『アスペル・カノジョ』最速レビュー【2018/7/11発売】
原作・萩本創八先生、漫画・森田蓮次先生の新作『アスペル・カノジョ』をレビューします。この世界が「生きづらいな…」と思ったことのある人に送りたい、注目の作品です。
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『アスペル・カノジョ』作品紹介
『アスペル・カノジョ』 第1巻 萩本創八・森田蓮次 / 講談社
新聞配達で生計を立てている売れない同人作家・横井の家へ、鳥取から突然やってきたのは「ファンだ」という少女・斉藤さん。彼女は見ているもの・感じている事・考えやこだわりが、他の人と違っていて……。これはそんな「生きづらい」ふたりが一緒に暮らして、居場所を探す、日々の記録。
あらすじ
『アスペル・カノジョ』は、売れない漫画家・横井(漫画家名:下水星人)の家に、「ファンだ」と名乗る斉藤さんが訪れるシーンから始まります。
彼女は横井の作品を読んでファンになり、鳥取から来たと言います。ブログの写真から住所を特定し、直接家を訪れてきた「ファン」に横井は戸惑います。しかし、鳥取から来てくれた数少ないファンを追い返すのも気が引け、彼女を家に招きます。
始めは斉藤さんに戸惑う横井でしたが、会話を通して彼女への理解を深め、徐々に斉藤さんに心を開いていきます。そんな二人が送る共同生活にはトラブルが付き物。これまでに読んだことのない感覚の漫画作品であることは間違いありません。
見所1:トラブルをきっかけに深まる関係性
『アスペル・カノジョ』の魅力のひとつとして、斉藤さんが起こしてしまうトラブルと、それをきっかけに相手との向き合い方を考える横井の行動が挙げられます。
例えば、斉藤さんが横井の家に泊まることになった翌日、眠っている斉藤さんがなんとリストカットをしてしまいます。自分の部屋に押しかけた女性が、勝手にリストカットをしてしまったのですから、横井自身もどのように接するべきか混乱します。しかし、彼女はどうやら鳥取に帰るよりも自分と一緒にいることを望んでいそうなことを察し、横井は彼女のことを理解しようと考え始めます。
横井が斉藤さんへの理解を深めているのはリストカット後の、このシーン。横井自身も死にたくなることはあるけれど、「斉藤さんのそれと横井自身のそれは少しケースが異なるのではないか」と考えます。そこから横井の斉藤さんへの接し方に変化が生まれ始め、次なるトラブルが起こった際も自分の物差しで彼女のことを考えるのではなく、彼女自身の物差しを理解しようと努力します。
一方の斉藤さんも、横井が自分のことを理解しようと努力してくれているのを感じ、横井との約束を守ろうと努力するのです。実家では犬以下の存在だったと語る斉藤さん。自分の存在を認めてくれる横井とは居心地の良い関係を築けそうだと感じているのかもしれません。
見所2:彼女のような存在を排除しないということ
『アスペル・カノジョ』には、漫画家の横井と漫画好きの斉藤さんのやり取りに、こんなシーンがあります。
これまでに商業として刊行されてきた漫画は、「私みたいな人がいない世界を描いている」と彼女は感じるそうです。「斉藤さんのような人」とは、単に精神障害を持っているという意味ではなく、「自分が他の人と違う」と認識している人の事です。横井も同じように「自分は他の人と違う」という自覚があるため、彼女の発言に共感します。このシーンでも描かれる通り、斉藤さんのようなキャラクターが登場する漫画にはなかなか出会えません。彼女のような一風変わった行動を取る人を排除せず、深く焦点を当てている事も『アスペル・カノジョ』の魅力です。
横井と斉藤さんの共同生活はどのように進展していくのか?二人の関係性、あるいは恋の行方はどうなるのか?この先の展開にも期待が膨らみます!
『アスペル・カノジョ』 第1巻 萩本創八・森田蓮次 / 講談社
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