【感想・ネタバレ】結 妹背山婦女庭訓 波模様のレビュー

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続きはないなぁと思っていた話に続編があって嬉しい。「渦」で中心となった近松半二の次世代の話。操浄瑠璃の魅力に取り憑かれて、浄瑠璃地獄だと言いながらも、それなり楽しく生きている人たちの話。歌舞伎芝居や読本があり、素人義太夫や浮世絵があって、町民文化が盛りの、読んでいるだけで楽しくなってくる時代の話がまた読めて良かった。もちろん、のんびり楽しんでいるのは読者の私だけで、登場人物は、芸の道に苦しんでいる。

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2022年11月07日

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『渦』の続編。大阪弁の語り口が心地よく、するすると読めてしまう。浄瑠璃の魅力、人間模様、生き方など、肩肘張らずに学び楽しみ味わえる。

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2022年03月27日

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直木賞受賞『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の続編にあたる。半二の娘のおきみや芝居小屋がひしめく道頓堀で文楽を愛する人々たちが描かれている。
専助は、きっと、どないかしてくれはりますやろ。あとは野となれ山となれ、や。『まあ、ええか。まあ、ええわ。花楓都模様、この芝居の幕はきっと開いてくれはりますやろ。愉快やなぁ、愉快や愉快や。まったく愉快な浄瑠璃地獄や。明るい闇に専助は包まれていった』と死の間際まで戯作に悩む。また一人は、“妹背山婦女庭訓”を見て人生を〝狂わされた〟平三郎。造り酒屋の跡継ぎだったが、稽古に通うようになり彼の義太夫節はプロ並みになり、寂物(さびもの)屋を開いて扇絵を売っているうちに耳鳥斎(にちょうさい)の画号を持つ絵師に。ほかにも、浄瑠璃作者を志して半二に弟子入りし、のちに歌舞伎作者となった徳蔵や、浄瑠璃作者から戯作者に転向して十返舎一九(じっぺんしゃいっく)として名をはせた余七など。
やはり、最後まで気になったのは半二の娘のおきみだった。近松加作はおきみしかいないだろう。
文楽に惹きつけられた彼らは地獄と喘ぎながらもその道を登っていくのが羨ましい。『この世の中にはなんとさまざまな人が生きているのだろうと、平三郎は感慨に浸り喜びにふるえる。さまざまな人がさまざまな思惑で、様々な事情で世の中を動き回り、こちやこちゃと生きている。平三郎は、この世は戯場だと思っている。あの世から眺めたら阿呆みたいなもんやけど、それなりの役回りで皆、一生をここで過ごしとるんやなと思って眺めている。かわいいもんやと思うのだった。なんちゅうかわいらしい生き物やろうか』。日々、こんなふうな視点で暮らせたらと羨望したくなる。
前作から受け継がれている小気味いいテンポと独特のあっけらかんさに、今回も魅了された。

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2022年02月15日

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江戸中期の大坂の人形浄瑠璃作家・近松半二の生涯を描いた直木賞受賞作『渦』の続編、というかスピンアウトもの。
各短編で主人公(視点)を変えて、浄瑠璃や歌舞伎に魅せられのめり込んで行く人々が描かれます。
絵にも浄瑠璃の語りにも才を持ちながらプロ化せず旦那芸として生き切る"松へ"こと耳鳥斎(にちょうさい)を描いた「水や空」。半二の弟子ながら歌舞伎作家に転向して才を伸ばす徳蔵(後の近松徳三)の「種」。一度は引退したものの次世代育成のために復帰する菅専助の「浄瑠璃地獄」。その専助の弟子ながら狷介さゆえに大阪でつまはじきされ、江戸で戯作者として成功する余七(十辺舎一九)の「月かさね」。おきみや専助の助けを受け人形浄瑠璃の作家として成功して行く柳(近松やなぎ)の「縁の糸」。そして大団円の「硯」。全編を通して絡んで来る、掴み切れない不思議な魅力を持つ半二の娘・おきみ(未完の半二作品を完成させた近松加作であるという設定)も魅力的です
『渦』を書く時に余りに魅力的な脇役が出来、『渦』の完成後も著者の中で彼らが蠢き続けた為に、書かれた作品だと思います。
『渦』と同じく全編大阪弁。水面を泳ぐ蛇のように滑らかに突き進む文体はますます磨きがかかって見事です。短編の為か"軽み"が増し、晴れ晴れとした自己肯定感も有って『渦』より好きかな。

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2022年01月20日

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前作「渦」の続編。
近松半二の娘おきみ、弟子の近松徳蔵、大店のぼんだった松へこと耳鳥斎など語り手を変え半二亡き後の浄瑠璃世界を描いている。全てが浄瑠璃への思い、切れない縁に、物語は育まれていくのだ。
最後の章は 「硯」で、近松門左衛門の硯で始まった前作が、ここでまるっと閉じる大団円、お見事でした。
浄瑠璃ではないが、耳鳥斎の絵は味わい深く温かみがありヒョウヒョウとして、そんな彼をこの小説の狂言回し的な位置に据えたのが良かったです。

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2022年01月18日

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「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」の続編。短編集。前作主人公の近松半二の娘、おきみの周りの人間たち、その一人一人が、寄せては返す波のように、浄瑠璃に携わる物語を紡いでいく。

台詞にも文中にもそこかしこで出てくる関西弁が、リズム良く文章を読ませる。読んでいるだけで楽しい。また、物語としても、創作者として、一家の主人として試行錯誤する姿が胸を打つ。前作に引き続き、大変面白かった。

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2021年10月22日

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よかった!面白かった!大阪弁がすらすら流れて展開がいい。各小説の主人公に愛があって全て繋がって、おきみを取り巻く人達が面白い。浄瑠璃に魅せられた才のある人達。松への人生も素晴らしい。

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2021年09月08日

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浄瑠璃作者・近松半二の娘など浄瑠璃に魅せられた人達の縁が結ばれ、人形浄瑠璃のために生きていく喜怒哀楽と浮き沈みが生き生きと描かれていた。古典芸能の世界により興味が湧く。おきみちゃんのサバサバした感じが気持ちよかった。

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2024年05月12日

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妹背山婦女庭訓 シリーズ2

近松半二が鬼籍に入り、操浄瑠璃が、ますます尻すぼみになっていた。
それでも、浄瑠璃に魅せられた男たちが、ひたむきに、浄瑠璃に向き合う。

耳鳥斎が
近松徳三が
十返舎一九が
菅専助が
武内確斎が
畠中銅脈がいた。

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2024年03月13日

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人形浄瑠璃の世界に縁ある人々のとても人間くさい生き様が、飄々とした文体で描かれた、とても「粋な」小説でした。

魅せられるように浄瑠璃の世界に引き込まれていく人たち、訳あって離れていった人たち、浄瑠璃の世界のそばで芸を磨いていく人たち。

彼ら彼女らはそれぞれ気ままに、けれどきりっと自分たちの己を貫いて、世間の渦をうまく乗りこなしていく。とびきり秀才でなくとも、魅かれる長所ばかりでなくとも、憎めなく質感のある登場人物たちからは、ふと生活音を漏れ聞くような、温度のある身近さを感じていきました。

うまく実らなかった情の種もありましたが、そうであっても彼と彼女は末永く互いを大事に思って生きていくのだろう、ちらりと切なさを感じつつもそう思えました。

なにかに打ち込む日々はうつくしい。それが芸の極みであっても、幼子の成長であっても、なにであっても。

一日一日ちいさな渦に踏み込んでいく人々の小さなかけがえのない勇ましさを感じたお話でした。

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2022年08月17日

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みんな亡くなっていってしまうが、それでも虚しくならないのはすらすらした書き方のなかに彼らがこの世を遊んだ生き様が満ちみちているからかも。浄瑠璃地獄、浄瑠璃地獄と繰り返しながらもみな満足げ。

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2022年07月02日

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67続きが読めてよかった。人物像が年代を経ているのでややこしいけど、それを越えて、浄瑠璃を楽しんで、悩んで、人生を懸けて取り組んでいる生き生きとした市井の民衆の姿が見えて、読んでるこっちが楽しくなった。現代まで物語が続けばいいのに。

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2022年06月14日

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『渦』からの繋がりに、胸が熱くなる。
半二が残したもの、創作に携わることの業。
その半二さえ、門左衛門から続いてきた人。連面と続いていく伝統文化の厚み、重み。
芸能の魅力。
しかし、メディアミックス、二次創作は日本文化の根っ子にあるものなのだと納得。

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2022年06月09日

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半二の熱い人生も良かったけれど、おきみの飄々としながらも常に浄瑠璃と関わっている人生も良いなぁ(*´ー`*)おきみの回りの人達の方が熱いのも面白い(^^;)

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2022年05月30日

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先日読んだ直木賞受賞作の続編。主には半二の死後の話で、妹背山婦女庭訓で浄瑠璃の世界に入った通称松へに絡む話。正直最初はめんどくさい話だったんだけど、中頃からこの世界に引かれてしまった。こんな訳の分からん世界の話で、なんかいい読後感を感じてしまった。見事!

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2022年03月18日

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ネタバレ

操浄瑠璃の隆盛を描く時代物っぽいけど読みやすい小説。
今回は近松半二の娘、おきみがとっても気になる。

遊びつつ才能に溢れてる松へ、おきみ、おきみに教えをこう徳蔵、たまたま縁でおきみと一緒に立役者になっちゃう柳、最後の足掻きでおきみのために命を削って浄瑠璃をかく菅専助。
それぞれの立場でそれぞれの一生懸命な思いが語られるから、別の人の視点になった時に全ての人物への親しみがグッと増して魅力的に思えてくる。

全ての人をゆるーく繋げてるのが松への懐の広い、カラッとした気質で、癒される。
十返舎一九が誕生したり、浄瑠璃の演目に雨月物語をつかうだとか、日本文学好きにはたまらない展開かもね。


最後おきみが幸せそうで良かったし、徳蔵とはすれ違ってすれ違って別々の人生になったけど、そういうのもなんだかリアルなかんじで良かった。

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2022年02月07日

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『渦』の続編。今回も面白い。松へさん、実在したのですね。その世界の才のある者、才のない者。だけど「自分の中に育った種は捨てたらあかん、大事に育てたり。」ちゃんと育ててあげれば、違う場所であっても芽吹く時が必ずあるよね。半ニさん、ええこと言うなぁ。

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2022年01月21日

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前作の「渦」の記憶が新しいタイミングで読んだので物語の世界にスッと入ることができた。本当に前作の次の世代のストーリーだった。今回のテーマは種。なかなか芽がでなくても、実は長年水をあげたりケアしていれば、見えない所で根を張りふとしたタイミングで芽が一気に芽吹いて、周りを巻き込んで成長していく。自分が好きだったり興味を持ったことを楽しんで続けていきたい。
また、何かしらの浄瑠璃を見るのが今年の目標の1つになった。

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2022年01月03日

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4.3
操浄瑠璃作家・近松半二を描いた「渦」の続編。

またしても、
浄瑠璃が産み出す「渦」に呑み込まれ、その地獄に堕ちた人々。

造り酒屋松屋の倅・平三郎は、近松半二の「妹背山婦女庭訓」によって操浄瑠璃に魅せられ、それを皮切りに歌舞伎にもどっぷり嵌り、とんと家業に身が入らない。
商いそっちのけで義太夫節を語り、役者の絵を描き、道楽の道を極めんと精進する。

一方、平三郎の古い芝居見物仲間・徳蔵もまた、家業の大枡屋をほっぽらかし浄瑠璃にのめり込んだ挙句、浄瑠璃作者を志し近松半二の弟子となる。

この二人と、幼いながらも浄瑠璃に滅法通じている近松半二の娘・おきみの、
浄瑠璃地獄に生きる三人それぞれの人生模様。


「縁の糸」と終章の「硯」での、徳蔵とおきみのやりとりが、何やら切なくで涙が出た。

縁の糸が織りなす布は、
一目違えば全く違った模様になったろうに…

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2021年11月04日

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渦の続編。
渦ほどの熱量はないが、色んな人達が思いを繋いでいく感じ。縁の糸を結んでゆく。「結」という表題が言い得て妙。
浄瑠璃をますます観てみたい気持ちが強くなる。

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2021年09月29日

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ネタバレ

2019年の直木賞受賞作「渦 妹背山婦女庭訓魂結び」の主人公である近松半二亡き後の、半二ゆかりの人々によるスピンオフ作品。作品全体に流れる空気感は前作そのままで、前作が面白かった人なら間違いなくおススメです☆

キーパーソンは半二の娘であるおきみですが、江戸時代らしからぬ親しみやすい絵で有名な耳鳥斎さんと、近松半二とほぼ同世代の浄瑠璃作家である菅専助さんの二人がとにかく良かった♪その他、近松徳三さんや近松柳さん、近松余七さんと言ったサブのキャラクターも、主役を張れるほどの秀でた天賦の才は無いものの、それぞれが人形浄瑠璃を愛し、自分なりの人生を紡いでいくところがすごく良かったです。

ネタバレになるんでアレですが、とりあえず僕は、近松余七さんのその後がかなり衝撃的で、衰退期にはあったものの、本当にこの頃は人形浄瑠璃が日本の芸能のど真ん中にあったんだなあと感じました。あと、若かりし頃の近松徳三の言葉「おんなし嘘なら、わしはこっちの嘘のほうがええ」ってのも良かったし、おきみの旦那さんの話もすごく良かった♪

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2021年09月06日

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ネタバレ

直木賞受賞作の続編。

前作が近松半二の浄瑠璃地獄を描いたものに対し、本作は耳鳥斎と近松加作(おきみ)を軸に、半二の作品に魅了された人々の後日談を描く連作群像物語となっています。
近松徳蔵、近松柳、菅専助、十返舎 一九などがそこにいるように感じられて、見事な続編となっていると思います。
これを読むと浄瑠璃や歌舞伎が見たくなります。

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2022年01月19日

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直木賞受賞作『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の続編。
前作は、歌舞伎が台頭してきつつある時代の操浄瑠璃(あやつりじょうるり:人形浄瑠璃、文楽のこと)作者・近松半二を主人公とした作品だった。
半二が、『妹背山女庭訓』という、ある種、バケモノのような作品で、浄瑠璃の巻き返しに一役買うまでを描く。

本作では、半二ももはや晩年を迎えている。物語の主眼はむしろ、半二亡き後の世界となる。
半二の最晩年の傑作に『伊賀越道中双六』という作品がある。全十段で、渡辺数馬が姉婿・荒木又右衛門の助けを借りた実際の仇討を脚色したものである。伊賀を越える道中を双六に見立てて、ストーリーが進んでいく。仇討本懐がゴール=「あがり」である。
半二は実は、執筆途中に世を去っている。後を引き継ぎ、作品を完成させたのが近松加作。この人物は半二以上に謎の多い人物である。さて、これが誰だったのか、というのが本作の1つの目玉である。

著者インタビューによれば、前作で完了したと思っていた人形浄瑠璃の話だが、頭の中からなかなか彼らのことが去らない。けりをつけるためにすべて書ききろうと臨んだのが本作だという。
戯画作者の耳鳥斎(にちょうさい)、浄瑠璃から歌舞伎作者に転向した近松徳蔵、半二と同年代の菅専助、のちに意外な人物として戯作本で頭角を現す余七、徐々に力をつけていく柳太郎など、登場人物の多くは実在の人物で、前作での著者の下調べが生かされた形である。
それぞれ、生き生きとした人物像に仕上げられてはいる。
が、知名度が低い分、読者には「え、誰?」という戸惑いが生じる。取り上げられる数々の作品も物語を彩るが、文楽や歌舞伎をある程度知っていないと、読み手側としては少々厳しい。
一定期間、彼らを追い続けてきた著者には近しい存在だろうが、そうでないと、浄瑠璃に精通している読み手でないと、置いてきぼりをくらうのではないか。
浄瑠璃好きな人だけを想定読者にしているのならともかく、ここはもう少し、橋渡し的な工夫が欲しかったところだろう。

とはいえ、物語の軸はなかなか魅力的なストーリーラインなのである。
半二には史実の上でも娘が1人いる。本作ではおきみと呼ぶ。人物詳細についてはほとんど知られていないのだが、著者はこのおきみを、優れた浄瑠璃作者の父の血を引き、何より浄瑠璃が大好きで、見る目が肥えた、かつ一風変わった自立心を持つ娘として生き生きと描く。
葛飾北斎の娘の応為を思い出させるような。しなやかでものに動じない一個の存在として。
彼女が、史実の上でもある程度知られている登場人物たちをつなぐ鍵となる。

半二が近松門左衛門から受け継いだ形見の品が時を経て、次の世代へと渡される。それはまさに「結」というべきもので、もちろん、品物とともに渡されるのは、浄瑠璃という芸能の「魂」そのものともいえるわけである。そこにおきみが深く絡んでくる。

だが、全体に、魅力的な人物は多々いるものの、著者の熱量が少々空回りしているように感じる。
物語に入り込めれば楽しいのだが、そこまでの敷居が若干高いように思う。
浄瑠璃という芸能自体の魅力を語るのであれば、浄瑠璃初心者でもうならせるような、もうひと工夫が欲しかった。そう思うのはないものねだりだろうか。

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2021年10月23日

Posted by ブクログ

渦の続編というか、後日譚というか。オムニバスで語り手が変わるので、前巻に比べると誰に感情移入して良いものか分からなかった感じがした。

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2021年10月23日

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