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Posted by ブクログ 2024年04月19日
教育を主体としたお話が塾目線で展開しつつ、それに携わる家族と、近しい人間達の人間ドラマの展開は飽きることなく、とても読みやすい文体で描かれている。
教育について真剣に考えたことがなかったが、作中には納得せざるおえない説も登場し、戦後の教育の変化について非常に興味をもちました。
教育問題を掘り下げ...続きを読むていくと
根本原因は多岐にわたってしまうが
そこまでは触れず、あくまでも教育の範囲を中心に改善していく
心を育めるような教育であってほしい
おのずと学力はそれに伴う
そんな感想をもちました。
読みやすく読後感が凄くいい本です。
Posted by ブクログ 2024年03月17日
塾教育と家族の歴史小説
シンプルなタイトルが好き それだけで手にとった小説 なんの話だろう?
戦後学校教育の歴史?塾と学校教育の対立の歴史 学校じゃなく塾題材の小説って珍しいのでは?私は初めて
読み終わって
朝ドラのように話が過去から現代に 軸は塾教育と大島家族 後半はどんどん泣けてくる
...続きを読む塾を取り巻く環境 戦後から現代へのうつりかわり その時々の政治の転換や流行ネタも記されていておもしろい
大島家族の物語としても 女性がとにかくつよくたくましい!
学校でも塾でもどちらでもいい 子どもに自分自身で考え表現する力を持たせることができれば
目の前のたった1人でも難しいのに 吾郎さんのスピーチのとおり 三日月のように常に欠けているからこそ 満ちようと研鑽を積む
「人を愛し、それでいて人に多くを望まず〜」
「ああ、なんてかわいいんでしょう」「大丈夫。私が守ってみせるわ」
「ありがとうございます。直哉に、力を与えてくださって」
常に何かが欠けている三日月
「私も、ちょうどあなたを見て、誰かに似ていると思っていたところですよ」
Posted by ブクログ 2024年03月11日
今年一番おもしろかった!!!
分厚くて尻込みしてたけど、読み始めたらあっという間。
戦後から平成まで、教育とそれに奮闘する家族の物語。
昔の塾の立ち位置が現代と全く違ったものだったのが驚いた。先人の頑張りがあってこそ、今の塾の形があるんですね。でも、みかづき。今も教育は満ちること無く変化してるの...続きを読むかな。
家族の物語としても楽しめた。千明の強さと不器用さがとてもじーんときました。
千明と五郎の子供たちはなんやかんやで全員家庭を持ってすごいよね。一郎と杏ちゃんも結婚して子を授かりそう。子孫たちがみんな安泰でいいなーと素直に思った。みんなそれぞれ頑張ってるから、みんな幸せになるんだね。
Posted by ブクログ 2024年02月01日
戦後日本の教育に、塾の黎明期から携わってきた一家のお話
以下、公式のあらすじ
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「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」
昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。
胸を打つ確かな感動。著者5年ぶり、...続きを読む渾身の大長編。
小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。
女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、
塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。
阿川佐和子氏「唸る。目を閉じる。そういえば、あの時代の日本人は、本当に一途だった」
北上次郎氏「圧倒された。この小説にはすべてがある」(「青春と読書」2016年9月号より)
中江有里氏「月の光に浮かび上がる理想と現実。真の教育を巡る人間模様に魅せられた」
驚嘆&絶賛の声、続々! 昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編。
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ドラマを観てたけど、昭和の時代のところは何となくストーリーを思い出せるけど
平成パートはあんまり覚えてない
冒頭で老人の高橋一生に工藤阿須加が相談に来てて、過去を話し
、永作博美、出てたのはわかるが、他は覚えてない
なのでまぁ、新鮮な気持ちで読めた
学校の教師の物語は数あれど、塾に焦点を当てたものは珍しい
現代の中学受験を題材にした進学塾ものならある
でも、この作品は塾の黎明期より補習塾としての始まりから、学習指導要領の改定に伴う国の方針変更変更に振り回されつつも、子供たちへの「教育」に向き合い続けた人達の物語
公教育への批判
文部省、文部科学省への反抗
そもそも、政府への批判
この物語を読めば、戦後日本の教育方針がどう変わってきたのかがわかる
戦時中の国民学校での教育に反感を覚え
また、戦後の掌返しに不信感を抱いた千明
その結果、公教育である学校教師としてではなく、私教育としての塾で子供たちに光を当てようと志す
国の教育方針への疑問はごもっとも
理念はいいものでも、現場の能力不足によってその理想が実現されることはないという状況
まぁ、教師に余裕がないという事も原因なんでしょうけど
詰め込み教育、落ちこぼれの増加、学習範囲の縮小、ゆとり教育、その結果として競争率の増加、教育費の差による教育格差
国の方針転換も強ち間違ってはいないんだけど
どうしても大多数から取りこぼされる層はあるわけで
万人が満足する教育体制って難しいんですけどね
「子どもを食いものにしている」「受験戦争を煽るだけ」という塾批判
しかし、それは国の方針転換によって生まれた需要を塾が供給しているだけであって
本来は塾に向けるものではない
千明の主張する理念には共感する
「十分な知識さえ与えておけば、いつかまた物騒な時代が訪れたときも、何が義で何が不義なのか、子供たちは自分の頭で判断することができる」
しかし、そんな志を持っていたはずの千明も時代の流れには逆らえずに、塾の経営のために進学塾への方針転換に舵を切るんですよね
果たして、進学塾で義を判断する教育が身につくのかね?
後に、蕗子は「理想の教育」について母に問うている
「理想理想ってお母さんは言うけど、本当にそんなものがあるんですか。あるとしたら、どこに?」と
結局、この物語は終盤に吾郎が語ったりタイトルにもなっている通り、満ちることのない理想の教育を追い求める姿勢のお話なんだな
「常に何かが欠けている三日月。教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない」
菜々美に対して吾郎が言ったセリフの中々よい
「今いるところでおもしろいことを探せないなら、どこへ行ってもダメだ」
現状を否定する気持ちを認めなくはないが、それが逃げであるならばどこに逃げても同じだと言う事なのかね
ゆとり教育の本来の目的は知ってたな
一部のエリートと、その他単純作業を担う人材というヒエラルキーを構築するための施策というアレ
あと、学校週5日制も教育上の理由ではなく、教師の労働環境の問題に起因する事も
その辺も含めて、ゆとり教育って誤解されていると思う
そもそも、私はゆとり世代ではない
一郎と同じくらいの世代なので、ゆとりではないけどひとまとめにされがち
何だかんだ言って、どんな世代も全時代の世代からは「最近の若者は」と言われる構造になっているし
個人的な意見としては、むしろ最近の子達は子供の頃から色々なところに気を配らなければいけなくて大変そうだなぁと思うよ
家族の物語としても秀逸
吾郎にとって血の繋がらない蕗子が一番似ている
そんなところが個人的にはぐっとくるポイントかな
蘭は千明の合理的で厳しいところだけ取り出して、教育を削ぎ落としたような存在
実業家としては優秀なのかもしれないけど、教育業界で生き残るには相性が悪い
菜々美は子供の頃はともかく、大人になってグリーンピースに入るという危うさはあったものの、結局は一番バランスのよい大人になってるな
一郎は蕗子の子で吾郎と千明の孫という立場だけど、やはり吾郎に近いように感じる
家族でお互いに男同士というのも、女が三人集まったら敵わないという状況で飲み込まれていくのも面白かった
私教育のすったもんだあったけど、結局は吾郎がやっていたような、貧困により学習機会が十分ではない子たちへの教育をどうするかという着地点を一郎が作る構成になっているところもいいな
理想の教育というものがあるのかないのかわからないけど
現状に満足して受け入れるだけでなく、よりよい教育を追い求める社会であって欲しいですね
Posted by ブクログ 2024年01月25日
激しくもある千明の性格が愛しかった。
最初は五郎の目線で物語が始まるからこそ、千明の気迫に恐ろしさを感じた。
けれど、千明の立場に立つと、どこまでも純粋に教育を追い求めていて。
その目標に向かうことが生きがいで。
ただそれだけなのだった。
家族みんなそれぞれの性格があって、
尖った人間
まあるい人...続きを読む間
その間にいる液体のような人間
みんなが家族の縁という強制的に一緒に過ごす中で最後にはバランスを取れるようになることが嬉しかった。
千明のためにも、嬉しかった。
周りに理解されなくても目標を達成しようとする千明が孤独にならなくて良かった。
五郎ありがとう。
Posted by ブクログ 2024年01月08日
昭和36年〜平成20年頃までを塾を中心に描く長大な物語。
時代による塾の変化、
文部省(文科省)の教育についての方針の変化、
社会が変わることで教育の問題が変わること、
いろいろ含まれていてとても興味深かった。
なにより登場人物が生き生きしていて良い。
初めは苦手だったキャラも時代を追うごとに
...続きを読む愛着が湧き、応援したくなる。
ラストまで心地良くて、600ページ超えを読んで良かった!と思えた。
最初それぞれ点だったところから、「塾を開きたい」という、とある生徒の母親の一言がきっかけで、吾郎や周りの人の人生がガラリと変わっていき、様々な困難を乗り越え共に成長し、親子3代にわたる壮大な物語でした。
昭和ってそんなに昔でもないのに教育についての考え方や塾に対する認知度とか今とは全然違い、その時代...続きを読むのことをより詳しく知ることができました。
途中何度も、「これどうなっちゃうんだろう、、、」「子供たちは大丈夫かな、、、」なんてハラハラする部分もありますが、紆余曲折はあったものの最後はいい方向で収束できたので、読んでいてすごく感動したし、「がんばれ」!と応援したくなるような感じでした。
Posted by ブクログ 2023年11月21日
戦後の塾業界の話から現代に至るまでの教育の話でした。
学校、塾、文部省の関係性が時代ごとに変わり、また教育方針も変わり、子供たちや教育機関がいつも左右されていることがわかります。
感極まり、途中泣ける所も何回かありました。ぼくが泣くとこはみんなと少し違うかもしれませんが、、
フィクションとは到...続きを読む底思えない程のクオリティーの高さに驚き、拍手を贈りたいです。
かなり長いですが、それでも読む価値はあると思いました。
教育関係者や子供がいるお子さん、学生の方々にオススメしたい一冊です。
Posted by ブクログ 2023年10月17日
読み進めていくにつれタイトルが【みかづき】である理由・意味が明確になってくるような印象を受けた。読み終えた後、ふと夜空を見上げたくなる一冊でした。また読みたい!
Posted by ブクログ 2023年09月26日
とても面白かった。教育でこんなにも壮大な物語が紡がれるとは。何よりも時代が移り変わる描写を欠くのがうまい。私もともにその時代を生きたかのような錯覚に陥る。今は当たり前の塾ですが、昔はそうでもなかったのですね。そういう時代もあったののだと大変勉強になりました。
Posted by ブクログ 2023年09月13日
塾の講師だからって言うのも大いに影響したとは思うけれど、非常に素敵な一冊でした。
自分が今もなお直面する教育の問題や、難しさ、教育者とは、学校とは、塾とは、という果てしない問いが真摯に語られている印象でした。
それはきっと丁寧な取材があってのことだと思います。
最後の、教育はいつまでも満たされな...続きを読むいみかづきのようなものであると言う部分にとても納得し、これからの自分に言い聞かせ続けるべき言葉と感じました。
読んで良かった。
Posted by ブクログ 2023年09月05日
子供の教育。そしてそれに全てを捧げる激情の女性。
決して満ちることのない月のような、その2つに魅了され、翻弄され、裏切られ距離があいてそれでも舞い戻って、紆余曲折を経ながらも、それらと添い遂げた主人公の半生。そしてその家族の歴史の物語。
ちゃめっ気があり人情の機微に長けた母の頼子、狂気すら孕む激...続きを読む情を持つ千明、のんびりした人格者だが押しに弱いのが玉に瑕な吾郎、聡明で温厚、実は頑固な一面も持つ長女の蕗子、母譲りの苛烈さと才覚のある次女の蘭、おおらかでマイペースで自由な三女の菜々美。
どのキャラクターもほんとうに魅力的。
自分で考えるよう千明に言われ続けてきた三姉妹と孫の一郎が、それぞれ障害や挫折に見舞われながらも自身で見つけた道を力強く歩いていっている。
孫の一郎は吾郎と血のつながりはないが、人には似ていると言われることが多い。幼い蕗子が吾郎に語った、脳を継ぐ、というまさにその現象を体現している存在となっている。蕗子は吾郎と血縁を超えた、親子になっているのだなと感慨深い。
母の頼子の三姉妹評がハッとさせられたので覚書。
蕗子は人を裁くけど許せるから幸せになれる
菜々美は人を裁かないおおらかさがあるから大丈夫
蘭は人を裁いて許さない。あの子はしあわせになれるかしら。
Posted by ブクログ 2023年08月04日
テーマは教育、特に学校教育と塾の在り方、ととっつきにくい感じもするが、本作の主人公たちである大島家の人々を緻密に描いた作品。昭和〜平成までの長い年月を描いているので、大島家の大河小説のようでもある。
家族だから分かり合えること、家族であっても分かり合えないこと、それでも切れない強い繋がり…。家族を...続きを読む、人と人との繋がりを考えさせられる作品だ。
森絵都さんの著作の中でも特に大好きな作品で、今後何度も読み返すと思う。
Posted by ブクログ 2023年07月09日
森絵都さんといえば、児童文学のイメージがありましたが、しっかりとした長編小説でした。でも、読みやすさからかあまり長かった感じはなく、すっと読めました。
戦後の教育史がよく分かる内容でした。私も教育に携わっていますが、教育の歴史の変遷がよく分かりました。これから教育関係に進みたい人は勉強のためにも読ん...続きを読むでみるといいのではと思います。
Posted by ブクログ 2023年06月28日
読む前はここまで壮大な話だとは思っていなかった。
かなりボリュームのある本だったが、蛇足だと思うような部分はなく読み応えがあったので、ぜひ腰を据えて読んでほしい一冊。
登場人物の様々な悩みや葛藤を丁寧に描いていて森絵都らしさを感じたのと同時に教育の難しさ、正解のなさも感じる。
Posted by ブクログ 2024年04月15日
口コミが良かったので手を取ってみた作品。
社会的に急成長を遂げていった塾業界、血縁だけに留まらない家族のお話。
教育業回に身を置く自分としては、そうだよなあ。と納得する場面やセリフが多く終始頷きながら読み進めていた。
教育業界は常に満ち足りない三日月。それは子供の成長や発展を願う大人や国の想いとも捉...続きを読むえられるかもしれないなあ。
Posted by ブクログ 2024年01月22日
最初の1文、最後のセリフが今まで読んできた中でも群を抜いて良い作品。この最初と最後は読み終わってからの味わい深さがすごい。
親子3代にわたる塾経営に関するすったもんだが描かれている。塾と学校を月と太陽に例えて、そのモチーフが話の端々に出てくるところもすごく上手い。またこの時代による塾の扱いや立ち位置...続きを読むを、都度主役を入れ替えることによってすっきりと分かりやすく描いている。森絵都というと一人称のイメージだったが、だからこそ三人称でも様々な人間の機微が書けるのだろうかと思った。個人的には新月の章が好き。ちょうど読んだ頃、大学でも似たようなことを学んでいたこともありすごくワクワクした。時代的にも一番親近感を覚える世代だった。
あと主人公家族が女系の一族なのだが、我が家が似たような男女比率で親戚で集まった時の雰囲気に親近感を抱いた。本当にあんな感じなんだよ……終始誰かが喋ってて子供たちはその横でもっさもっさご飯を食べるシーンとか。
すごく満足感のある作品。おすすめです。
Posted by ブクログ 2024年01月03日
大河ドラマみたいな壮大なストーリー。
親子3代にわたる、教育への問いかけ。塾がどういう立ち位置だったのか、果たして子供の教育って何が正解?に対する色んな考え方。
どの時代も今の教育に対して悲観的である、というところに今もそうだな、と思ったし、むしろそうでなければいけないとも思った。
"自分...続きを読むの力で考える"ってシンプルだけどとても難しい。
Posted by ブクログ 2023年11月24日
どこかのサイトで紹介されてたので買った一冊。
塾と教育の話でした。
結構厚みのある本だった。
塾や教育などそれほど興味の湧かない題材の内容だったので前半は正直あまり読むスピードがあがらなかった。
でも後半からはだんだん話が面白くなり読みスピードも上がっていった。
自分も小中学生の時塾に通...続きを読むっていたが、塾に進学塾と補習塾と種類があるのは知らなかった
自分はたぶん補習塾に通ってたと思う。
三代に渡る話は壮大でした
孫も結局教育に関わっていく
それだけ教育に熱買った初代だったんだと思う
泣ける小説と聞いていたがどこが?と思っていたが、後半は感動で泣ける所が多い小説でした
Posted by ブクログ 2023年10月19日
教育というのはいつの時代も満ちることはなく、高度成長期、少子化などを経てその時代ごとに課題があるものなんだと改めて思った。
そして舞台が塾だからそこ、塾市場の成長期には落ちこぼれをなくすための補習塾なのか、受験戦争に勝ち抜くための進学塾なのか、参入してくるライバル社たちに立ち向かうため、存続のための...続きを読むビジネス拡大なのか、大事なことがなんなのか分からなくなっていく感じもみてとれた。
“教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにある。”
2017年本屋大賞2位
第12回中央公論文芸賞
Posted by ブクログ 2023年08月24日
タイトルが逸材
森絵都さんの本は小学生の頃読んでいてお気に入りだったが、あの頃と変わらず今回も読みやすく、サクサク読めた。
ただ、大河小説ゆえ、文庫の厚さはすごかった。
塾は決して学校より上にはなれない存在。
教育と経営ビジネスを同時に考えなければならず葛藤する。
太陽と月、陽と陰、表と裏、陽...続きを読む向と日陰
学校と塾を例えて対立の関係で表していたのが面白く、登場人物それぞれの熱い想いも印象的だった。教育の難しさを考えさせられる。
Posted by ブクログ 2023年08月16日
三代に渡って塾業界に携わることになった、大島赤坂夫妻、娘の蕗子、蘭、菜々美、の三姉妹、蕗子の息子上田一郎、の物語り。
家業を安穏と継いだ、という要素は微塵もなく、迷走する文科省の政策に翻弄されたり断固抵抗したりしながら、塾経営と理想の教育との両立を目指して、七転八倒する姿に、どこの業界も大変なんだな...続きを読むあ、と感じ入った。
自分自身は、塾が無いど田舎育ちなので、塾については特段の思い入れはないが、我が子はしっかり通わせている。
どんなにハズレの先生に当たろうと、育つ子は育つし、伸びる子は伸びる、と思う一方で、ほんの少しの啐啄の有無で、ある子の一生が大きく変わってしまうことは十分に起こり得るのだろうと、第八章の新川直哉君の例を見て思った。一生懸命努力して点数を伸ばした子に対して、カンニングを疑うのは言語道断。僕は怒ってます、と抗議した直哉に先生がきちんと謝った、というのが直哉にとっては救いとなったわけだが、一歩間違えれば、人一人の人生を潰したかもしれない、と考えると、教育者というのは、大変な仕事だ。
Posted by ブクログ 2023年07月05日
教育の現場を
一つの学習塾を通して描いた長編小説
時代と共に変貌し翻弄される教育現場を、3世代に渡って学習塾の視点で描かれており、読後は長編映画を観た後のような心地良い疲労感さえ感じた。
学習塾…
確かに公の教育現場である学校と比べ、言わば月のような存在ともいえる。
時代背景もあるが、個人的に...続きを読むは塾は進学塾のイメージが強くビジネスとしての側面ばかり目にして来た為、補習塾や無料の勉強会という発想はとても新鮮で敬服した。
確かに教育は、時代の流れが変わる中で常に変えていく必要があり、官民問わずそれに奮闘していく姿勢こそが継承されていくべきものだと気付かされた。
また物語を彩る登場人物達が何とも面白い。
男性はおおらかでどこか抜けている。
女性はパワフルですこぶる強い。
3世代に渡る人間模様も読み応えがあり、家族の在り方にも時代の流れが見事に描写されていた。
最後の「新月」の章、一郎が全ての原点となった祖父吾郎の意思を引き継ぐ形で終わっているのが特に感銘を受けた。おまけに女性の好みまで遺伝しているのだから何とも憎めない。
果たしてこの組合せは上手くいくのだろうか?
まぁ上手くいく必要はないのかもしれない。
時には陰となり、三日月になる術も持っているだろうから…
などと読後も楽しませてもらった。
Posted by ブクログ 2023年06月19日
正確に書くと星4.9。
大河小説というので、江戸時代の恋愛とかかなと思ってなかなか手が伸びなかったが、想像と全然違った。早く読めばよかったが、今読めてよかったと思う。
ヒューマンドラマみたいな要素と、お仕事小説としての要素があって、しかも親子4世代分書かれているので歴史の移り変わりとかもあり、とても...続きを読む豪華な、すごい小説だった。
そして知らなかったことも知れて面白かった。
最後の主人公の行く末をもう少し見たかった。
Posted by ブクログ 2023年06月13日
震災後のペットレスキューを取材した『おいで、一緒に行こう』で好きになった作家。『リズム』『カラフル』の次に選んだ本書は、60年代の小学校の用務員室での風景から始まる、心温まる物語のように始まった。しかし、用務員・吾郎と、小1の蕗子の母・千明との出会いから、進学塾設立、そして、受験戦争の中での経営方針...続きを読むの反目という、辛い現実を読むところまでは、何ともやる瀬なかった。後半は、夫婦、親子の和解と、孫の活躍に救われた。70年代に小中学生だった自分は、幸か不幸か学生運動の激しさも、ゆとり教育の弊害も体験していないのだ。
帯の「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」という文言に惹かれて購入しました。
親子三世代で理想の教育を追った話でした。
この本に出てくる塾は予備校ではなく学校で落ちこぼれを補習する塾で、公教育で輝けない子供たちを輝かせる意味で月との表現をした第一世代、塾に行け...続きを読むない子供達を学校教育で補う第二世代、塾にも学校にも居場所がなく、金銭的に困窮している子供を救う第三世代と役割分担されており、親子間で意思が受け継がれていく様がわかりやすく描写されており一貫性があってよかったです。
この本における理想の教育とは子供たちをコントロールすることではなく、自分の頭で考えて不条理に抗う力を子供達に授けることだと解釈しました。戦争や虐殺といったこれまで人類が犯してきた数々の過ちの原因は自分で考える力が欠けていたことだと私は思っています。もしナチスドイツの虐殺に対して立ち止まって考えられる人がたくさんいたなら、歴史は変わっていたかもしれません。あのような過ちを二度としないためにも周りの言葉に惑わされず自分で考える力を養うというのが理想の教育のあり方であると私も思いました。
Posted by ブクログ 2024年01月10日
昭和から平成の教育、わたしが学んできた時代も書かれていたけど、こんな変遷があったとは。すこし退屈で惰性で読んでいたところもあったけど、総合的には親子3代の繋がりが面白かったと思う。
Posted by ブクログ 2024年01月01日
読むスピード上がらなかったなーー
面白いんですけどね、めっちゃ面白いんですけど
感情が移らなかったのか?身近に感じられなかったのか?
面白いのに読む手が進まなかったので、自分の好きな本って何なのだろうと考えるきっかけになった。
大作だね。すごいな。終わり方は最高に好き。
Posted by ブクログ 2023年07月21日
初めての森絵都作品。
五郎の目線・千秋の目線・一郎の目線で大きく構成されてた。
千秋の章でちょっと読む手が止まってしまったのだけれど、半分も過ぎればするすると読み終わってしまっていた。
登場する人物の欠点も前面に出ていて、欠点も含めながら折り合いをつけて生きていくそれぞれが、人間味溢れていて楽しく...続きを読む読めた。
私は平成生まれだし、土曜日授業も低学年の頃に終わってしまった記憶があるけれど、その背景にはこんな戦争があったのかと。
果たして私の地頭はきちんと育ったのだろうか。
一郎の言うような、コントロールされる教育ではなく、不条理に抗ったりたやすくコントロールされない頭だろうか。