マッシーさんのレビュー一覧
レビュアー
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自分の若い頃を思い出す
就職活動をする女子大生の姿が生き生きと描かれている。家柄を考えれば、無理して就職をする必要も無いと思われるが、それに対して反発してなんとか自活して生きていこうと考えている。
漫画を趣味とする主人公の可南子は出版社で働きたいと願う。未だ男性優位の考えがうっすらと残るのが会社であり、筆記試験では合格しても面接では面接官のなんとなく女性を馬鹿にしたような質問に窮して、上手くいかない。大手業界は落ちてしまうのだが、中小の業界への就職活動を諦めずに続けていく。
大学の友人たちとの気心の知れた気軽な会話には、はやり言葉など世代の違いがあって意味が分からず、辞書を引いて理解するという面倒を感じたが、正直 -
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大人の「おとぎ話」
大人の話と言えば、エロティックなもの。加えて乱暴な、暴力的な諍いものが大概だろう。いわゆるえげつない話しである。そうした先入観があるから、読んでいても大して面白いとは思われない。突飛な作り話でバカバカしいと思う。でも、大人が集まればたぶん似たような話しをするだろうから…
この小説に出てくる人物も、ヤクザの女に手をつけて殺されかけているホスト、空き巣の話し、父の弟と関係を持ち、精神科で強制的に治療受けている自殺願望がある女性(高校生)、過疎地の若い漁師の話し、美容整形治療中の女を乗せたタクシー運転手の話し、新種の花の開発に携わる研究員と付き合っているが無気力に生きる女性の話し、などが収められて -
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お夏のさりげない助太刀
第二話 お前のそばで……
大阪から仕官を求めてここ目黒で居を構えた鬼王虎之助は、なかなか良い仕官の道が見つからないでいた。確かに名前は豪快ではあるが、名前には似つかない容貌である。ただ器用な性格で、口入れ屋の龍五郎からの賃仕事で日々を暮らしている。
同じ目黒不動のそばにある”たけや”というそば屋におえんという年増がいて、虎之助とおえんは気を通わせる仲である。虎之助は長い浪人暮らしに疲れを感じているのだが、武士の身分を捨てる覚悟が定まらない。
武士として身を立てることとおえんを妻に迎えたいという二つの気持ちが空回りする。淡々と大人の恋が描かれていく。話しは流れるように進んでいき、虎之助とお -
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いよいよ物語が佳境に入る
味見方同心だった兄、月浦波之進が殺された理由を探してきた弟の魚之進がだんだんとその確信に近づこうとしている。
波之進が残した言葉、「おいしいものの裏にある悪」とは。
おいしいものは「ケイク」であることが判明。
特に「まぐろの千切り」の段では、料亭「おくやま」の板長・丁次が殺される。
その犯人「出島屋」の修二郎は西方の美味神で丁次を誘惑する。
当時は得体の知れないバニラを丁次が修二郎から盗んだがか、食べしまい殺された。
物語のこの辺りが微妙でとても面白い。香料が思わせる話しだ。
そして、さらに北谷道海こと河内山宗俊と向島に住む中野石翁が抜け荷に絡んでいることが浮かび上がる。
もう -
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幕閣鳥居耀蔵の執拗な追跡
麻布一本坂の女将の名をそのまま付けた「小鈴」という小さな飲み屋。
毎晩飲みにやって来る町人たちが提供する様々な悩み事や事件。
それらを明快に解決する女将とその仲間たち、すなわち、小鈴と以前は瓦版屋で今は岡っ引きの源蔵そして引退した同心の星川、裏に義賊の面を持つ日之助の活躍。
その物語を挟んで同時に進行するのが、解明は派の文人や武士たちの「捲土重来」の筋書き。
大砲を撃って大阪の天満一帯を焦土として逃亡して、後に爆死したという大塩平八郎。
図らずも、彼は生き残り再び乱を起こす計画を抱いている。
彼を中心に、鎖国政策を続ける幕府に異を唱える開明派の人たちは幕閣の鳥居耀蔵の厳しい弾圧が加