戦い功績を上げているのも、軍大学で優秀な成績をおさめるのも、全ては安全な後方勤務に就いてぬくぬくと過ごすため。それなのに上官とは思いがすれ違うばかり。戦場では敵軍を手玉にとる“ラインの悪魔”も人事ばかりは思うようにいかないようです。
中央への帰還がてら、保養地で美味しい食事を楽しんでいる最中でも、前線からの容赦ないラブコール(招集命令)が。上層部の勘違いが止まらない――!
④ 本心を誤解して、心酔する部下が続々
ターニャ自身はいかに楽をして功績を上げるか、上層部への対面を保ちつつ負担を最低限にするかといったことを考えているだけなのに、数々の武勇伝や厳しい表情から「常在戦場の心がけが徹底されている」「何たる愛国精神」「大隊長になら命を預けられる」と心酔する部下が続出。そのお陰で二〇三大隊は高い士気と団結力を保持できていると言っても過言ではない。しかし、ターニャが慕われているのは勘違いのせいだけでなく、部下に無益な負荷をかけない(選抜試験はさておき)現代の合理的マネジメントが功を奏した結果でもあるだろう。
⑤ レルゲン中佐とのすれ違いが切ない!
後方勤務がしたいターニャと、ターニャを前線に送りたくないレルゲン中佐。利害は一致しているはずなのに、ターニャの第一印象が悪すぎたせいで(後輩をボコボコにしばいていた)レルゲンは彼女のことを「最前線を望む狂人」と誤解したまま。2人とも「戦争はもうゴメンだ」という点で意見も合致しているのに……。
すれ違いが解消される日がくることを願ってやまないが、そんな日はきっとこないのだろう。
⑥ 二〇三大隊は快進撃を見せるも帝国は……
19巻現在、二〇三大隊は上述のタイヤネン以外に脱落者は出ておらず、作戦もほぼ全て成功している。厳しい戦いを強いられている中で、数少ない快挙といえる活躍ぶりだ。しかし、帝国全体の戦局を見ると、戦争が長引いて兵士も物資も不足しているうえ、共和国や連合国が参戦してきており、さらには合州国の影も、というジリ貧状態。全世界を敵に回して戦い抜いて滅ぶのか、それとも講和に光を見出すことができるのか――。
『幼女戦記』の基礎知識
①どうしてこうなった!? 3コマでわかる「転生」の理由
人事部の“首切り処刑人”として冷徹に仕事に邁進していた主人公(ターニャの前世)、リストラを宣告した社員から恨みを買い、線路に突き落とされてしまった。
命を落とした彼の目の前に現れたのは、ギリシャ神話のゼウスを彷彿とさせる外見で「創造主」を名乗る老人(存在X)。最近の人間たちに信仰心がないことを嘆き、その最たる例である主人公を改心させるため、異世界へと転生させる。
「科学文明・平和に恵まれた世界で生物学的にも社会的にも優位」ゆえに信仰心を保つ必要がないと語る主人公を、「非科学的な世界で女に生まれ、戦争を知り追い詰められるがよい!!!」と、魔導適性の高い女の孤児、ターニャ・デグレチャフとして生まれ変わらせたのだ……!
②転生先の世界ってどんなとこ?
科学技術や文化のレベルは20世紀初頭のヨーロッパを思わせる世界で、作品内の地図からも地理的には現世と同一であることがわかる。しかし、存在する国家名やそれまでの歴史、国境線などは違っている。そして最大の違いは、魔導(魔法)が存在するということです。
魔導
人間の持つ魔力を用いて自然界の化学反応式を書き換え、自らの意思で行使することができるが、ささやかなことしかできない「魔法」を、効率よく使いこなすために学問として探求・昇華したのが「魔導」。魔導師も、俗に言う“魔法使い”ではなく、エンジニアやサイエンティストに近い存在とされている。
演算宝珠の発明以降は超常的な術式行使が安定して可能になり、魔導も戦争の道具として用いられるように。
魔導師
この世界でも、魔法の素養を持つ者はごく少数しかいない。そのため、マイノリティの常で、国や地域によっては忌諱され迫害を受けることも。
演算宝珠が発明されたことで兵科としての航空魔導師が誕生し、実戦に投入されているものの、その運用には問題が山積している模様。
希少な存在かつ魔力量にかなりの個人差があるため、帝国では兵士として運用可能な高い魔導適性を持つ者は、老若男女問わず徴用される。
演算宝珠
産業革命がもたらした技術革新によって誕生した、魔法と科学が混在するこの世界ならではの、エポックメイキングな魔導具。旧来の魔法使いが全ての術式を一から組み上げていたのに対し、演算宝珠は魔導師が魔力を流し込むだけで術式を組み上げ、魔法を発動させることができる。高度な術式を効率良く行使できるようになったほか、複数の魔導師が一律に同様の術式を扱える点も革新的。通信機器や記録装置としての機能も備えており、非常に高価なため、大量生産が難しい。デザインは持ち運びやすく頑丈な精密機械である懐中時計をベースにしている。
エレニウム九五式
複数搭載そのものが難しい魔導核を4つも搭載した、“マッドサイエンティスト”シューゲルらしい設計の新型演算宝珠。高性能である反面、非常に不安定なためターニャですら制御できず、一度は開発が打ち切られることに。ところが、存在Xによって奇跡を与えられ、最後の起動実験中に聖遺物として完成し、恩寵を与えられたターニャの専用装備となる。「起動時に神への賛美を唱えてしまう」「使用するほどに神への信仰心が増してしまう」という信仰促進機能付きで、ターニャ曰く「チートアイテム(呪い付き)」。
強力な兵装だが、ターニャは精神汚染を嫌って、九七式と併用するなど極力使用を控えるようになる。
エレニウム九七式
九五式のデータを元にシューゲルが開発した先行量産試作機。魔導核を2つ搭載した双発同調タイプ。ターニャの要請により、耐久テストの名目で第二〇三航空魔導大隊へ選抜試験時から配備された。従来の演算宝珠を圧倒する性能を持ち、並の魔導師では扱いきれない代物だが、優秀な魔導師である選抜試験参加メンバーは九七式を使いこなしてしまう。以降、九七式は第二〇三航空魔導大隊の標準装備となった。
【物語の主要国と世界情勢】
本作に登場する国家は、西欧諸国を中心に実在する国家がモチーフとなっています。作中の国家と実在の国家が厳密に一致するわけではありませんが、「このエピソードはあの国がモデルだな」と、元ネタを想像してニヤリとしてしまうはず!
帝国
ターニャらが所属する国、別名ライヒ。首都はベルン。広大な領地と効率的な経済システムを有する新興国で、人種や性別で差別をされない理想国家を標榜している。ほぼ全ての国境線が列強国と面しているため、周囲の国を全て仮想敵国としており、諸外国から警戒されている。
実世界の旧ドイツ帝国+オーストリア・ハンガリー帝国に相当する版図を治めており、国旗に描かれた「双頭の龍」も、オーストリア・ハンガリー帝国を統治していたハプスブルク家の「双頭の鷲」がモデルと考えられる。
レガドニア協商連合
経済主導の政治体制を持つ国家で、「十人評議会」という評議委員による合議制を敷いている。帝国の北方に位置し、帝国領ノルデンにおいて係争状態にある。低迷する国内情勢を盛り上げるための政治的パフォーマンスとして、軽い気持ちでノルデン進軍を決めたが、帝国に大敗。さらにこの進軍が、フランソワ共和国やアルビオン連合王国、果ては合州国も巻き込んでの世界大戦へと発展していくこととなり、列強諸国から酷く責められた。
実世界の旧スウェーデン=ノルウェー連合王国にあたる版図、つまりスカンジナビア半島を所有している。
フランソワ共和国
帝国の西に面する、歴史ある大国。首都はパリースィイ。豊かな土壌に恵まれた農業国であると同時に、貿易や植民地支配でも経済基盤を築いている。レガドニア協商連合の敗戦によって各国のパワーバランスが崩れるのを恐れて、帝国へ宣戦布告。帝国が協商連合に戦力を傾けた隙を突こうとするが……。
実世界のフランス共和国に相当する版図を治めている。帝国との間で展開している「ライン戦線」は、中世から近代にかけてフランス-ドイツ間でライン川を挟んでの領土争いにちなんでいると考えられる。
アルビオン連合王国
帝国の北西、フランソワ共和国の北に位置する島国。首都はロンディニウム。王政を維持しながら近代化にも成功した王国で、その歴史ゆえに情報機関が集めた情報によって他国家を操り、戦局を見ておいしいとこ取りをするという老獪な動きに長けている。今回の大戦にも中立の立場を示しながら協商連合と共和国に支援をし、あわよくば漁夫の利を狙う。
実世界のイギリス、アイルランドにあたる版図を治めており、「アルビオン」という国名はブリテン島の古い呼び名。卑きょ……じゃなくて、巧みな外交で自らの利を増やしていくという設定も、第一次世界大戦時のイギリスを彷彿とさせる。
ダキア大公国
帝国の南東に位置する国。協商連合、共和国と組んで帝国の包囲網を形成すべく、60万人もの大群を率いて侵攻を始めるが、時代錯誤なドクトリンのせいで、二〇三大隊にフルボッコにされた。そのレベルの低さはダキア軍・三個師団(約5万人)に対し、二〇三大隊(48名)でも一方的に蹂躙されるほどで、「帝国への団体旅行客に誤射したのでは?」と疑われた。
実世界のルーマニア王国にあたる版図を治めている。ルーマニア王国も第一次世界大戦では中央同盟国(ドイツ帝国、オーストリア・ハンガリー帝国、オスマン帝国、ブルガリア王国)に敗れている。
合州国
帝国や共和国らとは違う大陸にある大国。中立国を名乗っているが、帝国、共和国、連合王国の戦時国際を購入するなど、この大戦に一枚噛む気満々の様子。コミック版ではまだ大きな動きは見せていないが、モチーフとなっているアメリカ合衆国も第一次世界大戦に途中参戦しているため、合州国の動きからも目が離せない。
『幼女戦記』1~4巻の主要な出来事まとめ
とにかく情報量が多く、それもまた作品の魅力となっている『幼女戦記』。
コミカライズ版は原作小説とディテールが異なる部分もありますが、情報の取捨選択が巧みで非常に読みやすくなっています。とはいえ、いつ何が起きたか思い出せなくなるのはよくある話。という訳で、ターニャが第二〇三航空魔導大隊の大隊長となるまでの流れと大きな事件をまとめてみました。コミックの1~4巻に相当する内容です。ネタバレを含みますので復習での利用がおすすめです。
スピンオフコミック『幼女戦記食堂』も要チェック!
完結『幼女戦記食堂』全2巻 京一 / カルロ・ゼン / 篠月しのぶ / 野田浩資 / KADOKAWA
血と硝煙と泥にまみれた本編とは対照的に、美味しそうな匂いがページから漂ってきそうなスピンオフ作品。
日本におけるドイツ料理の第一人者・野田浩資先生監修のもと描いた料理の数々は、20世紀初頭のドイツらしい素朴な魅力あふれるものばかり。
1話に登場するポテトパンケーキなど、甘じょっぱ党にはたまらない逸品!
また、ワインを愛するゼートゥーア少将や、実は甘党だったヴァイス中尉といった、キャラクターたちの日常風景も見どころです。(特に、美味に顔を輝かせるターニャは、中身が30代のおっさんとは思えないほどかわいい!)
巻末に写真付きレシピも収録しているので、ぜひターニャたちが味わった品々に舌鼓を打ってみては?
異世界転生ファンも幼女萌え勢も架空戦記愛好家も刮目せよ!
戦火が徐々に全世界へと広がっていき、これからさらなる盛り上がりを見せてくれそうな『幼女戦記』。TVアニメ1期も劇場アニメも続きを予感させる終わり方だったので、これは続編が期待できるのでは!? コミカライズ版で抜かりなく復習をしておきましょう。
また、「この先が気になって仕方ない」という方は、小説で先取りしておくのもおすすめ。異世界転生ものであり、幼女が主人公という萌え(?)もあり、ハイクオリティな架空戦記でもある稀代の名作に出会えた幸運に感謝しつつ、この戦いの行方を最後まで見届けよ!