ぶくまる – 書店員おすすめの漫画・本を紹介!

書店員が選んだ「本当に面白い漫画・本」をご紹介!

『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』感想解説|RABマロン話題の漫画レビュー

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

どーもマロンです!もうすっかり秋!オタク心と秋の空!ってぐらい、オタクは色んな作品に移っていきますねー、一度読まなくなってしまった作品をもう一度読もうとは中々ならないものですが、最近改めて読み直した作品があります…それが『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』ですー!!

 

あらすじ

本作はガンガンONLINEにて絶賛連載中、谷川ニコ執筆の作品。主人公黒木智子(くろきともこ/もこっち)は彼氏はおろかクラスに友達もいない喪女である。そんな状況に焦り、行動に移すが、度々イタい失敗を繰り広げる喪女系学園コメディである。

一世を風靡した喪女系青春漫画

2000年代初頭は「電車男」のヒットにより空前のアキバブーム!その影響で「オタクが○○したら」「もし○○がオタクだったら」というようなオタクを題材にした漫画が世に溢れかえった。しかし2010年頃になるとただのオタクを絡めた漫画は少なくなり始め、次第にオタクだけに限定せず、他者とのコミュニケーションが苦手な所謂「非リア系」「残念系」な漫画が増え始めました。
その中で一際光っていたのが「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」です。ネット用語にあたる『喪女』(モテない女)を主人公にした漫画が海外の掲示板である4chanでブレイクし、日本に逆輸入する形で知られた。
2013年にはアニメ化し、僕もその流れで原作を知り、アニメと並行して漫画を読みました。主人公のもこっちがオタクという設定もあり、パロディや妄想癖を含めたギャグがちりばめられ、もこっちのズレた行動による現実とのギャップがイタさを生み出し面白い。また周りの人間はもこっちをイジめたり、馬鹿にする人間はおらず、実は優しい世界なのが作品を重くせず、コメディとして楽しめるバランスが良かった。

しかし、アニメが終わると同時に僕は原作を読む手が止まってしまいました。なぜかというと、主人公のもこっちのイタさが段々と耐えられないほど辛く感じてきてしまったのです。これは好みの問題でもあると思うのですが、アニメでは絵柄や声、音楽で少しマイルドになっていたイタさが漫画だとストレートに届いてきてしまうからだと思います。
そして本作はもこっちと周囲のズレを楽しむ作品なので、もこっちは常にイタくあり続ける必要がある。つまり成長をしてはいけないのです。
成長をする事、それはもこっちのイタさが薄まることであり、それは本作の魅力的な部分を失ってしまうことになります。
ずっと自分はこの主人公のイタい姿を見せられ続けるのかと思った瞬間、自分はこの作品を楽しめていないことに気付き、読むのを止めてしまいました。
しかし数年後、ネットで「今ワタモテがヤバい!」というような言葉を度々見るようになり、これは今一度読んでみる必要があるなと再び単行本を手に取ってみました。

変わり始めた作品のテーマ!?

読み進めていくとなんと、8巻の修学旅行編からもこっちが他人と関わるようになってくるではないか!?以前からも中学校時代の友人成瀬優(なるせゆう/ゆうちゃん)や小宮山琴美(こみやまことみ)などとの親交はあったものの、高校から新しい交友関係を作るのは初めてである。
もちろん、もこっちから積極的に絡みに行くわけではなく、修学旅行で一緒の班という絡まずにはいられない状況から、少しずつ関係が構築されていき、それをきっかけにどんどん交友の輪が広がっていくことになります。

それまでの本作は、ほとんどもこっちの世界のみで完結されていた。
モブの顔は書かれないことがあったり、もこっちの視点による被害妄想にも似た狭い世界でしか描かれなかった世界であった。しかし人と関わることにより、作品の世界の広がりとリンクして、もこっち自身の世界が広がり始めたのだ。
キャラクターが増えることはイコールもこっちがその人を認識するようになったことであり、キャラクターの本性が見え始めるのは今まで表面的にしか知らなかった相手に内面まで踏み込んできたとも言える。
そして交友が進むにつれて、もこっちの視点では『リア充』に見えていた人物も何かしらの人間関係において不器用な部分があることが見えてくる。思春期特有の他人と距離感がわからない悩みを切なくもいじらしく、実に見事なネーム力である。
もこっちの『イタさ』を売りにしていた漫画は、いつの間にか『不器用な人間達の友情物語』となっていた。そうなる事により、前述した問題の”もこっちの成長”を描いても問題が無くなり、もこっちと周囲とのズレはそれまで『イタさ』であったが、人と関わる事により『個性』へと変化した。
これは実際の人間関係にも通ずるものがある。学校生活とは他人との交流の場であり、多くの人間と接することにより生活は色付き、自分を知り、新しい価値観を見出す。そんな当たり前のことをワタモテは思い出させてくれました。

ここまで作品を自然に、上手く、更に上質にシフトチェンジさせた漫画を僕は中々見たことが無い。そうなってくるともう登場人物の会話一つ一つが不器用で愛おしく、尊く感じられる。個人的には田村ゆりちゃんのエピソードが毎回胸に来る!ネタバレになるので是非本作を読んで確かめてほしい!
物語はそろそろ卒業の日へと向かって行っている。ひょっとしたら僕、卒業の式の回になったら泣いちゃうんじゃないか!?というぐらいには今ガッツリハマってしまっている。

僕と同様途中でワタモテを読むのを止めてしまった人がいたら、それは本当にもったいない!今こそワタモテを読むべきだ!!

紹介した作品はこちら

『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』

作品の詳細を見る


『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』 1~16巻 谷川ニコ / スクウェア・エニックス

RABマロンの描く”もこっち”!

RABマロンのマンガ連載はこちら

毎週金曜更新『RAB(リアルアキバボーイズ)の日常描いてみた』

不定期更新『オタめし!〜アキバグルメ紀行〜』

「RABマロンの話題の漫画レビュー」は不定期更新です。次回の更新のお知らせやマロンの漫画関連情報は「ぶくまる公式Twitter」「マロン公式Twitter」で随時発信中!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

こちらもおすすめ

#ハッシュ本 まとめ㉕ #推理好きに勧めたい本【三省堂書店×BookLive!】
『きのう何食べた?』の「超簡単ローストビーフ」を作ったよ!|メガネ男子の漫画メシ 第1回
冒険の終わりから始まる物語『葬送のフリーレン』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー
#ハッシュ本 まとめ⑦書店員が選んだ「無人島本」【三省堂書店×BookLive!】
六本木ヒルズ誕生秘話!「森ビル [まんがで学ぶ 成功企業の仕事術]」 5-①
出版業界自ら有害図書排除を目指すいまこそ『有害都市』が読まれるべきだ|鷹野凌の漫画レビュー