黒井千次のレビュー一覧

  • P+D BOOKS 黄金の樹
    主人公は大学生で、家庭教師先の人妻に心惹かれる(というかほとんど欲情という感じ)。それは、高校時代におそらく大恋愛の結果別れてしまった恋人への喪失感ゆえの反動と言えなくもない。また、時勢は日本の再軍備に反対する学生運動が活発な頃で、主人公は学生運動に身を置かねば「ならない」と思っているのだが、どうし...続きを読む
  • 老いの味わい
     私は、来年は60代では一番年寄りになりますが、70になれば70代では一番わかくなります。そんな風に考えると面白いかもしれません(^-^) サミュエル・ウルマンの「青春とは」の詩はとてもいい詩だと思いますが、老いを感じると実際はなかなか難しいものがありますw。著者は「階段の一歩一歩が、体力や健康を確...続きを読む
  • P+D BOOKS 春の道標
    三十数年ぶりに読む。こんな内容だったっけ。断片的に記憶していた場面は、どうやら違う小説だったようだ。
  • 群棲
    いつかどこかで闇がぱっかり口を開け、襲いかかってくるんじゃないかと思ったけど、そんなことはなかった。
    しかし、じっと何かに見られているようで居心地が悪い。つい行ったり来たりを繰り返し、たどり着いたところにもまだ道は長く続いていて、歩かなければならない。
  • 時間
    厳密に言えば過去に出版された、角川文庫版を読んだため、収録作が異なっているかもしれない。
    「二つの夜」「聖産業週間」「穴と空」「時間」「騎士グーダス」「空砲に弾を」(収録順)計6作。
    二つの夜は、会社員の主人公が上司に”ブツ”を探すように命じられるが、そのままブツを探せと言われているため、実態が分か...続きを読む
  • 日の砦
    大学入試の模試で、現国の問題文になっていたことで知った作家。その作品も、確か本書と同じ家族が主人公だった。
    定年後の夫婦と、独り立ちした息子と、社会人の娘という家族起こる、心のすれ違い。ごくごく普通の日常で、今日の自分にもあったような出来事ばかりなのに、丁寧に気持ちを描写していくことで、毎日がこんな...続きを読む
  • 老いのかたち
    [ 内容 ]
    昭和一桁生まれの作家が、自らの日常を通して“現代の老いの姿”を探る。
    同級生の葬儀を同窓会になぞらえ、男女の老い方の違いに思いを馳せ、「オジイチャン」と呼ばれて動揺、平均余命の数字が気にかかり―。
    冷静な観察眼と深い内省から紡がれる、珠玉のエッセイ五六篇を収録。

    [ 目次 ]
    1 病...続きを読む
  • 星からの1通話
    75編のショート・ショート作品を収録している本です。

    日常生活のなかで、時間軸を飛び越えて奇妙な体験に陥るといった筋の話がめだつように感じました。現代の作家でいえば、乙一のライト・テイストのホラー小説のような雰囲気があって、たのしんで読むことができました。もっとも、作品数が多いので、同工異曲に思え...続きを読む
  • 老いるということ
    黒井千次(1932年~)氏は、東大経済学部卒、富士重工業に入社し、会社員生活のかたわら執筆活動を行い、1968年に芥川賞候補、1970年に芸術選奨新人賞受賞。その後、富士重工業を辞めて作家活動に専念するようになり、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞等を受賞。日本文芸家協会理事長、日本芸術院長も務めた。文化功労...続きを読む
  • P+D BOOKS 春の道標
    初読み作家さん。思春期の青年の恋愛を描いた作品。読んでいて自分にも覚えがあるような、十代特有の熱に浮かされるような心の揺れ動きが繊細に描写されていて、懐かしいような苦いような気持ちになりました。恋に恋しているような状態や好きな人のささいな言動に一喜一憂する不安定な心は誰しも覚えがあるのでは。人はこう...続きを読む
  • 生きるということ
    就職は学校への入学が一つ目の転機とすると二つ目の転機で、わからないからこそ歩むことが大事だとというのはたしかになーと思った。わからないことがたくさんあるけど、コツコツ頑張ろう。
  • 老いのゆくえ
    実は他の本と間違えて購入してしまって、読むつもりのなかった本だったのだが、自分ももう夫の定年などを意識しなくてはならない年齢になっているので、これから自分の老いをどう受け止めていったらよいのかを考えるうえで、参考になった。
    ただ、それでも今はまだあまり実感はないのかもしれない。数年後読み返したら、も...続きを読む
  • 流砂
    父親夫婦と息子夫婦、同じ敷地内の二世帯住宅。元検事の90代の父親と70過ぎの息子の物語。途中、検事の娘と検事の息子の出会いが。なんとも不思議な雰囲気を醸し出している黒井千次さんの最近の作品です。「流砂」、2018.10発行。
  • 老いるということ
     老いることの意味、肉体的に、精神的にあると思いますが、86歳で没した幸田文さんが70歳の時のエッセイに次のようなくだりがあります。「自らの限界を認め、今迄より一歩も二歩もさがったところでものを考えようとしなければならない」と。彼女は「きりりと絞りあげた意志」と表現してますが、心に響いた一節でした。...続きを読む
  • たまらん坂 武蔵野短篇集
    たまらん坂、おたかの道、せんげん山ー。武蔵野で暮らしていれば耳にすることも多いスポットをいくつかピックアップして短編集としてまとめた1冊。はじめて聞いた場所はひとつもないのに、自分のイメージとは違った語り口や物語が新鮮でサクサク読めた1冊でした。同じ地域に住んでいた人と初めて一緒になったお酒の席で共...続きを読む
  • たまらん坂 武蔵野短篇集
    1983-1990年くらいを舞台にしており、主人公が定年前なので、歳をとったら面白いかもしれない。
    中央線の武蔵小金井から国立に住んでいて、地元のことを調べるという設定は、引っ越してきた人には共感できそう。
  • 石の話 黒井千次自選短篇集
    自選短編集ということで、初期作から現在に至るまでの優れた或いは作者的に上手く書けたのだろう作品が、名を連ねている。いずれもある程度同じ枚数の作品を、意識的に年代別に選んだとあとがきにあり、作品の背景についてあまり多くは語られていなかったが、とにかく、初期は社会人時代と重なっていたこともあり、会社と個...続きを読む
  • 老いの味わい
    初出は読売新聞夕刊の月一回の連載「時のかくれん坊」.第一弾は「老いのかたち」こちらは未読.本書は第二弾.

    私自身も私の両親もどんどん年を取っていく.あたり前だが,そのあたり前のことがもたらす変化というのが,悲しい思いをともなう物が多いので,これから先,老いるというのはどういうことかを予習しようと,...続きを読む
  • 老いるということ
    老いを良く生きるための不可欠の要素は「諸所の徳を身につけ実践する」ことなのだ 青春とはせいぜい20年ほども生きれば出会えるものですが、老年はその三倍も四倍も生きた後でないと手にはいりません 「隠居」という言葉が死語と化した 若い頃は、足し算で捉えていた年齢が、死から逆算した引き算として迫ってくる 他...続きを読む
  • 漂う 古い土地 新しい場所
    面白くはない。だけど、何気無い景色の表現力はやはりベテランの味がある。誰もが出来そうで、出来ないと思う。