【感想・ネタバレ】群青の夜の羽毛布のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読んでいる最中、背中がぞわぞわしてしょうがなかった。
大学を中退し、家事手伝いとして過ごしているさとる、24歳。
2歳年下の彼は大学4年で、就職も決まった今、自由な時間をさとると過ごしたいと思っている。
しかし、さとるはいつも母の影におびえ、門限を絶対に破ろうとはしないのだ。

父の姿のないさとるの家では、母が絶対的権力者で、何か気に入らないことがあると暴言を吐く、だけではなく、暴力も振るう。
さとるは母に愛されている実感がないまま、母を怒らせないように気を遣って生きているのだ。
さとるの妹みつるは逆に、母に反発を隠さない。
ただし、やっぱり逆らうことはできない。
しんと冷たい家族の姿がそこにはあった。

私の実家の話かと思った。
ここまでひどくはないけれど、過干渉の母に対して反発は許されなかった。

さとるたちが隠す父の影。
その謎が解けたとき、物語は一気に崩壊に向かっていくのだけど、私はそれよりも前半の方が怖かったなあ。
怖いというより苦しかった。
息ができなくて背中がぞわぞわ。
どうして親は私を縛り付け、思い通りにさせようとするのか。
なぜ子どもは自分の意見を言ってはいけないのか。
学生時代は何かが自分の中から飛び出してきそうで、怖かった。
友だちがいなかったら、きっと爆発していたと思う。

物語の終盤でみつるが姉の恋人である鉄男に言う台詞がある。
「入院してるのは、私の両親とお姉ちゃんだよ。だからできる限りは面倒見る。でも、どこまでやったら親孝行で、何をしなかったら親不孝なんだろう」
みつるは家族を愛してはいないが、情はある。
だからできる限りは面倒見るけど、距離を置こうとする気持ちはすごくわかる。
それは、今現在私が実家に抱いている思いと多分同じだ。

哲夫にもまた、さとるには告げていない家族の問題があった。
全くのお嬢様気質のまま大人になった母。
なにも自分で判断することをせず、責任も持たず、誰かの庇護のもとでなければ生きて行けない母。
父は愛人を作って出ていき、兄も大学進学を機に家から離れていった。
全力で人に頼ろうとするから、人は彼女から離れていく。
それを間近にみて母を捨てきれない鉄男。

人は皆、まず自分の力で立てるようにならなくてはだめだ。
親に、子に、恋人に凭れて、縛って、愛憎がきつく絡まっていくのは、結局誰のことも幸せにしない。できない。
そういうことですよね、文緒さん。
夏にこの本を予約した時、この本を読む前にあなたがいなくなるなんて思いもしませんでした。

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2021年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

可愛らしい表紙からは想像できないホラー。
毒親の話だと読み始めたが、途中何日か休み休み読んだ。

2人姉妹、姉のさとる、妹のみつる。姉妹の母がかなりの毒親で教師。さとると付き合っている鉄男。大嫌いな母から逃れられない。
最初から挟まれる誰かとカウンセラーとの話。誰と誰の話か後半わかるが、他にもとんでもない事実がたくさん。
母の自白により、さとるは自宅に灯油をまき火を付けようとする。その時のある人の言動から気がふれていた訳ではないのかも、演技かも、と感じた。演技でここまでするのはかなりの精神力が必要。
さとるの彼氏の鉄男、フラフラしてしっかりしてほしい。
でも鉄男の家族にも問題があったからか。
妹みつるが、鉄男に
「どこまでやったら親孝行で、何をしなかったら親不孝なんだろう」「もうお父さんもお母さんもお姉ちゃんのことも、可哀想だなんて思わない」
と伝えたところは、私も思う所あり。

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2023年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ


メランコリックな感情に浸っている時に出会った本です。
私は鉄男と同じ大学生で、恋愛のこと、性のこと、家族との関係などに悩んでいました。
描かれている感情が生々しくて、リアルで、普段見ないようにしている自分の醜いところに少し向き合えた気がします。
心の成長が追いつかないほど、体ばかり大人の女性になっていく焦りから、自暴自棄になってしまうこともあったのですが、さとると一緒になって感じられた気がします。
心が少し救われました。

読書の経験が浅いこともあり、結末がよくわかりませんでした。
ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのかもよくわかりません。
たまに出てくるカウンセラーと話したという人は、さとるのお父さんなのでしょうか。
でも、さとるが救急搬送される時に見た夜明けの景色から感じた希望は、本当のものだと感じて、私も希望を感じました。
生きる希望が持てそうです。
ありがとうございます。

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2023年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み始めるとどんどんいやな気持ちが積み重なっていくのに、読むのを止められない。

恋愛の先に家族があり、家族ごとに多かれ少なかれ事情を抱えているものだけど、この家族は鉄男が生半可な気持ちで首をつっこんではいけないしさとると鉄男は目的がすれ違い続けていて幸せになれなさそう。

そのことに鉄男自身もはじめから気が付いているはずなのに、情なのか何度も「自分はさとるが好き」と言い聞かせて自己暗示をかけて付き合いを保っているのが怖かった。

何度も驚く場面はあったが、いちばんはカウンセリングの謎が解けたとき。
途中でおでんの具材の話になったときに母親がタコの有無を確認して、入っていないことに薄い反応だったのはそういうことか、と納得した(この母親ならタコがスイッチになり怒り狂ってもおかしくないと思ったので)。こういう部分が山本文緒さんのお話の面白いところだなぁ…

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2021年07月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゆがんだ家庭の事情を赤裸々に描いたお話。

長く一緒に暮らしている家族ならそこでのルールみたいなものは自然と出来てくる。
家族各々はその狭い世界のなかで生きなければならない。
抜け出したくても、なかなかできない。
家族間のルールに縛られると嫌なことなのかいいことなのか、その判別までもが難しくなる。

娘二人の家庭に母親が女帝になり、彼女の独裁ぶりに父親を含め娘の恋人までが、翻弄されていく。

ここまではよくあると思うのだが、母親が娘の恋人を寝取るというのは、ちょっとわからない。
娘を含めた周囲の者達を独占したいのであれば、そんなことはしないのでは?

この母親が何を目指しているのかが、さっぱりわからない。





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2021年01月09日

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