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Posted by ブクログ
「まるで、この世界の鏡像だ」と思った。
退廃的な世界で、どこか神話的な雰囲気もあり、哲学的にも考えさせる。ずっと疑心暗鬼だし、合理的な解決はしない世界だし、
それなのに、どうしても美しいところが。
あまり叙情的ではない文章なのに、
その冷たさの中に、温かさも切なさも感じられて不思議な体験だった。
「8人の脱走アンドロイドとそれを捕まえる警官を書いたSFだよ」と言ってしまえばそれで終わりだけど、
このアクション風のプロットを基に「私たちの世界とは」「人間とは」という現実的なテーマに取り組んでいる気がした。
また、SFと言うだけあって突飛な設定なのに、読者が置いていかれないような共感性もあり……。
現実世界と近い距離にこのSF世界が寄り添ってくれる気がして、後味がたまらない。
「なにもかも真実さ。これまでにあらゆる人間の考えたなにもかもが真実なんだ。」という台詞は、これから抱きしめて生きたい。
(明晰夢で長年悩んでいる私には、あまりにも刺さって泣いてしまった。こういう言葉が欲しかった。)
とにかく、初めて読むSFがこの小説で良かった。
心に残るこの読書体験は、これから私の中で発酵していくと思う。
パンみたいに膨らんできたらもう1回読む。
Posted by ブクログ
世界大戦によって放射能が降り注ぎ荒廃した地球。国連は火星に植民地計画を実施。適格者(一般人)と特殊者(放射能によって遺伝子が欠損した者)を区別し、適格者には人型ロボット(人と区別がつかない)を配布し移住を容易なものにした。地球の生命はほとんど絶滅し、残留するのが困難なものにした。その中で8台のアンドロイドが地球に逃亡し、人類に紛れて生活している。主人公デッガードは賞金稼ぎである。性格適正テストでアンドロイドを識別し処分する物語。
この世界では生きた動物が法外な価格で取引されており、動物を飼うことはブランドであり幸せなことである。そのため手軽に購入できる本物そっくりの電気動物を飼うくらい人類が生命に飢えていることを如実に表している。デッガードもその一人だが、ある時アンドロイドを処理する内にアンドロイドに感情移入し、初めて行動に迷いが生じる。人とアンドロイド、動物と電気動物。幸せに感じるならどっちでも良くね、と思ってしまった。
Posted by ブクログ
最初に情調オルガンや共感ボックスが出てきたときは何をするものなのか分からず面を食らった。共感ボックスは今で言うVRの発展版のようなイメージで読んでいた。
特に印象的だったのは、リックが人間に感じるべき感情とアンドロイドに感じるべき感情が逆転し、それに気づくことで混乱していく様子だった。アンドロイドは生き物として扱うべきなのかという疑問を投げかけられている場面であり、リックもそれに大いに悩むことになる。
この作品を読んで、人間とアンドロイドを分けるものは何なのか、そして、アンドロイドは「生きている」と言えるのか、ということを考えるきっかけになった。AIが急速発展してきている現代では、人間と見分けがつかないほど高度なAIやアンドロイドが出てくるのもそう遠い未来ではないようにも思える。そのとき、人間とアンドロイドを分ける基準をどこに置くのかという問題は、作中の世界だけのものではなくなるのではないかと思った。
一方で、アンドロイドがなぜ火星から逃げてきたのかという部分があまり深堀りしてされていないように思った。そのため、アンドロイドが命を狙われ、殺されることに対して同情のを感じることができなかった。むしろ、アンドロイドを「人間ではない存在」として扱うことに疑問を持ちながらも、完全には彼らに共感できないという点が、この作品の面白さなのではないかと思う。
1970年代に書かれたにも関わらず、AIやVRのような技術、人間と人工的な存在との境界といった現代にも通じるテーマが描かれていて、非常によくできたSF作品だった。
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