“駆逐してやる!!”と誓った少年の運命は『進撃の巨人』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー
今回は、つい先日完結したばかりの『進撃の巨人』をレビューします。巨人の侵攻を100年以上のあいだ防いできた壁が破られ、目前で母親の命を奪われた少年が巨人の駆逐を誓い奮戦する物語です。
著者は諫山創(いさやま・はじめ)さん。講談社「別冊少年マガジン」創刊号からの連載で、単行本は33巻まで刊行中。小説、アニメ、ゲーム、映画など、さまざまなメディア展開がなされています。
進撃の巨人 作品公式サイト
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『進撃の巨人』 1~33巻 諫山創/講談社
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謎に包まれた作品、だけど……
すでに多くの方々がさまざまな切り口で語っている超有名作ですが、それでもまだ読んでいない方のために、なるべくネタバレは避けて語りたいと思います。というのも、この作品は多くの謎に包まれた状態から始まりますが、それが徐々に明かされていくプロセスがあまりに見事であるからです。だから、なるべく知らない状態から読み始めて欲しいと思います。
幕間ではときどき、「現在公開可能な情報」というわかりやすい形で、この世界の設定が少しずつ明かされていきます。しかし、謎の断片は、実は物語の最初のころからさりげなく、“伏線”とも呼べないほど巧妙にちりばめられています。
「あれ? こいつって……」と読み返し、「あー!」と驚かされます。誇張抜きで、読み返すたびに新たな発見がありました。「これを最初から構想していたのか!」と何度も驚かされ、何度も読み返し、何度も至福の時を過ごさせてくれたこの作品に、最大限の敬意を表したい。
終盤から、主人公の行動原理が最大の謎に
私が本作の単行本を買い始めたのは、11巻まで出ていた2013年8月のことでした。記録を調べたら、アニメ第1期の「第57回壁外調査」あたりまで観ていて我慢できなくなり、まとめ買いをしたようです。以降はずっと、新刊が出るたび買い続けてきました。
物語の冒頭で、巨人を「駆逐してやる!!」と誓った主人公の心情は、22巻までは実にわかりやすく真っ直ぐなものでした。ところが22巻の最後を境に、彼がなにを考えどこへ向かっているのかがわからなくなります。アニメでは第4期「The Final Season」が始まるタイミング。つまり最終章です。
23巻以降は急に、視点が主人公中心ではなくなります。裏切り者のバックボーンや心情など残された謎が徐々に明かされていくいっぽうで、主人公の行動原理が最大の謎に変わっていきます。巨人を「駆逐してやる!!」という誓いは、どこへ行ってしまったのか。それまでの行動や言動からすると、理解できなくなってしまいます。
最後はちゃんと着地します
そしてこの状況は、最後の最後まで続きます。連載最終回はやはり我慢ができなくなり、一足先にアプリ「マガジンポケット」で読みました。そして、ホッとしました。最後はちゃんと着地します。謎のまま読者に解釈を委ねるのではなく、ほぼすべてをきちんと理解できるように明かした上で、納得もできる終わり方になっています。お見事!
……これくらいならネタバレにはならないよね? 最終34巻は、この6月発売予定です。読み終えたら、もう一度最初からじっくり読み返して、また新たな発見をしたいです。このレビューの連載は今回で最終回となりますが、締めくくりにふさわしいすごい作品でした。
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『進撃の巨人』 1~33巻 諫山創/講談社
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