須賀敦子のレビュー一覧

  • 遠い朝の本たち
    何よりもまず人間。

    詩と自然にひたりたかった私が、なによりもまず人間,というフランスやイタリアのことばに,さらにこれらの国々の文学にのめり込んで、はては散文を書くことにのめりこんでいったのが、ふしぎな気がする。p206
    と、かいておられる。須賀敦子さんの、子ども時代学生時代を振り返る本書を貫くの...続きを読む
  • 霧のむこうに住みたい
    わりと読む本が偏っている私がいつ、どうやって須賀敦子という作家を知ったのか記憶にないけれど、なんだかとても惹かれて、全集もほぼ買い集めた。何度も読んだわけではないので、これも記憶があやふやだけれど、確か、だんだんと宗教色が強くなってきて、というと聞こえが良くないけれど、信仰という精神、信条にかかる記...続きを読む
  • ヴェネツィアの宿
    家族、そしてさまざまな人たちとの出会いが著者の人生に大きく影響を与えたのだなあと感慨深かった。戦後間もない時代、その時代に留学を実行したことや結婚を目標としない女性の生き方を考えていたことに感動する。女性として憧れる生き方だ。また、文章の表現が丁寧で美しく、その土地の空の色や風、空気感、草花の色など...続きを読む
  • ヴェネツィアの宿
    洗礼者ヨハネは、苦行しながらキリストが世に出るのを待ちわびたというが、キリストのようにはではでしく弟子に囲まれるのでもなく、これといった逸話もないまま、ヘロデ王の逆鱗にふれて処刑され、孤独な生涯を終える。ヨハネは、生きることの成果ではなくて、そのプロセスだけに熱を燃やした人間という気がしないでもない...続きを読む
  • 島とクジラと女をめぐる断片
    ヨーロッパの最西端と言われるポルトガル領の群島、アソーレス諸島。その近海を泳ぐクジラと島の捕鯨手たちの物語を、虚構混じりの断片から浮かび上がらせていく掌篇集。


    再読。何度読んでも美しい本、同じフォーマットを使って自分の好きなものを語りたいと憧れる本だ。史実に即した事柄を語るときにもタブッキは夢を...続きを読む
  • 島とクジラと女をめぐる断片
    虚構と隠喩
    仕掛けられた世界を始終彷徨うも
    掴めそうで掴めない島・クジラ・女の話

    詩的情緒湛える散文は
    時間と空間を歪める印象を残す

    150頁に満たない物語
    思考するほど厚みが増すような
    タブッキ…煩雑な出会い
  • ヴェネツィアの宿
     イタリア生活を書いた内田洋子さんのエッセイ集を読んだので、今度は須賀敦子さんのイタリア地名の付いたエッセイ集を読んでみた。
     お二人とも素晴らしい文章力をお持ちだが、視点は全く逆である。
     内田さんはご自分を透明化させて周りの人たちを小説のように描写する。  しかし、須賀さんは何処までいっても須賀...続きを読む
  • 島とクジラと女をめぐる断片
    まえがきからあとがきに至るまで、すべてのテキストが作品の要素となっている詩的な作品集でした。

    まず自分はアソーレス諸島がどこにあるのかも分からず、どこか空想の産物のような気がしつつページをめくっていました。世界地図で確認したら、ポルトガルから大西洋へだいぶ行った先にちゃんとあるではないですか。この...続きを読む
  • 島とクジラと女をめぐる断片
    インド夜想曲を読んだあとに読んだ。インド夜想曲のほうが、主人公の目的がある分、全体としての話ははっきりしている。ただ島とクジラと女をめぐる断片のほうが、一つ一つの挿話の質は高かったように思える。
    好みの問題ではあるが、私はこちらのほうが面白かった。
  • ヴェネツィアの宿
    初めて読む須賀敦子は、引き込まれるように読み終えた。
    本書の解説を関川夏央が書いているが、その解説と、Wikipediaで調べた須賀敦子の生涯は、おおよそ下記のようであった。

    ■1929年生まれ。
    ■20代の終わりからイタリア在住。1961年にイタリア人と結婚するも、1967年に夫が急逝。
    ■19...続きを読む
  • 塩一トンの読書
    須賀敦子さんの書評集。彼女の紡ぐ言葉はどんな時でも星のように煌めいて美しく、同時にはっと胸を衝く。「塩一トンの読書」と題された短いエッセイの中で語られる彼女の本を読むことへの情熱やどんなに書物を愛しているかがよく伝わってくる。「ひとりの人を理解するまでには、すくなくも、一トンの塩をいっしょに舐めなけ...続きを読む
  • コルシア書店の仲間たち
    淡々とつづられている文章を読み進むと、何となく泣けてくるような気がする。
    文章そのものに鎮静効果があるように感じるのは、少し昔の出来事をあとから整理して書いているからなのかな、と思ったりもする。
    コルシア書店、というのは日本によくある町の本屋とは異なり、哲学者や思想家のような人々が集まって議論をする...続きを読む
  • コルシア書店の仲間たち
    かつてミラノの小さな書店に集った仲間たち。
    その一人ひとりが、須賀さんの静かで温かな眼差しを通して細やかに描かれている。
    須賀さんは彼らをいつも真っ直ぐに見つめ、深い愛情を持って接していたのだろうと思う。

    扉のウンベルト・サバの詩がすごく好き。
    生きることに疲れてしまった時、そっと寄り添ってくれそ...続きを読む
  • 霧のむこうに住みたい
    少女のような心の瑞々しさと骨太な知性。
    美しく編まれた文章に心が洗われる。

    合理性は知性のほんの一面でしかない、ということを知っている人の豊かさ。

    折に触れて読みたくなる一冊。
  • コルシア書店の仲間たち
    本好きが集うオフ会で須賀敦子の『ミラノ 霧の風景』をいただいたのが昨年の春。以来、この著者の本は「村上春樹翻訳ライブラリー」シリーズと並んで、ワタシの積読棚に常に鎮座することになった。
    心が乾いて荒れた時、心が乱れて雑になった時、この著者のエッセイを手にとって、治癒してもらう。美しく繊細でしなやかな...続きを読む
  • 島とクジラと女をめぐる断片
    役に立たない原典探しでたどり着いた本。読んで良かった……。会話文と地の文がひと続きになっているだけでなく虚構と現実もひと続きになっていて、詩情におおいに溢れており、女をめぐる断片とクジラの断片には感嘆させられてしまった。

    女は名前以外全て嘘をついていたということは、下男だと言い放ったのも嘘だったの...続きを読む
  • ユルスナールの靴
    イタリア文学者でエッセイストの須賀敦子さんの『ユルスナールの靴』を読む。
    マルグリット・ユルスナールはフランスの女流作家で、出口治明さんが激賞された『ハドリアヌス帝の回想』の作者。
    生まれてすぐ母を亡くし、父が亡くなった20代半ば以降、パリ、ローマ、ヴェネツィア、アテネと旅に過ごした人です。第二次大...続きを読む
  • コルシア書店の仲間たち
    どこか距離を置いた視点で描かれる友人たちの個性。最初こそイタリア語の混じった表現に読みにくさを感じたものの、第2章ともなればぐいぐい引き込まれて行く。それは、東京へ帰った著者が、まるで夢か現実か区別のつかない過去に、友人たちという輪郭を描くことによって亡き夫の影を求めて暗中模索あいているかのよう。そ...続きを読む
  • コルシア書店の仲間たち
    須賀敦子さんが『ミラノ 霧の風景』で女流文学賞、講談社エッセイ賞を受賞したのが1991年と知り「なるほど、あの頃か‥」と強烈に思い出した。平成3年。昭和から平成へ変わってまもない頃。
    世界では湾岸戦争が起こり日本では雲仙・普賢岳の火砕流で多くの方々が亡くなった年。(個人的事情で忘れられない年でもある...続きを読む
  • ヴェネツィアの宿
    イタリア語翻訳者の須賀敦子さんのエッセイ集。彼女が翻訳した本は読んだことがあったが、エッセイを読むのは初めて。
    どれも心にしみて、とても良かった。でも妙に共感できたのは、私がヨーロッパに住んで似た人生を送っているからだろう。それにしても、彼女の感性はすごい。本書は、彼女がフランスやイタリアへの留学時...続きを読む