第二次世界大戦時、ペリリュー島は日本軍にとって大切な軍事基地だったそう。「楽園のような南の島が昔は戦場であった」そのことは史実として知っていましたが…。
主人公は漫画家志望でありながら、兵士になってしまった気の弱い青年。 武田一義先生のホッコリとした絵柄はとても親しみやすいのですが、それが戦場という悲惨な場所とのコントラストを強めている感じがしました。
日を追うごとに減っていく食糧、日本とは違う温度と湿度。なんとしても敵を攻撃しようとする上官、そして戦友たち…極限の中での人間関係の描写が胸に刺さります。
読後は「あ~、現代日本に住んでてよかった…」と思うこと間違いなし!ホント平和が一番!!
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「平成」の終わりに
さよならタマちゃんから作者の作品を愛読しています。本当に優しい線描で、とてもあのSF作品を支えてこられた方とは想像ができません。
その「タマちゃん」での課程で、その繊細なタッチといのちの手触りを昇華させた作者が佳作「おやこっこ」を経て挑む超大作「ぺリリュー」。そのサブタイトルの「楽園のゲルニカ」。楽園とゲルニカ。この異常なまでのコントラスト。漫画史に残る名作だと思います。
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あれだけ攻めていた兵長が、死を恐れるようになる。
コンクリートで生き埋めなんて酷すぎる…。
そして、やはり島民を巻き込んでの戦争は心が痛い。
故郷は無事だと信じて過ごす人達。
そんな中迎える3月10日。東京大空襲。
それだけじゃない。
ここにいる人達は、8月6日に起きることも、8月9日に起きることも、帰国するまで知らないんだ…。
すでに本土の空襲が始める中
拠点としての意味を失ったペリリューで日本兵たちは生きるために食料を盗み、隠れる。この戦いが実際に戦後何年も続いたという事実。
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再び生き残った日本軍の兵士が集合し、米軍の基地から糧食を盗み出すことに成功します。
各隊から集まった当初は、それまでの経緯や以前からの上下関係や確執もありましたが、次第に一枚岩になってゆきます。
「持久に徹する」という大本営の指示を思い出し、長期戦の備えを始める彼らの裏で、日本では東京大空襲がおこるなど、銃後も大きな被害を受けるようになっていきます。
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アメリカ軍陣地に潜入して敵の物資を盗んで戻ってくる。こんな作戦、あまりにすごくて、「え?フィクション?」と思ったけど、ノンフィクションだった。
糧食さえあればある程度人はまともな「生活」に戻れることがよくわかる。食事もないのに持久に徹して1人でも多く敵を殺してなんて、無理だ。
一番ショッキングな話は38話生存本能2 。
コンクリ攻めされた穴を掘り出すことに成功し、片倉兵長たちを救出することに成功するのだが…
黒塗りで描かれないからこそ、彼らの惨状を想像させられる。
生きるために。
死なないために。
人はいくらでも残酷になれるし、体より先に心を失うんだなぁ。悲しくて、怖い。
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先の大戦の日本軍を描いた実録コミック。ペリリュー島の攻防戦はすでに決着がついているのだが、「降伏させてもらえない」日本兵は、食料を求めて夜陰に紛れて米軍基地に忍び込んだり。もはや何のために生きているのかも分からない。旧日本軍の戦い方は、あまりにもひどすぎる。大本営には「国民あっての国家」という発想がないんだな。
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ついに東京大空襲を迎える時期。
本土でも戦況がますます困窮を極めてくる中、
遠く離れたペリリュー島でも、
事態はより重く苦しいものになりつつあった。
仲間との合流や米兵からの糧食奪取作戦など
明るい材料が見える反面、だからこそ
より深刻さを増して突きつけられる現実がつらいです。
でも、かつて現実にあったこと。目を逸らしてはいけない。