辻原登のレビュー一覧

  • 東京大学で世界文学を学ぶ
    近代小説について十講にわたり解説される。小説の読み方について縦横に語られ、まさに目から鱗が落ちたとの感がある。19世紀が近代小説のピーク、ドン・キホーテが最初の近代小説、騎士道小説の批判がドン・キホーテである等の指摘に納得した。女ドン・キホーテだという「ボヴァリー夫人」を読まなくては。
  • 東京大学で世界文学を学ぶ
    面白い!
    ゴーゴリもあひびきもドン・キホーテもボヴァリー夫人も白痴も読まなきゃなぁ。
    というか、この年までにドストエフスキー作品をカラマーゾフと貧しき人びとしか読めてない情けなさ。
    読書が趣味って言ってる割には全然読めてないんだよな。時間が足りない!
  • 東京大学で世界文学を学ぶ
    小説論から文化論へ。
    面白い!
    視野の拡大と飛翔。

    ★★★

    1 ゴーゴリ。カフカ。ナボコフ。
    言語表現の根底には比喩の問題。
    古びた比喩を壊すこと。その繰り返し。
    何がリアルなのか。

    2 二葉亭四迷 日本
    NOVEL 内面を書く文章がない。
    近代になって、行動の前に考える人間の登場。
    近代的=...続きを読む
  • 許されざる者 上
    和歌山県「森宮」を舞台に、実在の人物をモデルに描かれた時代小説。

    大国ロシアを敵として無謀な戦いを挑む小国日本。
    世論の大半が開戦戦争を支持する異様なムードの中、
    海外で学んで日本に帰ってきた「ドクトル槇」は、戦争に反対する立場を主張する。

    『戦争を扇動するのは悪徳の人手、実際に戦うのは美徳の人...続きを読む
  • 闇の奥
    矮小族に魅せられた民族学者・三上隆を追ってボルネオ、チベットへと、とりつかれたように捜索する人たち。タイトルはコンラッドから着想を得たもの。冒頭から話に引きずり込まれ、あれよあれよと読まされた。
    辻原登って、なんか文学文学して時期もあったような気もするが、適度なエンタメ度が加味されて妙に読みやすかっ...続きを読む
  • 円朝芝居噺 夫婦幽霊
    物語の本筋だけでなく、あちらからもこちらからも、面白い話題が湧いていて、満腹。落語のこと、もう少しちゃんと知っていたら、もっと楽しめるのかも。
  • 許されざる者 下
    日清・日露戦争のあたりの紀州。ドクトル槇を中心にさまざまな人々が次々と言いたいことを語っては去っていく。周り灯籠みたいな印象で、小説の最後も終わった感じがしない。まちも生活も続いていく。
    最初は話に入っていけなかったが、途中からグングン世界に引きずりこまれ、ぶん回されて放り出された。一つ前に読んだ「...続きを読む
  • 村の名前
    言葉が通じない、風習がまるで異なる、日本の常識も通じない。そんな異国で自己を保つのは難しい。外国に行ったことがないから想像だけど。弟は本当に存在するのだろうか。錯乱した母親の妄想が息子に浸透し、居もしない弟との思い出を捏造したのではないか。記憶は常に改竄される。しかし結局は現実を直視できないから、有...続きを読む
  • 父、断章
    この作者の芥川賞受賞作「村の名前」を読んでから本作を読むと繋がってくるところがある。長編読み物小説の「韃靼の馬」などとは違う傾向だが、この「父 断章」には短編に凝縮された面白みがある。
  • 父、断章
    自伝的な素材を生かした短編をそろえた短編集。作家自身に限りなく近い「私」が登場し、主な舞台は郷里の新宮である。それでは作品が事実に基づいているかといえば、首を傾げねばならない。辻原登は、そんなに簡単に素の自分を語るようなタイプの作家ではない。

    近松門左衛門の芸論を弟子が書き写した中に「虚実皮膜論」...続きを読む
  • 円朝芝居噺 夫婦幽霊
    新たに園朝の速記が発見され、速記が解読されるように円朝の落語は名調子で語られていく。これって、創作なんだよね?(苦笑)と思いつつ、発見されたから、各章ごとに注釈なんかついちゃって、これまた「速記」が副テーマのように。そうして、最後の最後まで、円朝の息子と芥川龍之介まで出てきちゃって、作者の博学がスト...続きを読む
  • 円朝芝居噺 夫婦幽霊
    円朝へのなんの予備知識なしに
    読んでしまった自分に後悔。

    狐につままれたような読後感でした。
  • 抱擁
    違和感を感じた。どこでとか、なにがっていうのは具体的には説明出来ないのだけど、読んでいる途中にぞくってした。あ、強いて言うのであれば、語りの女。彼女に一種の狂気みたいのを感じた。語りの女が語れば語るほど違和感も増し、するするとページをめくる指も早くなった。「抱擁」ってありきたりの題名が手抜きだ、と思...続きを読む
  • 円朝芝居噺 夫婦幽霊
    とにかく凝った作品です。
    中盤は速記で書かれた円朝の芝居話を翻訳して紹介するという設定ですが、まずこの話(フィクション)がなかなか良く出来ていて面白い。
    その上に、途中で文体を変えたり、それを訳注の形で指摘したりと、色々な小細工が施され、楽しませます。
    もっとも最後は眩惑され過ぎて、読み解くのも面倒...続きを読む
  • 円朝芝居噺 夫婦幽霊
    著者の作品は、遊動亭円木、花はさくら木、など読んだが、この作品もまた文体が違う。
    三遊亭円朝。新聞に速記の連載が載り、二葉亭四迷や山田美妙など黎明期の作家に影響を与えた。著者の作品「黒髪」の登場人物、橘菊彦の遺品から見つかった速記の束。円朝の芝居噺「夫婦幽霊」の発見。しっかり、騙して貰おうと読み始め...続きを読む
  • 枯葉の中の青い炎
    芥川賞作家辻原登の、表題作を含む6編の短編集。
    独特の(作品の題名にもあるように)ちょっと歪んだ世界が丹念な描写によって描かれており、読み終わった後はしばらくぼーっとしてしまう。
    私としては特に最初の「ちょっと歪んだわたしのブローチ」と、最後の「枯葉の中の青い炎」が良かった。
    読書家としての作者の姿...続きを読む
  • 寂しい丘で狩りをする
    いろいろ調べていたら、この本を知ったので読んでみた。

    JTの女性社員が逆恨みで殺された実際の事件をモデルにした小説。

    実際の事件はひどい内容だった。被害に遭ったことを警察に通報し、自分が逮捕されたことを、被害者に裏切られた、と加害者が恨みを募らせて被害者は殺された。
    小説なので、実際の事件とは違...続きを読む
  • 村の名前
    異国の地でどんどん調子が狂い、判断力も失われ、新境地に達したかと思えば、最後は現実に引き戻されて終わる。夢か現実か間なのか。不思議な感覚になる作品。
  • 隠し女小春
    アカデミックに知識人達を配し都会的に男女の交際を絡めてゆきながら、変態なのか狂人なのか手探りしながら読み進めてゆく。
    で、結局はファンタジーと思わせておいてのホラー小説…?
    分からないけれど何故か心に残る一冊。
  • 隠し女小春
    出版社の知り合いが薦めてくれた本です。タウン情報や本、映画が満載なので、神保町とか好きなら、この本も好きかも、と教えてくれました。確かに街のディテール、サブカルチャーの破片があふれんばかりに埋め込まれていて、そのリアリティがラブドールが意志を持つ、という荒唐無稽な設定を現実に定着させている、と思いま...続きを読む