日本人で初めて物理学でノーベル賞を受賞した、湯川秀樹氏自身による回顧録。40代の頃書いたようだ。
少年の頃のことから、ネクラで引っ込み思案な中学時代、そして物理学と出会った高校時代、海外の物理学者の研究に刺激されて物理学にのめり込んでいく京都大学時代。
湯川氏は大学を卒業するまで一貫して京都に居住し
...続きを読むていた。兄弟も多く、彼は7人きょうだいの5番目に生まれた。父親も兄たちも分野は違うがそれぞれ学者で、当然のように学問の道を志したようだ。そして物理学に出会ってから、いい教授たちに導かれ、次第に研究分野で第一人者になっていく。
物理学以外のことに関してはとても謙虚で、今でいうオタク的な青年だったようだ。でも文章からにじみ出る人柄や教養に好感が持てた。先日レビューを書いた岡潔教授にも京都大学で数学を習ったそうだ。岡教授の方が変わった人という印象だ。湯川氏は天才だが、ごく常識的な人という感じも十分にある。彼の研究を一般人になるべく平易に説明しようという努力もうかがえる(それでも難しくて理解できないが)。
昭和一けた年時代の自然豊かな京都の風景に、京都に行きたくなった。とても興味深い本で、読んでよかった。