辻原登のレビュー一覧

  • 許されざる者 上
    舞台は1903年、紀州の新宮(本書では”森宮”と表記)の地においてアメリカ・インドで研究を積んで地元に貢献する医師として活躍しつつ、そのリベラルな政治姿勢から影響力を発揮する槙隆光という人物を主人公に、日露戦争開戦や鉄道の敷設など、様々な歴史の中で活きる人々の姿を描く長編小説。

    主人公のモデルは、...続きを読む
  • 抱擁
    最後の一文を読んで、「怖~」と思わず口から言葉が出ていた
    怖…

    終盤で不気味さの正体が判明しそうになり穏やかな空気だったのが一変…
    駒場コートに残ることにしたときには取り憑かれてしまっていたのか?
    でもそうなると危害を加えようとしたときに止めたのはなに?

    もう一度読んでみる
  • 冬の旅
    辻原登は1945年和歌山県生まれ。1990年に芥川賞を受賞しているが、良い意味でマイナーポエットとでも言うか、作品が玄人好みであるというか、これまで不勉強に全く知らない作家であった。とある本で大絶賛されていたことから本書を手に取ったのだが、「なぜこんなに素晴らしい作品を書く作家を今まで知らなったのだ...続きを読む
  • 不意撃ち
    タイトルがネタバレになってしまっているところが惜しいような、しかしピッタリの題名だ。表紙なしですべて読んで、最後にタイトル聞いたら面白かったなぁ。
    人生いろいろ、長く生きれば不意打ちたくさん。
  • 冬の旅
    いくつかの話が淡々と進みそれが多少の時間差を持ちながらつながっていく。しかしついていないのか不幸なのか、一度躓くと最後までそれが繋がっていく怖さやるせなさ。
    怖いのにそこには純粋さのようなものがある。ダメなことにも純粋さはあるんだな。
  • 東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎へ
    谷崎はどうしても好きになれないんだけど,こういう解釈を聞くと,読んでみようかと思う.
    何よりすごいと思ったのは,巻末の東大生のレポート.
  • Yの木
    初読みの著作。1990年に「村の名前」で芥川賞、1999年に「翔べ麒麟」で読売文学賞、その他の作品では谷崎潤一郎賞や川端康成文学賞や大佛次郎賞等々受賞されている。

    先日「卍どもえ」と言う本を見かけて気になっていたのが、この著者だった偶然。これは表題作+短編3作を収めた作品で、まぁ芥川賞だなと。

    ...続きを読む
  • 不意撃ち
    辻原さんの小説は全然望んでいない方に進んで行く展開のものが多く、えぇ...と唸るのが多いけどこの本もまさに不意撃ち!
    匂わせておいて結局その後の回収がなかった事柄もあったけど、それはそんなに重要でないということなのかしら。
    随所に散りばめられるモチーフがわたしも気になるネタだったのでとても楽しめた
  • 不意撃ち
    「渡鹿野」
    ラストで不意撃ちをくらった。
    デリヘルや三重県の島のこと、ある程度は知っていたつもりだが、ディテールが興味深かった。
    「仮面」
    どういうラストになるのかと思ったら不意撃ちだった。
    この小説集はこういう小説集なのだ。
    「いかなる因果にて」
    私小説風。恩師の小声が怖かった。
    「月も隈なきは」...続きを読む
  • 不意撃ち
    人は自由な意思によって行動しているかに見えて、実はあらかじめ敷かれたレールの上を歩いているにすぎず、ひとたびそこから外れたら、永久に己の場を失う恐ろしい危険に身をさらすことになってしまうのか。そんな運命の悪意に翻弄される者たちを描いた5作品を収める。実際に起こった事件をうまく挿入して、実話かと思わせ...続きを読む
  • 抱擁
    最近新聞書評に出ていたので読んでみました。
    独特の世界観。検事の前で話しているという形で物語は進みます。
    二・二六事件の頃の日本の雰囲気も出ていて、公爵のお屋敷を想像しながら読みすすめました。
    主人公の女性の不思議な体験をどう語りつくされるかがこの小説の面白みです。
    作者がインスピレーションを受けた...続きを読む
  • 東京大学で世界文学を学ぶ
    近代文学のおおよその流れが分かって面白かった。著者の言うように「19世紀の文学」にどっぷりはまってみたい気分になった。但し、作家になる気はないので全集は読む気はないが・・・

    小説や物語を分析的に読むのは、あまり好きではなく、読んでて面白ければそれでいいと思っていたが、やはり、色々お勉強してた方が、...続きを読む
  • 東京大学で世界文学を学ぶ
    久々に読み終わってすぐ再読しなければならないと思った。という読みながら思った。

    ロシア文学は十代のうちに読まなければダメと。私は既に手遅れだな。けど相容れないとばかり思っていたロシア文学で、ゴーゴリはなんか違うっぽいぞと思って実際短編を読んでみたらかなり好きな感じだった。誤解していた。

    自然描写...続きを読む
  • 恋情からくり長屋
    江戸が舞台の恋愛もの。菊人形異聞、夢からの手紙(ハード版はこのタイトルだった)、もん女とはずがたり、が特に好き。
    辻原登って何書いても嫌味なぐらいうまいなーと改めて感じました。時代物は初めて読んだかな。
  • 東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎へ
    『東大で文学を学ぶ』
    辻原登

    ……小説の中から何かを教えてもらうとか、教訓を得ようとか、そういうことをしてもほとんど意味がありません。……小説は、われわれの見る夢である。たとえそれが現実と似ていても夢である。……ですから、小説というものは頭で読んでもわからない。背筋で読む。(p78)

     小説に意...続きを読む
  • 東京大学で世界文学を学ぶ
    『東京大学で世界文学を学ぶ』
    辻原登

     小説家は、フィクションをもって隠喩を解体し、また別の隠喩をつくっていく。……隠喩を解体するのは、隠喩でもってるすしかない。(p26)

     ……作家は何かを現実に訴えかけるときもやっぱり隠喩に頼ってしまう。それは別に作家でなくてもそうですが、ひょっとしたらここ...続きを読む
  • 闇の奥
    おすすめ!これは二回読まなきゃいけないやつ。big issueの書評にあって気になっててbookoffで見つけて一気に読んだ!もちろん買って笑。

    小人族を探して行方不明になったミカミ博士と、彼を捜す人たちの話し。

    「空想があってこそ現実が生まれて、またその現実によって空想が大きくなる」っていうの...続きを読む
  • 闇の奥
    円朝~でもうまいなあとうなったけど今作も思わぬところでゾクっとさせられる。
    まず、入りは思いっきり怪談調。
    熊野の奥に「小人の村」があるから行こうと意気込んで男三人が山へ入る。
    そこで経験したことについては誰も語らない。

    そして主人公が父親の家の遺品を整理しに行き、偶然見つけた手紙に誘われるように...続きを読む
  • 抱擁
    すごい。こんなに短く簡単に美しく「ねじの回転」日本版が!

    「ねじの回転」、新潮版はちょうど昨年の今頃読んでて、すごく好きなタイプの小説だったから、岩波のデイジーミラーも入っているほうも買ってある。「抱擁」読んだし、近々読もうかな。

    「ねじの回転」のわからなさ、見通しのわるさがシンプルに表されてい...続きを読む
  • 抱擁
    「ねじの回転」「レベッカ」を連想させる。

    ん?抱擁?なんで抱擁?…ああ、そうね、そういうことね。
    怖さよりも、かすかに残る抱擁の切なさがキモなのでは。