【感想・ネタバレ】まほろ駅前多田便利軒のレビュー

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「あんたはきっと来年忙しくなる」
「旅をしたり、泣いたり笑ったりさ」
「とてもとても遠い場所。自分の心の中ぐらい遠い」
まほろ駅前の便利屋の多田が依頼を受けて「息子」として見舞いに行った曽根田のおばあちゃんの予言だ。
新年早々、多田は子犬を預りながら、市バスが間引き運転をしていないか監視をするという仕事をしていた。ふと気付くと子犬がいない。と、バス停のベンチに座っている男の膝に子犬は抱かれていた。
「お前、多田だろ」
その男は高校時代の同級生、行天だった。小指の傷で分かった。高校の工芸の時間、裁断機を使っていたとき、同級生がふざけていて、小指がスパッと飛んだ時の傷跡である。行天はその時すぐに拾ってくっつけたので、くっついてはいるが、いつまでも生々しい傷跡を残していた。
行天は小指が飛んだ時に「痛い」と言った以外は、高校時代、全く言葉を発しなかった。
 だから、行天は高校時代、多田だけでなく、誰とも友達ではなかったのだが、何十年ぶりかであったその夜、自分から話しかけてきたのだ。
「あんた、今何の仕事してんの?なあなあ」とちゃらけた感じで。
真冬なのに、素足にサンダル。「今晩、多田の事務所に泊めてくれ」と言う。
二人ともずっとまほろ市にいたのに、高校卒業後会わなかった。行天は多田の予想に反して結婚歴があり、子供も一人いるということだった。多田は順調に幸せな人生を歩んでいるという行天の予想に反して、離婚して子供はいなかった。そして、大学を卒業して順調に就職したにもかかわらず、今は便利屋をしていた。行天は今は家族はおらず、帰るところも無いようだった。
そのまま行天は多田の事務所に居候を続け、たいして役に立たない従業員として働いた。
まほろ市は東京の町田市がモデルになっているそうである。
東京か神奈川かどっちつかずの町。夜はヤンキーであるれる町。東京都南西部最大の住宅街、歓楽街、電気街、書店街、学生街。スーパーもデパートも商店街も映画館もなんでも揃い、福祉と介護制度が充実している。まほろ市民として生まれた者は、なかなかまほろ市から出て行かず、一度出て行ってもまた帰ってくる割合が高いそうだ。
そんな、まほろ市の「便利屋」多田のところには、さまざまな依頼がくる。大抵は自分でやれないことはないのに人にやってもらいたい依頼。
依頼者の代わりに動物を預かったり、探し物をしたり、家族の送迎をしたり、物置の片付けをしたり、人を匿ったり…。
「便利屋」の仕事を通して、様々な人間模様が見えてくる。一見「教育ママ」でありながら子供に無関心な親。その結果、知らぬ間に闇バイトに巻き込まれている子供。DV、風俗、暴力…。
多田も行天も心に深い傷を負っている。そのため淡々としているが、実は傷ついた分、誰かを愛そうと無意識のうちにしているのが分かる。だから二人の行動は滑稽だが暖かい。

「旅に出るよ」と予言があった割には、「まほろ市」の中から出ず、まほろ市の中を深く、そして人の人生の過去を深く旅する小説だった。

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2024年04月08日

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ネタバレ

便利屋として様々な依頼を受ける中で、依頼を達成するだけじゃなくて、多田と行天の関係性や過去が他の登場人物と絡む中で分かっていく様が凄く良かった
過去の依頼主が再度登場して会話したり、人との繋がりが奥深くて好きだった

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2024年02月26日

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ゆるーい雰囲気のお話をのんびり読みたいと思って手に取ったので、いろいろとちょうど良かったです。登場する人物達は、いちいち個性的で愛着が湧きました。ゆるーい中にもシリアスな場面が適度に織り込まれていて、私好み。このコンビいいですよね。ずっと見ていたくなる魅力があります。

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2024年01月23日

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自分の子どもが死んじゃって妻とも別れるとこになったらどんな気分でどんな生活を送るかなと考えた。けどまったく想像がつかない。今毎日見てる笑顔とか毎日聞かされているしょうもない話とか小言とかから、ほぼ意識していないけど気持ちの潤いをもらっているよなぁと思った。やはり失うのは嫌だ。放っておいてほしいと思うことは頻繁にあるけど、一人になったらかなり寂しいと思う。
その一方で、万が一そんな悲しい出来事を経て一人になったとしたら、その経験は自分を強く優しい人にしてくれるかもしれないとも思った。

「舟を編む」以来、三浦しをんを読むのは二作目だけど、この人の書くものは味わい深くて面白い。「舟を編む」とはちょっと違う雰囲気で意外だった。この人の頭の中どうなってんだと思った。

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2023年12月23日

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松田龍平、翔太兄弟で深夜ドラマで昔、放送されていたそうですが、私自身、ドラマは観たことございません。ですが、小説を読んでいくうちに、2人のやり取りが浮かび大変笑いをいただきました。
初めは、マイナスとマイナスの関係で反発する2人が、一つ一つの案件解決する度に、引き合う感じが素敵です。そして、笑いもあり!読む場所を考えなければ、ニヤけてしまいます。
続編もあるので、続けて読みたいと思います。

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2023年09月11日

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数年前から町田に事務所を置いていて、通えば通うほど町田良いなあと感じているこのタイミングでまほろ駅前を投入!ローカル補正も入って大変面白かった。三浦しをんはめちゃくちゃうまいなあ。多田も行天も過去に負った傷を抱えてってキャラ設定で個人的にはあまり好きな造形では無いんだけど、なんと愛すべき二人だろう。文章も軽妙なのに感じ入る部分も多くてとても良かった。永遠にこいつらの話を読んでいたい。自分が週に何日も足を運んでだんだん好きになってる街がモチーフだと思うと星5つにせざるを得ない。とても良かった。

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2023年08月28日

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このゆるい感じというかちょっと社会からずれてる人達の話はリアルでとても好きな雰囲気の作品。
多田と行天の相性も良く、会話から行動まで違和感なく読めるし、なんだかんだお互いを思いやってて、いいコンビだなと思う。ドラマ化した瑛太と松田龍平もぴったりだったと思うし、第二弾も面白そう。

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2023年08月13日

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映画が大大大好き!
早朝に目が覚めてしまいだるそうに商店街のコンビニへ煙草を買いに来た多田に向かってニヤニヤしながら「お!多田ちゃ〜んw朝帰り〜?」って話し掛ける変なまほろ市民の役やりたい。
そして多田から「誰だあいつ」って思われたい。

原作も超面白かった!多田の行天への扱い(印象?)は原作の方が厳しいw
映画では知ることのなかった行天のさりげない気遣いに萌え死にそうやったし、星さんの意外な一面も知れて良かった。
多田も行天も人と生きていくこと、幸せになることを恐れないでほしい。

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2023年06月15日

購入済み

まほろ駅前多田便利軒

過去に悲しみを抱える二人のおじさんが一緒に住んだり働いたりする話です。
ちぐはぐなバディものでもあり、寄せ集めの家族のような雰囲気もあり、とにかく二人が穏やかに生きられると良いなと思いました。

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2021年10月21日

購入済み

三浦しおんさん、いいです。
軽快な展開、魅力的な人物たち。
ちょっと劇画タッチすぎるかなという場面もありますが。
爽やかな読後感です。

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2020年09月26日

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非常にわかりやすく小気味のいい文章でとても読みやすかった。話もおもしろい。登場人物は少なくはないけれども、性格や価値観などをもとにしっかりと書き分けられてるから、「あれこれ誰だっけ」とならなかった。

行天の暗い過去に触れつつも、多田の救済がメインとなった1作という感じかな。本当にそんな経験をしたんだろうかと思えるくらい、心理描写が丁寧で、読みながらも想像が掻き立てられて、終盤の多田の告白と行天の台詞にはグッとくるものがあった。

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2024年04月04日

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激しい展開や心揺さぶられるようなことは無いけれども、連続ドラマを見ているように目が離せない感じ。
ふたりが頭の中で不器用に動く姿が浮かんできて微笑ましくもあった。

つづき、よみたいかも。

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2024年03月30日

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上質なバディ、ブロマンスものでとても良かった。小説というか、漫画を読んでいる気分になる。お互いに過去に後ろ暗いものがあり、便利屋として街の人と関わっていく様も温かかった。ひょんなことから事件を呼び、巻き込まれていくのも楽しい。個人的にはふたりしてぷかぷか煙草を吸いまくってるのが、不健康そうで不健全な大人のそれらしくて良かったな〜。行天に振り回されながらも、この1年楽しかったのだ。という回想する多田が良かった。

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2024年03月30日

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ネタバレ

便利屋をする多田が学生時代の同級生行天と再開ししばらく共に働くことに
2人に訪れる事情を抱えた依頼主を風変わりな方法で解決していきながら、徐々に2人の過去が明らかになっていく

スタイリッシュな展開が続きやり取りがコミカルに描かれていて読みやすかった。

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2024年02月17日

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行天が出て行ったことを聞いても、驚きもせずに流す人たち。その人の価値は、その人を求める人にしか分からないし、その人だけが分かっていたら、分かってくれたらいい。チワワを含め、全ての登場人物が様々な角度、様々なアプローチの仕方で訴えますが、変化に富むのでくどくない。日々を追う形の書き振りに単調さを感じもしましたが、終盤、多田の告白のシーンからの怒涛の、でも穏やかな展開に、気持ちを全てもっていかれました。まほろシリーズ、次も読みます。

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2024年01月20日

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【巻末の解説より抜粋】
一度切れた冷たい部分は二度と元には戻らない。「歩み寄り」や「癒し」が効かない領域というのが、人生の中には確実にある。この小説はその毅然とした事実を繰り返し書く。しかし(中略)行天自身は、こんな風にも言う。「傷はふさがってるでしょ。確かに小指だけいつも他よりちょっと冷たいけど、こすってれば直にぬくもってくる。全てが元通りとはいかなくても、修復することはできる」

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2024年01月17日

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“不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはない”

面白かった
行天も多田も魅力的

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2024年01月17日

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買って長いこと積読にしていた本。

独特。
登場人物のキャラが個性的で面白い。
実写というよりも、漫画やアニメで見てみたいかも。

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2023年12月17日

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おもしろかった!行天が出て行った時、周りの人たちはあんまり大事だと思ってない感じが、よかった。ふたりは周りから見てちゃんといつもの2人になってるんだろうなと思った。物語も面白かったけど、2人にファンがつきそう。素敵な人物をかくのがじょうずだと思った。

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2023年10月22日

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物語のところどころに
刺さる言葉が散りばめられています。
刺さるかどうかは読み手次第。
失ったものを引きずってるわたしには、
新たなものを手に入れるべきか迷ってわたしには、
刺さる言葉がいくつもありました。


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2023年08月15日

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まあ、いつも通り、この作者の作品はふ・し・ぎ。

あまり興味のない題材と思いつつスラスラ読めてしまうから。

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2023年08月10日

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大どんでん返しはないが、多田と行天を始め人物一人一人の魅力と読みやすい文章のためか読後感がとても良い。早く続きを読みたくなった。

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2023年07月17日

購入済み

でこぼこコンビで似たもの同士

多田と行天のコンビネーションが良い!
多田が出来ないことを行天がやってのける。
行天が行き過ぎないように多田が手綱を握る。
互いを補う存在のようで
同じような虚空を共有する同士でもある。
決して言葉で語り合うことはないのに、
不思議なことにふたりでいることが自然体のような
不確かな絆が、良い!

ルとハイシーとマリの関係性も好き。
てゆうかルルとハイシーが好き。
みんな訳ありだけど、ほっこりする感じが凄く好き。
初めてこの作者の本を読んだけど、
好き。他のも絶対読む!

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2021年09月29日

購入済み

不思議な作品

この物語を読んでいて、初めの設定がつまらない。読む気が起きない。考えてみれば、物語の場所が東京郊外の架空の町「まほろ市」だからなのからかもしれない。さらに、便利屋を営む主人公の多田と店に転がり込んできた級友の行天という人物に、物語の中で通常の生活実態が窺われないのだ。だから共感を持って読み進むことが出来ない。非常に読みづらい物語だ。
しかし、無理にでも読んでいくと、いつの間にか物語が面白くなり引き込まれて、読むスピードも上がってしまう。あっという間に読み終えてしまう。そこに不思議さと魅力を感じる作品だ。

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2018年07月11日

Posted by ブクログ

ゆきずりで同居することになった便利屋と元同級生のトラブル解決物語。すごい面白いわけでもないけどなんだか人情味が出てきて最後読み終わってしまったら2人のその後が気になるような。続きも読んでしまうのだろうな。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

少し独特な雰囲気な作品でした!

どんな事でも、理由がなんであれ、やっちゃったら同じ、失ったものは戻らないという辛い現実がただ待っているだけです。しかし、時間はかかっても失ったものは再生する、一度壊れた幸福でも、もう一度やり直すことだってきっとできる、絶望と同時に希望も生まれるのかもしれないと感じました。

それにしても、行天の様なフラフラした生き方は、男なら一度は憧れる部分はありますよね(笑)
便利屋という職業も、キレイな事なんて全くないのにどこかロマンがある職業で、振り返ると、今作はマイルドなハードボイルド作品様な印象を覚えました!

続編もあるので、また一度読んでみたいです!

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2024年02月29日

Posted by ブクログ

お人好しで不器用な多田と、掴みどころがない行天はナイスコンビ。
2人の掛け合いは漫才みたいで、物騒なこともたまにあるのに、なぜか終始ほんわかした。

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2024年02月21日

Posted by ブクログ

自分の中では珍しく、男性が主人公の話でした。
普通でも変人でも、やはり自分らしく生きることが幸福なんだってこと。家族ってくくりに、こだわり、とらわれすぎていると思う。

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2024年01月24日

Posted by ブクログ

三浦しをんさん直木賞受賞作
読んでいる最中この本はきっと男が書いたんだろうなって思いました。やりとりもゴツゴツしてて
喧嘩 血だらけ 夜の街 等 実際は女流作家でびっくりしました。
便利屋の様々な仕事を通して垣間見る闇やゴタゴタから発展する物語。多田が仕事に対して真摯に取り組んでいるので行天が破天荒でも大丈夫でした。きっと生きてるみんながいろいろな悩みを持ちながら前向きに生きているんだろうと思いました。

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2023年11月12日

Posted by ブクログ

東京のはずれまほろ市の便利屋。多田便利軒。
(三浦さん在住のM市ですね。)
なるほど、最後まで軽快に面白く読みました。
三浦さんは、ヘヴィな題材をライトに書いて、作品に引きずり込んでくれます。
バス停で元同級生を拾ってしまい、二人になった多田便利軒。彼らに依頼される仕事から、街の風景や近所の人間模様が見えてきます。
もちろん、怪しい依頼ばかり。
主軸二人のトラウマになている過去部分は読み足りない気もするけど、血縁とか親子とか家族とか、構えず読める良作です。

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2023年10月26日

Posted by ブクログ

私の地元がモデルだと聞いて読んでみました。
なるほど確かに舞台となっている地域は懐かしさ一杯。
短めのお話のなかで多田と行天が走り回る物語は、昔好きで見ていた探偵ドラマを思い出しました。

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2023年10月01日

Posted by ブクログ

直木賞受賞作にして、映画化、ドラマ化されています。
不器用な、多田と行天のコンビは、ちぐはぐだけど、心が通ってて温かいです。
そんな二人のやり取りは、クスッと笑えて、じんときました。

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2023年08月27日

Posted by ブクログ

多田と行天の不思議な関係に惹き込まれながらいつの間にか2人のことをハラハラしながら見守っている感じで読み進んでいきました。2人は友人同士ではなく、従業員といっても行天の働きぶりが充分なのかよくわからない部分もあり。行天は変わった人だなぁとは思いますが、そもそも「普通の人」なんていないのかもしれません。皆、それぞれいろんな事情を抱えながら日々の生活をおくっているのだと改めて実感。

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2023年07月16日

Posted by ブクログ

行天のキャラが本当にいい。連作短編集のような軽いノリで読めるので、非常に読みやすかった。映画も小説とは違った良さがあった。

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2023年06月23日

購入済み

おもしろいけどディープ

2人の関係性や会話がおもしろいのですが、ストーリーは暗かったり陰鬱とした内容もあり、楽しい!と言う感じではないです。
そういうのも得意な方には良いと思います!
舟を編むなどの作品と同じ作者さんなのが不思議に思えるくらい全然違う印象の作品で、幅広い作家さんだな〜とおどろきました。

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2019年04月02日

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