本書は、所得格差の拡大により増加の一途をたどる低所得層をターゲットにした「貧困ビジネス」の問題を指摘し、その打開のための方策を提示している。
貧困層を取り巻く環境は、90年代後半から2000年代前半の「就職氷河期」以降悪かったわけだが、2008年9月に起きたリーマン・ショックをきっかけにして、より
...続きを読む一層深刻化することになる。企業の人員整理、非正社員雇用を増やすなど貧困層はさらに増加している。
そんな貧困層をターゲットにしたのが「貧困ビジネス」である。「貧困ビジネス」にも光と影の部分があるそうだ。バングラデシュのグラミン銀行やマイクロ・クレジットのビジネスのように貧困層からの脱却を手助けするビジネスが光りの部分とすれば、「ゼロゼロ物件」や「リセット屋」、臓器売買や人身売買、二重派遣や「名ばかり管理職」、セックス・ビジネスなど貧困層の弱者を食い物にするのが影の部分だろう。
この「貧困ビジネス」の影の部分に対し、行政は規制強化を行ったりするが、逆に貧困層の生活をさらに追い詰めることになる場合もあるらしい。
筆者は規制強化を行うだけでなく、貧困層の実態を踏まえた柔軟な政策をとることが必要であると指摘した上で、根本的に非正社員を減らし正社員雇用を増やす、さらに賃金の引き上げ等、低所得層を減らすということを行わなければならないと警鐘を鳴らす。
本書の内容について、多くの経済学者が指摘しているように、貧困層を減らし格差是正を行うことが必要な現状を、「貧困ビジネス」という視点から指摘されたことは大変意義のあるように思う。「アベノミクス」でさらなる格差が生まれようとしている今日こそ、本書を読んでもらいたい。