『囀る鳥は羽ばたかない』映画化決定! 極道の男たちの妖しい恋模様(ネタバレ注意)
2020年2月にBLアニメレーベル「BLUE LYNX」にてアニメ映画化が決定した『囀る鳥は羽ばたかない』。『どうしても触れたくない』『NightS』などで知られるヨネダコウ先生の代表作として知られ、極道の世界を舞台に男同士の切ない感情を繊細に描いた作品です。
映画が待ちきれないぶくまる編集部としては、映画公開前にぜひこの作品について熱く語っておきたい…!ということで、腐女子歴20ウン年の不肖書店員が張り切って参ります!
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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事にはネタバレを含みます。
目次
『囀る鳥は羽ばたかない』作品紹介
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『囀る鳥は羽ばたかない』 1~6巻 ヨネダコウ / 大洋図書
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『囀る鳥は羽ばたかない』あらすじ
真誠会若頭にして真誠興業の社長である矢代。極道としての嗅覚と才能には恵まれているが、とにかくドMで変態、淫乱、抱かれた男は数知れず。そんな矢代を純粋に慕う付き人兼用心棒の百目鬼(どうめき)。部下には手を出さないと決めていた矢代だが、百目鬼に抗いがたい魅力を感じて誘う。しかし、百目鬼には矢代を抱けない理由があった…真誠会とその親団体である道心会が絡んだお家騒動、さらに敵対する三和会との利権争いが激しくなる中、矢代と百目鬼、それぞれの過去が少しずつ明かされていく。
『囀る鳥は羽ばたかない』登場人物
矢代(やしろ)
©ヨネダコウ/大洋図書
36歳。
真誠会若頭。真誠会と同じ道心会傘下の松原組に出入りし、組員の性的なおもちゃになっていたところを、当時の真誠会の組長であった三角に拾われる。高校の同級生かつ唯一の友人である影山にひそかに思いを寄せていたが、真っすぐに自分を慕い、何を言われてもついてくる百目鬼に次第に心が動き始め…。洞察力に優れ、実業家としても有能。性的にだらしなく振る舞っているが、母に見捨てられ義父に犯された過去が大きく関わっている。言動は飄々としており、軽口を叩くことも多い。出世欲は乏しいが、ある時何者かに狙撃され、真誠会の跡目争いに巻き込まれていくことになる。
アニメ映画では新垣樽助さんが演じます。
百目鬼 力(どうめき ちから)
©ヨネダコウ/大洋図書
25歳。
元警官だが、血のつながらない妹に性的ないたずらをしていた父に暴行を加え、服役していた。出所後、矢代の下で用心棒的に働き始める。基本、無口で無表情で、からかい半分の矢代の無茶ぶりにも淡々と応える。事件にまつわる忌まわしい記憶がもとで性的不能だったが、矢代に強く惹かれ、不器用なりに一途に慕い守ろうとする。しかし、矢代を守り切れず狙撃されてしまい、責任を感じてある行動に…。
アニメ映画では羽多野渉さんが演じます。
影山莞爾(かげやま かんじ)
©ヨネダコウ/大洋図書
36歳。
矢代の高校の同級生で町医者(内科医)。腐れ縁で矢代がらみの患者の手当てを行う。火傷フェチ。矢代の縁で知り合った久我といい仲に。1巻収録の「漂えど沈まず、されど鳴きもせず」では、高校時代が描かれている。
三角(みすみ)
©ヨネダコウ/大洋図書
62歳。
道心会の執行部・若頭で次期会長と目される。真誠会の組長時代、矢代を自分の組に呼び寄せ、極道の世界に引き込んだ。当初は矢代を愛人にしていたが、現在は普通の舎弟関係。溺愛していた腹心の部下を喪った過去がある。
平田(ひらた)
©ヨネダコウ/大洋図書
48歳。
真誠会の組長で矢代とは兄弟分にあたるが、不仲。三角を非常に尊敬しており、権力欲が強い。矢代に複雑な感情を抱く竜崎に目をつける。
竜崎(りゅうざき)
©ヨネダコウ/大洋図書
38歳。
松原組の組長。若き日の矢代をおもちゃにしていた。矢代の台頭を苦々しく思いつつ、愛着や情を感じさせる言動もちらほら伺える。
七原(ななはら)
©ヨネダコウ/大洋図書
30歳。
矢代の舎弟で若頭補佐。ノンケだが矢代の情事はつい見てしまう。後輩としてはマイペースな百目鬼に振り回されがち。喧嘩っ早いが元ボクサーなので腕っぷしは強い。
杉本(すぎもと)
©ヨネダコウ/大洋図書
26歳。
矢代の舎弟で百目鬼の兄貴分。ノンケ。矢代の尻の軽さをやや苦々しく思っている。
天羽(あもう)
©ヨネダコウ/大洋図書
44歳。
三角の秘書。淡々と三角に仕えるが、実は浅からぬ縁があって…。
久我(くが)
©ヨネダコウ/大洋図書
矢代が気に入っていた血の気の多いチンピラ。少年院にいた。影山のところに住み着くうちに付き合うように。
百目鬼と矢代の名シーン!
軽口ばかり叩いて読者にすら本心のすべてを見せてくれない矢代と、口下手なのに、いやだからこそ矢代への恋心は直球で言葉にする百目鬼。ふたりの言葉と心の駆け引きを淡々と、時に激しく魅せる素晴らしいメリハリがこの作品の魅力のひとつです。
腐女子が集えば腐女子の数だけ名場面が挙げられそうですが、断腸の思いで選びたいと思います…!
「頭は俺が今まで生きてきた中で会ったことも見たこともないような人ですから」
©ヨネダコウ/大洋図書
部下の前でも平気で痴態を晒す矢代。感情の起伏に乏しい新入りの百目鬼をからかうように扇情的な姿を見せ、反応しないという彼のモノを咥えすらします。しかし、百目鬼はむしろ矢代に吸い寄せられるようにこんな言葉を漏らします。
「よく見ろよ そんな綺麗じゃねぇから」「…綺麗です」「バカ」
©ヨネダコウ/大洋図書
極道となったからには背中など身体のどこかに刺青を入れるのがこの世界の常。しかし矢代の背中には何も彫られていない。極道でありながらどこかふわふわとした矢代の生き方を象徴するような彼の背中をまじまじと見つめ、百目鬼はまたまたド直球に思いを言葉にします。我々は何を…何を見せられているのか…という気持ちになってしまいます。しかしこのシーンでおののいている場合ではないことを、私たちは巻数が進むにつれて思い知らされることになるのです…!!
百目鬼の乙女なモノローグが炸裂!!
©ヨネダコウ/大洋図書
影山と久我の幸せそうな姿を見て、影山にひそかに思いを寄せていた矢代の気持ちを思う百目鬼。影山と矢代が積み重ねてきた年月、影山のふがいなさと優しさを感じ取り、改めて自分の無力さを思い知ってひとり悶々とする百目鬼を、矢代はいつものようにからかいます。そんな矢代の背中を見つめながらこんな乙女なモノローグをかましてしまうのです。百目鬼ったら可愛すぎでは…!?
深夜のピンク映画館でデート!?
©ヨネダコウ/大洋図書
矢代の会社が建てたピンク映画館で映画を観るシーン。気晴らし程度に「シャクらして」と持ちかける矢代に何かを言いよどむ百目鬼の表情が……かわいそ可愛い…!! そしてその後のふたりそれぞれの行動も可愛くて最高なのです。その後のこのシーン、矢代が不本意ながら買ってきたのがレモンスカッシュだというのがまた大変心憎い演出です。な、なんて甘酸っぱいんだ…!
守り切れなかった悔いを献身に変えて…
©ヨネダコウ/大洋図書
巻数が進むに従い、矢代の身辺が危険に晒されることが増え、登場人物のケガが増えます。狙撃されて腕を負傷した矢代のシャツを、兄貴分の七原にボコられた百目鬼が着せてあげるシーン、不覚にも萌えてしまう…!
糸を引く分泌物がこんなにエロいとは…!
©ヨネダコウ/大洋図書
『囀る鳥は羽ばたかない』にはセクシーなシーンも多く描かれますが、エロいのに固唾を飲んで見守ってしまう緊張感があります。このシーンも、はっきり描かれていないものの百目鬼の明らかな落胆がひしひしと伝わり、そこからの真っ黒な背景に糸を引いた百目鬼の指の描写が美しくもいやらしい。ヨネダ先生のネームセンスに全力でひれ伏すしかありません。
暗い衝動と独占欲に蝕まれていく百目鬼!
©ヨネダコウ/大洋図書
次第に矢代への独占欲を募らせていく百目鬼。矢代を痛めつけるように抱いた悪徳刑事(警官時代の百目鬼とも因縁あり)をボコボコにするなど、自らの奥底に眠る暴力性を持て余すようになります。牙を隠すように静かに矢代の世話をしている百目鬼の姿は本当に不憫でたまりません。
BLだけど人間ドラマ! アクションも銃撃戦も…!?
この作品には人の死が多く登場します。しかし、ひとりひとりの死に悲しみ、打ちひしがれる人間がいることが描かれており、人間ドラマとしての厚みを感じさせます。
極道ものならではのシーンももちろん登場。
©ヨネダコウ/大洋図書
淡々と銃をぶっぱなす矢代はめちゃくちゃエロいですね。百目鬼が矢代の身体を抱いている姿を斜め上から描いた構図が美味しすぎます。
©ヨネダコウ/大洋図書
「折るぞ」って…と思わず絶句するシーン。ここに至るまでの百目鬼の機動力とパワーを併せ持ったアクションシーンは必見ですので、ぜひチェックしてみてください。別のシーンですが、百目鬼のことを「ぜってー敵にまわしたくねえな」と評する杉本、わかりみが過ぎます。
©ヨネダコウ/大洋図書
こちらは矢代の微笑みが怖すぎるシーン。矢代も敵にまわしたら相当ヤバいタイプであることは読んでいくと痛いほどわかります…!
矢代の髪が好きな百目鬼に震える!
感情を顔に出しはしないものの、矢代のことになると正直になりすぎてしまう百目鬼。最初は「忠犬のようで可愛いな!」「年下ワンコ攻美味しい!」とムフフと笑っていられるのですが、ふたりの関係がよりズブズブかつ性的になっていくにしたがって、リミッターが外れる百目鬼はとんでもなく恐ろしい男なのだ、ということが分かってきます。
百目鬼の恐ろしさと純粋さが両方凝縮されたような設定が、「矢代の髪を触るのが好きな百目鬼」です。
初めて登場するのはこのシーン。最初は「えっ何この子可愛い…」とトゥンク…となって終わりだと思います。正直、書店員もそうでした。
©ヨネダコウ/大洋図書
それがあまり間を置かずに何回か出てくるのです。
©ヨネダコウ/大洋図書
©ヨネダコウ/大洋図書
©ヨネダコウ/大洋図書
しかしまだかろうじて「あんたも好きねえ~」とニヤニヤできました。
©ヨネダコウ/大洋図書
ま、まだ言うか…!しかも寝てる間に触るとか隅に置けないな…いやそういう問題か?となってしまいますね。
時々暴れまわる百目鬼の乙女なボキャブラリーが矢代に直撃して新手の言葉責めのようになっているとんでもないシーンです。
©ヨネダコウ/大洋図書
百目鬼が矢代の髪を触っている場面を見つけると嬉しくなってしまう腐女子の性…。
「チーム矢代」の尊み!
矢代の舎弟は3人。百目鬼、七原、杉本です。
七原と杉本はどうやらノンケなのですが、ふたりのちょっとおバカな賑やかさと程よい世話好きぶりが物語の箸休めになっていておいしいのです。
七原がある決意を秘めたまま、百目鬼と矢代について語り合うシーンはコミカルさと切実さのさじ加減が絶妙で、書店員の個人的イチオシです。
©ヨネダコウ/大洋図書
百目鬼のこの発言の後に七原が
「そういや俺もなんだかんだいってもう10年あの人の下についてるな」
「頭のことよろしく頼むわ」
と言って去っていくという、この…この流れが最高にしびれます。
七原はノンケにもかかわらず、展開が進むにつれて矢代の色っぽさに若干ほだされていくので、そのあたりにもぜひ注目してみてください。
©ヨネダコウ/大洋図書
杉本は七原より堅物で百目鬼と年齢も近いせいか、かなり生真面目に百目鬼に意見します。
©ヨネダコウ/大洋図書
矢代の身も甲斐甲斐しく案じるのですが、あまり相手にされていなくてちょっと不憫です。
『囀る鳥は羽ばたかない』の感想
『囀る鳥は羽ばたかない』1巻の感想
「かっこいいです」
人間を描くのがうまいと思いました。絵も好きです。攻めより受けが弱いというのを覆してくれた作品です。先が気になるのが嫌なんで完結したものしか見たくなかったんですけどこれならいつまでも完結しないで続いてほしいと思います。先が気になるけど、何回も読み返して我慢してます。
ヤクザライターの方が紹介していたので拝読。
一般的価値観でいくと、みんな不幸な過去や背負う人々がメイン登場人物。
世の中を冷たく突き放した視線ややりきれない胸のうちといった、冷めた空気が全体を覆っていて、とても好きな作品だ。ギリギリ生の縁に立ってる男たちの、冷たくて暗くて熱い祈りに似た感情と関係性。
親や家族を持たず、ただ自分と自分の信じた相手だけを見つめるという個と個の関係が好きだからか、これは好きな物語。物語全体を覆うヒリヒリしてて尖ったナイフみたいで、今にも雨が降りそうな曇天のような重苦しいこの空気感、たまらない。
続きも読みます。(Posted by ブクログ)
まず、八代の言葉が妹の救いになっただろうし、なって欲しいとおもう。もう、(ビッチって俺のためにある言葉だろう?)とか言ってしまいそうな八代がいい。孤独も暗い過去のヤクザしかなれなかった虚しさもひっくるめて嫌いじゃないと言っちゃう感じとか。その軽い絶望がすごく好みでした。百目鬼の切ないばかりの執着とかどうしてくれよう。あと、冒頭の二人をもっとください。(Posted by ブクログ)
男の色気が上手く出ています。
煙草、スーツ等の小道具の使い方も良い。
個人的に矢代のベスト萌え☆学生編は必見!
どうしようもない孤独や思春期の心の揺れが真に迫ります。(Posted by ブクログ)
タイトルで心奪われ、人物に心惹かれ…
やっぱりヨネダ作品は抜群の安定感です。矢代の心の声がダダ漏れの所とか本当にツボ。言葉のセンスもやっぱり好き。全ての人物がみんな不器用で純粋なんだよなぁ。つくづく、いいなぁー。
このままこの作品にいつまでも浸っていたいです。(Posted by ブクログ)
内容が深くて何度も読み返してる
レビュー読むより、とりあえず本編読もうか!って薦められる本。
夜続きが気になって眠れなくなるかも?
『囀る鳥は羽ばたかない』最新6巻の感想
「最高」
いつもヨネダコウさんの作品を読み終わると映画を見終わったような感覚で余韻が残ります。今作もメインの二人には不憫な現状ですが、作品に出る全てのキャラに魅力があり読み終わっても場面ごとに考察したくなります。確実にblですがbl の枠に納めるのが勿体無いなとつくづく思います。映画も楽しみです。
「ずっと楽しみに待っていた6巻!」
面白かった!
いっきに読んで、続き早く読みたくてモヤモヤ!
この世界にどっぷり浸かって、最後のページが近づいてくるのが怖かった!
7巻出るのはいつ?
「早く次~!」
あー、またこの続きを読めるまで暫く待つのかぁ…
新刊が出る度に最初から読み返してその世界感に浸ります。
本当に面白くてオススメです!
BLにはまるきっかけになった一冊。
世界観や登場人物の表情や感情の描写が細かくリアルに描かれていて、読んだ後も余韻が残ってなんだからやるせない気分になる。
ヤクザBL苦手な人でもおすすめしたい一冊。
終わりに
今回アニメ化を担当する「BLUE LYNX」が手掛ける作品(制作予定の作品含む)の中で、ダントツにセクシーな作品がこの『囀る鳥は羽ばたかない』。きわどい描写をどのように描くのかも個人的に非常に気になるところではあるのですが、とにかく今は男と男の愛憎を淡々と、しかし濃厚に描いたこの作品が名作ぞろいの裏社会映画の歴史の中にBL作品として刻まれる予感に、とってもワクワクしています。