黒岩重吾のレビュー一覧

  • 飛田ホテル
    はっきり言って誰も救われない。けれど読後に辛さがないのが不思議で、そこがいい。日陰者が集まってより深く影を作っていく。昭和の、まだ戦争の残り香さえあるような、そんな短編集だった。
  • 落日の王子 蘇我入鹿(下)
    『落日の王子 蘇我入鹿 上 (文春文庫)』では蘇我氏がクーデターで物部氏を失脚させて、政治の中枢を握るところまで、『落日の王子 蘇我入鹿 下 (文春文庫)』で、乙巳の変で蘇我入鹿・蝦夷親子が暗殺されて、翌年に大化の改新という政治改革が始る手前で終わっている。

    蘇我氏が台頭して、入鹿・蝦夷親子が暗殺...続きを読む
  • 天の川の太陽(下)
    この小説は天武天皇(大海人皇子)と、天智天皇の皇子(大友皇子)の戦い「壬申の乱」について描かれたものです。
    色々な立場の各登場人物の心の移り変わりの様子が丁寧に書かれており、また、身分(血統)や階級が絶対的だった時代ならではのモノの見方や考え方に触れることによって、古代をいつもとは違う視点で味わう...続きを読む
  • 天風の彩王(下)藤原不比等
    不比等は持統女帝の寵愛を受け律令政治家として台頭する。娘・宮子を文武天皇に嫁がせ皇太子を得、もう一人の娘・光明子を皇太子妃とした。天皇家との婚姻により、藤原氏の権威と勢力を拡大させていく不比等の野望。権力の頂点に立った男の真実に迫り、華麗なる生涯の光と影を活写する長編古代史ロマン。
  • 中大兄皇子伝 上
    通常の大化の改心と孝徳天皇への譲位まで
    皇子の女関係をめぐる展開になるのか、間人皇女(実妹)、額田までが登場し、大海皇子も随所に登場
  • 中大兄皇子伝 上
    後の天智天皇こと、乙巳の変~大化の改新で有名な中大兄皇子を描いた小説です。
    文章は一人称で、葛城皇子=中大兄皇子が独白をするスタイルで語られています。

    なんとなく、一人称形式がとっつきにくかった感はありますが、本書で中大兄皇子に対する印象が少し変わりました。

    王者たる者の深い孤独をのぞき見てしま...続きを読む
  • 闇の左大臣 石上朝臣麻呂
    700年ごろ。天智天皇,大友皇子,天武天皇,持統天皇,文武天皇,元明天皇に仕えた物部朝臣麻呂の話。
    麻呂は石上物部に生まれ,蘇我・物部戦争では中立の立場を守ったがゆえに生きながら得ることが出来た。
    蘇我氏に敗れた物部氏は政界から遠ざかり,物部の民は奴婢として貴族らに仕えることを余儀なくされ,麻呂も冠...続きを読む
  • 白鳥の王子 ヤマトタケル 大和の巻
    全6巻。

    古代史いろいろ書いてる人。
    やっぱりルーツは知りたくなりますよね。

    まあ。
    古代だから。
    資料もほとんど残ってないだろうし。
    多少はファンタジーな感じにもなりますわ。

    ファンタジーは嫌だけど、
    これは許容範囲。
    ある程度人間、ヤマトタケル。
    この人の著書の中で一番好き。

    この人の他...続きを読む
  • 中大兄皇子伝 下
     上巻で大化の改新が終わってしまうので、少しトーンダウンしてしまうのはまあ、しかたないかな。でも、弟への嫉妬、憎しみというまた新しい見所があります。一人称で書かれているのがその効果を更に増しています。
  • 落日の王子 蘇我入鹿(上)
    これまでの蘇我入鹿の人物像は、自分の野望の為に権力を専横し、
    鎌足と中大兄に滅ぼされたという印象しかなかったが、
    どうしてそうなってしまったかが納得できるような国際状況、
    生い立ち、人間関係などが語られていてとても楽しめた。
  • 落日の王子 蘇我入鹿(下)
    これまでの蘇我入鹿の人物像は、自分の野望の為に権力を専横し、
    鎌足と中大兄に滅ぼされたという印象しかなかったが、
    どうしてそうなってしまったかが納得できるような国際状況、
    生い立ち、人間関係などが語られていてとても楽しめた。
  • 天の川の太陽(下)
    兄、中大兄皇子(天智天皇)の皇太弟として次期天皇を期するも、天皇の子の大友皇子が新天皇に指名され、出家して吉野に隠遁する大海人皇子。
    敢えて忍従しつつも東国の反近江朝廷派の力を集積し、機が熟したところで反撃の狼煙を上げる。

    672年に起きた大海人皇子と大友皇子による「壬申の乱」をテーマにした壮大な...続きを読む
  • 天の川の太陽(上)
    中臣鎌足とともに大化の改新を実行した中大兄皇子(のちの天智天皇)とその弟の大海人皇子の確執を主題とする古代歴史小説。
    兄弟と額田王や鵜野讃良などの女性たちとの奔放な愛の遍歴や大友皇子、大津皇子らをめぐる皇位継承に対する兄弟のやり取りなどを時間をかけて丁寧に描写。

    上巻は自由奔放な中大兄皇子に対し忠...続きを読む
  • 背徳のメス
    一時、直木賞作品をすべて読もうと思い立ち、かなりの数を集めた。まだコンプリートはできてないが今も古本屋などで持ってないものを見かけるとテンションが上がる。もっともまだ手元にないものは、かなりの古書価がつくものが多く、購入には二の足を踏んでしまうが・・

    さてこの作品、昭和三十年代半ばの受賞作。高度成...続きを読む
  • 天の川の太陽(下)
    上巻に引き続き、大海人皇子は石橋を叩いて叩きまくりながら、対中央朝廷の準備をすすめる。そして、待ちに待った兄の天智天皇の死。大海人皇子は味方にした地方豪族たちを率い、三万の軍勢で近江宮を目指す。

    著者は限られた資料や当時の戦場の地形、人々の体力や走力などを分析し、壬申の乱の局地戦を詳細に描き出す。...続きを読む
  • 飛田ホテル


    戦後間もない昭和の大阪。
    社会の落伍者が集うアパート「飛田ホテル」
    光の当たらない暗がりで悲しく交わる男女の情と性。
    今日日、男女の愛憎という言葉が最早昼ドラで使われるのか怪しいくらいに、陳腐な響きになってしまったように思うが、時代と共に、貞操観や死生観というのは移ろいでゆくもの。
    平安から江戸...続きを読む
  • 飛田ホテル
    なにかの書評で高評価だったので読んでみた。
    読み始めて、あまりの昭和感と薄暗さに全部読むかどうしようか悩んだのだけど…
    読んでいくうちに、なんかこ~じわじわとおもしろさがにじんできて、最後まで一気に読んでしまった。

    戦後の大阪(関西)を舞台にした男と女の短編物語集
    と、こう書くだけでなんかジメジメ...続きを読む
  • 飛田ホテル
    人生は平等な訳がない。産まれながらに不幸で死ぬまで不幸の人もいれば、産まれてから死ぬまで幸せな人もいる。小説は不幸であればあるほど面白い。
  • 天の川の太陽(上)
    壬申の乱をテーマとした小説で、大海人皇子の視点で描かれる。

    この上巻では、主人公・大海人皇子は、兄である中大兄皇子の政権下で、「武人肌で政治にはあまり興味のない皇太弟」として過ごす。
    中大兄皇子は、ブレーンである鎌足から独立して「大王」ではなく「天皇」という新しい観念の独裁者になることを望み、着々...続きを読む
  • 天の川の太陽(下)
    下巻では、大友皇子に天皇位を奪われ、出家して吉野に隠遁していた大海人皇子が綿密すぎるほどに計画し、挙兵するまでの様子を描く。宮滝に落ち延びてからも決して態度を変えず大海人に寄り添い続ける勝気な妻、鸕野讃良との絆の深さも印象深い。

    身分に隔たりのある舎人たちと心を通わせるなど、懐の大きな大海人に心を...続きを読む