『BEASTARS』(ビースターズ)唯一無二の世界観!動物たちの青春群像劇
肉食動物と草食動物、つまり捕食者と被食者。相反する存在が共存する、唯一無二の世界観を舞台にしたヒット作が『BEASTARS』です。
草食動物を愛するハイイロオオカミのオス・レゴシを主人公に、青春や信念を賭けた戦い、恋に苦悩と、人間顔負けの青春群像劇が繰り広げられ、多くの読者(人間)たちをとりこにしてきました。
2020年に無事完結し、TVアニメも大好評だった今作の、基本情報や読者の感想、作品の魅力などをご紹介します。
また、リンク先の電子書籍ストア ブックライブでは、新規入会者限定の50%OFFクーポンを差し上げています。気になった方はご利用ください!
※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事には一部ネタバレを含みます。
目次
『BEASTARS』とは?
キャラクターや見どころの前に、そもそも『BEASTARS』とは何かについてご紹介。基本情報やあらすじをチェック!
受賞歴多数! 動物が主役の人気作品『BEASTARS』
秋田書店の『週刊少年チャンピオン』にて連載されていた『BEASTARS』は、単行本・電子コミック全22巻が販売中。動物たちが主役の新しい青春群像劇として多方面で評価され、累計販売数500万部を超えた人気コミックです。
漫画のヒットを受けて、2019年にフジテレビ系列(地上波)とNetflix(配信)でテレビアニメ化。主人公・レゴシのCVを小林親弘さん、ヒロイン・ハルのCVを千本木彩花さんが務めたほか、小野友樹さん、榎木淳弥さん、小林直人さん、梶裕貴さんなど、今を時めく声優陣が多数出演しています。
プレスコアリング(プレスコ)を使ったアニメは躍動感たっぷり。『BEASTARS』16巻末でも、原作者の板垣先生が絶賛しています。
作者は板垣巴留(いたがきぱる)先生。初連載となる今作で、板垣先生は第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、第11回マンガ大賞大賞、第22回手塚治虫文化賞新生賞、第42回講談社漫画賞少年部門などなど、そうそうたる賞を総ナメにしました。
もともと動物を題材としたイラストを描くのが好きだったという板垣先生。その作風は、オムニバス『BEAST COMPLEX』(秋田書店)でも存分に堪能できます。
『BEASTARS』の物語
肉食獣と草食獣が、その頂点に立つ「ビースター」の元で共存し、肉食が重罪とされる世界。擬人化されたキャラクターは、人語でコミュニケーションをとり、学園生活や社会生活を営むなど、まるっきり人間のように暮らしています。
主人公であるハイイロオオカミ(肉食獣)のレゴシもその一匹。ある日、レゴシが通う全寮制の学校「チェリートン学園」で、アルパカのテムが何者かに殺される事件が発生します。その犯人として、鋭い牙と爪を持つレゴシに疑いの目が向けられてしまい……。
肉食獣と草食獣、本能と理性の間で揺れ動く友情、恋愛、絆。時に悩み、立ち止まり、自分を奮い立たせながら懸命に生きるレゴシを中心とした青春群像劇です。
多様な肉食獣・草食獣が共存!『BEASTARS』のキャラクター
群像劇なだけあり、魅力的なキャラクターが多数登場するのも魅力の一つ。特に注目してほしいキャラを厳選してご紹介します。
レゴシ(ハイイロオオカミ、オス)
チェリートン学園高等部2年(17歳)、演劇部の美術チーム所属。食肉目のイヌ科最大の種類で、初登場時の段階で身長185cm、体重71kg、アゴの力300kgと大型感満載。
学力は中の中。基本的には穏和で内省的ですが、見た目のために警戒されたり誤解されたりしやすい、繊細で不器用な性格です。
さまざまな種族に理解と思いやりがあり、草食獣のみならず虫や海生生物など、生き物全般に優しいイイオトコ(オス)。ただし、家族の話は地雷。
ハルへの気持ちが恋愛感情か食欲かわからずに悩むなど、思春期の青年らしい一面も。淡い恋心はいつしか、肉食獣の本能への葛藤となり、レゴシを苦しめることに……。
ハル(ドワーフウサギ、メス)
高等部3年、園芸部唯一の部員。レゴシ憧れの先輩。時に子どもっぽく感じられる言動は、嘘偽りのない本心の発露。明るくサバサバした性格ですが、レゴシを悩ませるとある一面も。
「草食動物は食われてなんぼ」と、この世界では特異な考え方の持ち主。同じ草食動物であるルイのことも気にかけています。
ルイ(アカシカ、オス)
高等部3年。特待生で、演劇部の役者長(役者チームのリーダー)。名家・ホーンズ財閥の御曹司として育てられた、気位が高い孤高のアカシカ。
花形役者としても先輩としても、圧倒的なカリスマ性で他者を引きつける天性の統率者。将来「ビースター」になるのではと期待されています。ある事件から、反社会的ライオン組織「シシ組」と出会い……。
目指すのは肉食・草食が対等な世界。凛々しい姿からはわからない、凄まじい過去を背負って生きています。
ジャック(ラブラドールレトリバー、オス)
高等部2年、レゴシの親友にしてイヌ科部屋のルームメイト。学年トップの秀才。
レゴシの幼なじみで、実家は隣同士。根暗なレゴシとは正反対の人なつっこい性格で、誰とも仲良くなれるコミュ強陽キャ。しかし、実は自分が人工的に改良された種であることに密かなコンプレックスを持っています。
自分の感情を表現するのが苦手なレゴシのことを知り抜く、よき理解者。2匹が仲良くなった経緯は6巻でチェックを!
イヌ科部屋701号室ではレゴシ、ジャックを含む6匹の仲間たちが、愉快な共同生活を送っています。
テム(アルパカ、オス)
演劇部に属する生徒。チェリートン学園で起こった「食殺事件」により、とある獣の犠牲となってしまいました。
ビル(ベンガルトラ、オス)
高等部2年、演劇部役者チーム所属。
素行不良気味、ヤンチャで生意気な肉食獣。ウサギの血を飲もうとしたところをレゴシに見つかり、犬猿(狼虎?)の仲のような、ライバルのような関係に。信念のあるクズ、そしてある種のツンデレ。
ジュノ(ハイイロオオカミ、メス)
高等部1年、演劇部員。初対面で自分を助けたレゴシに一目惚れします。
同性に妬まれがちな可憐なルックスと、肉食獣ならではの強欲さのギャップが魅力です。
ピナ(ドールビッグホーン、オス)
高等部1年、演劇部の新入部員。
麗しい見た目と所作ですが、ナルシスティック&マイペースな言動で反感を買いがち(心優しいレゴシでさえもイラっとさせる一種の天才)。女の子が大好き。
頭空っぽなチャラオスのようで、抜け目ない性格。
ゴウヒン(パンダ、オス)
本能に抗えない肉食獣のための歓楽街「裏市」の番人。心療内科医として、禁断症状に悩む肉食獣の更生に尽力しています。草食獣とは思えないほどイカツイ顔と体格ですが、レゴシが信頼できる数少ない大人の一人です。
イブキ(ライオン、オス)
「裏市」を根城にするライオン組織「シシ組」の幹部。インテリのため、血の気が多いメンバーの中でも比較的冷静。シシ組の新たなボスを慕っており、忠誠心を持っています。
動物たちが織りなす青春ドラマ『BEASTARS』の見どころ
基本的な情報とキャラクターを掴んだところで、今作の見どころをチェック。たくさんの魅力の中から、特に5つの魅力をご紹介します。
魅力1:動物視点で描かれる等身大の青春
今作には人間が一人たりとも登場しません。しかし、人間同様、もしくはそれ以上に感情豊かな動物たちの、等身大の学校・社会生活が描写されているのが大きな特徴。同族同士または異種間の恋愛から、ライバルとの競争、同性間のいじめ、種族に対する偏見や妬み、果てはSNSをめぐるネット疲れまで、我々の生きる人間社会となんら変わらない様子が描かれています。まさに動物たちの青春群像劇!
また、優しく美しいハイイロオオカミをはじめ、気まぐれなネコ科、会話のテンポがおそろしく悪いナマケモノなど、動物独自の要素も納得性が高く、興味深く楽しめます。それぞれの動物あるあるに基づいたキャラクターの言動はリアルで、架空の世界とはいえ共感しやすいのではないでしょうか。
魅力2:確立された世界観
人間の世界と親和性が高いとはいえ、独自の世界観は非常にユニーク。理解を深めるために、3つのキーワードを整理しておきましょう。
「動物たちの世界の常識」
この世界では、かつて肉食獣は「生命動物」、草食獣は「自然動物」と呼ばれ、協力して暮らしていました。しかし、100年前の「肉草大戦」で敵対することに。あることがきっかけで終戦し、現在の状況に落ち着いた、という設定になっています。
肉食獣が肉を食べるのはNGですが、虫を食べるのはOK。そのため自然と全獣が野菜や昆虫中心の食事を摂っています。しかし、どうしても肉食の欲求が耐えられない肉食動物や、身売りをしないと生きていけないような草食動物のために、「センター街」から外れたところに荒んだ雰囲気の「裏市」が存在します。
肉食獣・草食獣という「陸の生き物」のほか、海で生きる海洋生物が存在しています。しかし、陸の生き物とは言語や死生観が異なっています。
「チェリートン学園」
丘の上に立つ肉草共学、中高一貫のエリート校。授業や学校行事、食堂などは肉草合同ですが、寮のある棟は肉食獣・草食獣別。さらに、寮の中で種族別に部屋が分かれています。
後述の「ビースター」を多く輩出した名門として知られていますが、5年ほど該当者が現れていないようです。
生徒はさまざまなマナーのもと、協力し合って部活や勉強といった学園生活を運営。また、学園自体にも各種族の生態に合わせた施設や措置があります。例えば2日に1回の「生態の日」では、各種族の生態に合わせた環境の部屋で1時間過ごすことで、他種との共存におけるストレスを発散します。
「異種族恋愛/異種族婚」
今作の大きな鍵が「肉食獣」「草食獣」、それぞれの種が歩み合う「異種族交流」。
この世界では、基本的に固有の種を産むことが正しいとされており、同族同士で結婚すると国から「純婚金」が支給されます。学生時代は異種間で交際するカップルも稀にいますが、社会に出ると別れ、同種同士で結ばれることがほとんどです。
異種族婚は10年前から認可されましたが、いくつかの制約があり、まだまだマイノリティです。
おまけ
独自の世界観といえば、各話のサブタイトルも詩的で素敵なので、ぜひ注目を。ほんの一例を挙げるだけでも……
満月なのでご紹介します(第1話)
視界は滲むし全部嫌だ(第25話)
味が濃い夜に僕ら2匹(第42話)
漆の器が2つ並んだような眼(第81話)
友よ 舌根からひれ伏してもよいか(第114話)
などなど。鋭い感性と圧倒的センスにこちらがひれ伏してしまいますね。厳選が難しすぎる。
板垣先生は20巻収録の「無限のテーブルマナー(第170話)」などもお気に入りのようです。
魅力3:肉食獣の食欲に対する葛藤
今までご紹介したように、今作では食肉を禁じられた肉食獣の葛藤が数多く描かれます。強靭な肉体と苦悶する本能、無垢な心。そう形容されるド真面目なレゴシは特に顕著で、ウサギのハルを好きになったことをきっかけに、しばしば自問自答しています。
例えばレゴシは、裏市で出会ったゴウヒンに、ハルへの想いは狩猟本能の変形だと指摘されて苦悩します。その結果確信したのは、本能を律するには、身も心も強くなるしかないとの信念。レゴシがまたひとつ成長した名シーンです。
本能を乗り越えてでもハルへの思いを貫かんとするレゴシ。彼が出した結論とは? 最終巻までハラハラしっぱなしです。
一方で草食動物も、自分たちとは正反対の生態を持つ肉食獣に、理性を超えた憧れを持っています。「肉食」と「草食」、それだけでくくるには複雑すぎる動物たちの心理が、痛いくらいに胸を打ちます。
見た目が動物なだけで、それぞれのもがき方は人間と全く同じ。同じ悩みを抱えている人は、きっと没入できることと思います。
魅力4:名言・名シーンが多すぎる!
名作に名言・名シーンはつきものですが、特に今作には……多いんですよ本当に……(まんざらでもないため息)。迷い、葛藤する人間の心を揺さぶる名言の数々をいくつかピックアップ。
わんこ好き女子興奮!?「俺は彼女に会いたくて来ただけなので」(4巻/レゴシ)
園芸部の部室の入口で鉢合せたルイとレゴシ。本音をさらけ出せないルイと、真っ直ぐなレゴシの対比があざやかです。素直にキュンキュンしちゃう。
レゴシ節炸裂「理解し合えないまま終わるなら…俺がオオカミに生まれた意味ってなんだったんだろう…」(5巻/レゴシ)
歩み寄る意味を模索するレゴシ。ハッとする人間も多いのでは?
今作だから重みを感じる「生徒たちの青春というものは…ものすごく過酷なんです!」(7巻/チェリートン学園長)
全種族の長が集まる「全生物集結評議会」にて、ビースター選出に向けたスピーチ。続く「ヒーローは探すものではなく生まれるもののはずでしょう!!」も圧巻。
強く生きる女性にキュン!「生きる道を決めるのは社会じゃない!!」(7巻/ジュノ)
迷ってる時にこんなこと言われたら絶対好きになっちゃう。
ジャックぅ……(涙)「強くなればなるほど不幸になっていくお前を 僕はもう見ていられないよ…」(7巻/ジャック)
レゴシ以外のキャラにも名ゼリフが多く、改めて群像劇としての魅力を感じます。ジャックの悲痛な声に、「…俺の強さは幸せになるためにあるんじゃないんだ」と返して去るレゴシ。いぶし銀。
……ちょっと止まらなそうなのでそろそろやめておきます。フルアナログのイラスト、線、トーンから感じられる温かみや、明暗のくっきりとした力強い構図が、各シーンをぐっと印象深いものにしています。
魅力5:ビースターを目指す動物たちの信念
タイトルにもなっている重要な設定が「ビースター」。
まずは全国の大きな学園から1匹ずつ「青獣ビースター」が選出され、その後特訓を受けて選ばれた1匹だけが「荘獣ビースター」として世界を牽引する仕組みになっています。
後半になると、今作のタイトルがビースター「ズ」と複数形である理由も徐々にわかる仕掛けに。ネタバレしたすぎて泣きそうなので、未読の方は早く読んでください。
伝説的な「ビースター」の統率のもとで、さまざまな動物の信念がぶつかり合う様はエモエモの極みです。やがて肉草の対立や異種族婚が生んだ悲劇は、社会全体を揺るがす問題に発展し……。
武力行使で治安を守ろうとする者、世界より家族を選んだ者、特権を持つ「ビースター」を目指す者……。何匹もの動物たちが、精神的にも物理的にもぶつかり合い、そして歩み寄っていく展開は、人間世界の縮図を見ているかのようです。
「種族の壁を壊せるのは愛だけ」というレゴシの主張はどこまで通るのか。その果てにどんな世界が生まれるのか。特に終盤は、祈りにも似た気持ちで読み進めてしまいます。
どこまでも巻き込まれ体質のレゴシと周囲の動物が、残酷な世界にどう立ち回るか。何度でも読んで、新たな発見をしてほしい作品です。
『BEASTARS』読者の感想は?【ネタバレあり】
ビースターズというタイトルの意味よ…!
レゴシとハルがサイコーなのは前提として
ルイが好きすぎる……!!!
読み始めた時はここまでハマるとは思いませんでした。ほんとに深くて練られたストーリーで面白かった!最後の終わり方も良い!終わってしまったのがほんとに寂しいです
登場人物や世界に、色々ままならないことを抱えながらも、すべては先へ続いていく、といった感じのする爽やかな読後感。
男女差別や人種差別など、様々な課題の比喩とも目されてきた作品だけれど、結局は、あとがきの「自分以外の人間との交流はいつだって異種族交流。その過酷さと価値こそ、この作品で1番描きたかったことかもしれません」という言葉にあるように、人物のひとりひとり、関係性のひとつひとつを丁寧に描いた、青春漫画らしい青春漫画だったと思う。
Posted by ブクログ
連載初期は「ズートピア」に対する日本版アンサーソング、くらいの位置づけで見ていたが、終わってみればその頂を遥かに超えた名作となった。
生物として超えられぬ決定的な違い。種、肉食と草食、陸生と海生、雄と雌、それらの違いを認めて現実的に共存を探る道。
少年から青年への成長、壮年期の処世、老年期の眼差し。
学生と社会人、それぞれの自由と不自由。
理想が手からこぼれてこぼれて、最後に一かけら残った現実を大切に生きること。
ジョジョシリーズは「人間讃歌」と呼ばれるが、様々な人間を動物の種の違いとして描いた本作もまた、人間を高らかに詠った「人類讃歌」と言えよう。
Posted by ブクログ
おわりに
確立された世界観がいい。人間たちとなんら変わらない動物たちの喜怒哀楽がいい。それに何より、レゴシという等身大(というにはちょっと大型だが)のヒーロー像が素晴らしくいい!
尽きることない魅力で、完結後も我々をとりこにしてくれる『BEASTARS』。アニメ新章の制作も発表され、今後も目が離せません!
そして、いよいよ待望の新連載『SANDA』が『週刊少年チャンピオン2021年34号』からスタート!こちらは”人間”が描かれる物語ですが、のっけから板垣先生らしさ全開となっております(嬉)。
『SANDA』、要チェックです!