【感想・ネタバレ】ラス・マンチャス通信のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

5章まであって主人公は「僕」であるが、5つの別の話だと言われても読めそうな気がする。5つの話のどれもが底が見えなくて怖い。何がどうなっているのかがわからなくて、漫然としていてそれでいて恐ろしい結末がありそうな・・・。取り立てて読まなくてもいい気もするのにいつの間にかじっとりとしたものに巻きつかれて読み終わるまで囚われてしまうような話である。

0
2010年05月16日

Posted by ブクログ

仕事が忙しくなって来たのに、睡眠時間を削って読んでしまった。
ものすごい吸引力だ。
わけのわからないものがたくさん出てきて、私はたぶん全ては想像できていないのに、何と言えばいいのか、そこから目が離せない。
タイトルをどこかで見かけた時にちょっと気になっていた本だったけど、こんなことならもっと早く読めば良かった。

0
2010年02月16日

Posted by ブクログ

日本ファンタジーノベル大賞受賞作。ガルシア・マルケスを代表としてた、いわゆるマジック・リアリズムといわれるジャンルに類する作品らしい。確かにリアルなんだが夢なんだか、此岸と彼岸の合間を行き来しているような、浮き足立った物語である。よって非常にあらすじが書きにくい。長編作品なのだが、ひとつひとつの章の独立性が高く、連作短編としても成立している。全体をものすごくざっくりまとめると、主人公とその家族の転落を描いたファンタジー作品である。だがこれだとものすごく誤解を招くと思われるので、一応章ごとに簡単にまとめておく。第一章 畳の兄主人公は、父母姉兄との五人家族であるが、兄は"アレ"と呼ばれるいわゆるキチガイ。異臭を放つ"陸魚"を日夜もてあそび、家中を散らかしていくが、一家は見てみぬ振りを決め込んでいる。そんなある日、アレが性的興奮をもって姉にのしかかった瞬間、主人公は我慢の限界を超え、アレを撲殺してしまう。「我慢」は父に刷り込まれ続けた倫理であり、主人公の座右の銘となっている。第二章 混血劇場施設(おそらく少年院)に入れられた主人公は、出所後、教室を改装して作られたレストラン、リトル・ホープで働き始める。ある日、リトル・ホープを訪れたチンピラ二人に、ウェイトレスが悪質な嫌がらせを受け、我慢ならなかった主人公は、ちょっとした口撃に出てしまう。すると、それまで黙っていた客たちが一斉に賛同し始め、気づくと狂気的な暴動状態になっていた。嫌われていた主人公はその責任を取らされ、職を失う。父の知りあいである芸術家の小嶋さんのツテで、遠方の職を紹介してもらったが、そこへ行くついでに家族でフェリーに乗って、映画を見ることになった。その映画の名は『ラス・マンチャス』。ラ・マンチャの複数形であり、身体に黒い染みが浮き出る呪われた一族の話だという。第三章 次の奴が棲む町越してきたのは灰が降り止まない町だった。主人公の勤める「有限会社・株式会社イナガワ」は家屋の通気構からその灰を取り除く清掃業者で、従業員は社長の稲垣さんと、先輩の箕浦さんと三人しかいなかった。童貞であることが露見した主人公は、稲垣に女を紹介されるが、それは箕浦の彼女由紀子であった。稲垣は由紀子の父の弱みを握り、由紀子を良いようにしていたのだ。その事情を知りながら由紀子を抱いた主人公は、やり場のない怒りに駆られ、稲垣を叱責した後、行く当てもなく走り出す。そして辿りついたのが四つ辻の先、森の端、"次の奴"が棲む中澤家だった。次の奴は俗に言う吸血鬼だが、糸を巻きつけ、仮死状態のまま餌付けし、何十年も血液タンクとして獲物を生かしておくという。主人公は気づいた時には"次の奴"に襲われ、血を吸い取られていたが、稲垣さんの猟銃に助けられるのだった。第四章 鬼たちの黄昏あの町から稲垣、由紀子と三人で逃げ出した主人公は、町を転々としながら稲垣の指示で投資詐欺の営業を行っていた。アパートの一室に三人で同居しているため、稲垣は主人公の真横で由紀子を貪り続け(主人公はこっそり布団の中で手淫して我慢)、由紀子は昼に主人公を罵倒しながら犯すことでその鬱屈を発散していた。そんなある日、主人公は稲垣に、小嶋さんの個展に行ってついでにその周辺で営業をしてくるよう言われる。姉のくれたネクタイを締め、一張羅で個展に向かうが、稲垣本人でないということで取りつく島もなく追い返され、主人公は不本意ながら営業に向かう。そしてその一軒目で偶然にも嫁いだと風の便りに聞いていた姉と遭遇するが、どうも姉は薄幸である。話を聞くと、前の旦那とは別れ、今の男とは結婚もしていないという。なぜならその男は、人と姿は変わらないが、人とでは繁殖のできない食人鬼で、それゆえに戸籍も国籍もないからだった。姉はその男のために、月に一度だけ子供を誘拐し、男に差し出していることを聞き、主人公は「逃げよう」と持ちかけるが、鬼の帰還を察知した姉に急かされ、鬼の顔も見ないまま逃げ帰る。第五章 無毛の覇者由紀子を寝取っていたことが発覚した罰なのか、主人公は小嶋のアトリエに詰めるよう稲垣に命じられる。断食儀式中の小嶋は全く姿を現さず、その弟子である越智に仕事を与えられて生活することになる。その仕事とは、肥料槽の中の滋養液を毎日一回取り替えるというだけのものだった。当然暇をもてあましていた主人公は、小嶋のコレクションが並ぶ不気味な人形部屋を避けながら、図書室に通って時間を潰していた。ある夜、ふと館の一回に飾ってあった絵の少女が、幼き頃の姉であったことに気づく。越智を問い詰めると、少女時代の姉は小嶋の憧れそのものであったことを告白する。そして人形部屋に案内され、人形の一体の顔をこちらへ向けると、それはまさしく"生きた"姉であった。姉は手足をもがれ、胃腸も切除されながら、人形の身体をつけられ、チューブに流れる滋養液によって自失状態で生かされていた。すべてを理解した主人公は、我慢の余地もなく、小嶋をゴルフクラブで滅多打ちに撲殺したあと、つながったチューブを切断し、姉と一緒に逃げる決意をするのだった。最後の場面、主人公は車の中で姉の遺骨を抱え、小嶋の屋敷を後にする。屋敷から見える後始末の煙は、いつまでもどこまでも消えそうになかった。以上。物語全体を通して、というか終盤特にだが「帰る」という言葉に重きを置いている。というのも、「帰る」べき場所、つまり家族を失ってしまっているからである。これはタイトルにもあるとおり、呪われた一族、一家の物語だからだろう。とにかく幻想的でグロテスクで素敵な小説であった。パーフェクト。

0
2012年01月09日

購入済み

独特の文体

文体語り口が独特でこの作品の個性になっている。
とっつきは悪いが魅力的ともいえる。
ストーリーは比較的アップダウンが少なく進んでゆくが、最後が衝撃的。

0
2019年11月26日

Posted by ブクログ

こいつは……、久々に……、

病んでる文章に出会ってしまった。 ←褒めてる

特に第一章「畳の兄」のパンチ力がスゴイ。
二章くらいまではぞわぞわが止まらない。

終盤、主人公が成長するにつれて
行き場のない不安感は影をひそめますが
不気味さは根底に流れ続けます。

ぞわわ、ぞわわ(違)

0
2017年01月26日

Posted by ブクログ

文体、世界観と衝撃を受けた作品。ザ・マジックリアリズム。
物語は「僕」の実家時代から始まって、家を出されどこかの町で仕事についたり施設に入ったりと舞台はぽんぽん変わるが、歪なおぞましい世界はどこまでも広がる。
どこまでも救いようのない陰鬱で痛ましい世界だが、くせになってひきこまれる小説。

0
2015年10月18日

Posted by ブクログ

ガルシア・マルケスのようだとか言われてたけど私はチュツオーラやカフカ(城)を思い浮かべた。

日本ファンタジーノベル大賞は本当に外れがない!

どれもファンタジーの枠にとらわれすぎていないし、ぎりぎりの線で現実と手を結んでいるような感覚を覚えてとても好きです。

0
2010年09月06日

Posted by ブクログ

ある少年の不思議な生涯を記した短編集。
としか紹介できませんw

わけのわからない物体が出て来て、抽象的な表現、謎が謎のまま物語が進むんだけど、そこに不思議な吸引力がある。
読みやすいし理解しやすいのに、わけがわからないという奇妙な感覚に陥りました。
この話はどこに向かってるのだろう?みたいな。
の不安定感はちょっと他の作品では味わえません。おすすめです!
第一章から引き込まれること間違いなし!!

ところで、目的買い以外でこのタイトルで手に取る人はいるのか?w

0
2012年05月26日

Posted by ブクログ

森見登美彦先生大絶賛と書いてあったので。「アレ」としか書かれていない兄、確かにカフカ的幻想世界。オトナのようなコドモのような、ノーマルなようなアブノーマルなような。不思議、不思議。そして黒いよ、真っ黒で真っ暗。

0
2009年10月04日

「SF・ファンタジー」ランキング