生まれながらに持った才能を自分では全くそれと気づかない人間がいるらしい。才能のある状態がその人にとっての「普通」だからだ。特に何の才能もない書店員にはうらやましい話である。本作の主人公のモブこと影山茂夫・中学2年生もそんな類の人間で、生まれついての超能力者だが、本人はそれを「人を傷つけかねない力」と認識し、特別ステキな才能だとは思っていない。それどころか超能力を持たない秀才の弟と自分とを比べて「僕も何者かになりたい」と渇望してさえいる。
超能力でも手に入れられないものがあることを彼はよく知っている。例えばモブの幼なじみのツボミちゃんは、手を使わずに物を宙に浮かすことができるモブよりも、脚の早い男の子に夢中になった。既に自身に備わっているものに満足できないのは、大人になってからも変わらないし、それが10代ならなおさらのこと。アイデンティティーの獲得にもがき苦しむ彼らの状況を「それが若さだ」と一言でまとめることは簡単だけども、そんな単純なものではないはずだ。当の本人たちの心中など、とうに大人になった私たちの記憶からは薄れてしまっている。苦しみながら自己を獲得していくキャラクターたちの誰かは、かつての自分だったかもしれないのに。
『ワンパンマン』原作者・ONEが描く本作。迫力ある超能力バトルも必見。
感情タグBEST3
迫力ある?戦い
モブくんは争いに巻き込まれてテルくんと戦うことに。テルくんのオーラはすごいけど、やっぱりモブくんの力には敵わないんだ… テルくんがちょっと悲しい。落ち武者になってるのも悲しい。エクボはここでさよならなのか!?
Posted by ブクログ
ネーミングも適当な塩中と黒酢中の抗争に巻き込まれ、適当な偽ラブレターの指示通り出かけてしまうモブ。しかし、黒酢中にもう一人の能力者テルが登場したことで面白さが加速度的に増していく。非暴力主義のモブの思想が師匠である霊幻の言葉とは、作中でもエクボが言っているが台無しだ。モブ100%で次巻へ。おまけ漫画も良かった。『重版出来』では作者の負担として書かれいるが、ONE氏の才能からすると楽々書いているような気がする。
Posted by ブクログ
「あのさ、何で小物とか凡人とか…
いちいち他人を下げないといけないのかな。
いや… 彼は意外と
イイヤツだったのかもしれないと気付いただけ。
あんたと比べてみて。」
対決
塩中学校の新聞部に所属するモブと同じクラスの米里イチは宗教団体(笑)に潜入取材した際モブの凄まじい超能力を目撃したことがきっかけで彼についてもっと調べることにした。
なのでモブの弟である1年生の律の元に取材に向かった。
それに対して律は兄の超能力は天性のもので彼にとって兄は世界の基本だったと。
そして今度はその強い力によって(笑)の信者たちが拠り所をモブにしてサイコヘルメット教という新しい宗教団体を作るくらいだ。
米里は弟の支店から見たモブについて取材したいというが律は兄の超能力は見せ物ではないと断った。
律にとってモブは世界の基本なので自分も同じように超能力が使えるようになると信じていたが使えなかった律は兄の力が安いもののように捉えられているのが我慢ならなかった。
しかしそんな律に対してモブは筋肉やモテる力が欲しくて女子に人気がある弟が羨ましいと事もなげに言うのだった。
欲しいと思っている人にその能力が与えられず、持っている人をうらやましいと思う気持ちはよくわかるだけに、律のモブに対するこじらせた感じがよくわかる巻だった。