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Posted by ブクログ
まずは恒例の各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙からです。
天剣の星: 立地太歳・阮小二
地祐の星: 賽仁貴・郭盛
地僻の星: 打虎将・李忠
地飛の星: 八臂哪吒・項充
地退の星: 翻江蜃・童猛
前巻の Review で KiKi は
お互いの「譲れないもの」と「国家のありようはこうあるべき」というビジョンを賭けての全面戦争の空気を漂わせて13巻へ進みます。
と書いたわけだけど、とうとうこの巻に至って官軍 vs. 梁山泊の戦いはほぼ全面戦争の様相を呈してきました。 数で劣る梁山泊側にとってみれば「全軍挙げての戦い」はこれが初めてではないけれど、官軍側が多面的に動き始めた最初の戦いと言ってもいいかもしれません。 それでも相変わらず童貫元帥とその直属の精強メンバーはまだまだ様子見のままなんですけどね(苦笑) この物語の中での童貫元帥の描かれ方はどちらかというと偏屈親父で自分の戦の美学だけに拘り続ける扱いにくい人という印象が強いけれど、この巻ではそれだけではないことを匂わす描写がありました。 曰く、
そもそも帝と帝がおわす都を守ることがその存在目的である禁軍は当然のことながら遠征のための予算は限られている。
このままの表現ではなかったけれど、これ、結構重要なポイントだと思うんですよね。 「都を守る」≒ 「都の近くからは離れない」というほど短絡的なものではないと思うけれど、やっぱり金がなくちゃ戦はできないわけでして・・・・・。 まして地方軍を動かすための軍費は青蓮寺が運営する銀山から出てくるようになったからこそ戦ができている財政基盤状態の官軍です。 武力だけを頼みに後先考えずに戦に赴くわけにはいかないのは総大将であればある種当たり前の感覚だよなぁと思うわけです。
そういう意味では事ここに至って尚、自分の趣味の世界に大金を費やしてノホホンとしている帝はやっぱり暗愚としか言いようがないし、その周りでおこぼれ頂戴に躍起になっている政府高官の皆さんも情けない限りです。
さて、大方の「北方水滸ファン」の皆さんが萌えるのは戦のシーンと華々しい英雄たちの死のシーンなんだろうと思うけれど、根っこのところで「死を美化する」ことに抵抗を覚える KiKi にしてみるとそれはそれ・・・・・。 しかも、戦の描写も少しずつではあるもののワン・パターン化しているように感じられます。 まあ、戦の流れなんていうものはそうそうバラエティに富んでいるようなものではないのも又事実だと思うんですけどね。
そんな中、この巻で KiKi の印象に残ったのは、梁山泊・軍師を務めていた呉用と戦闘員、呼延灼、関勝、秦明を筆頭とする各隊長との間に生じた溝のお話と宋江のお父さんに孝行を尽くす武松・李逵の凸凹コンビのお話でした。
呉用と各隊長との間に生じた溝のお話は現代社会にもよくある構図で、いわゆる部長さんと現場スタッフの間に生じる意識・考え方の相違と限りなく似たものがあると思うんですよね。 現場スタッフの方っていうのは、あるタスクを遂行するプロフェッショナルで、そのタスクを取り巻く様々な周辺状況にはとても詳しい。 で、時に直属の上司の上のさらにその上の上司ぐらいのポジションの人からスタッフさんにとっては「現場のことが全くわかっていない」としか感じられないような命令が下ることがあります。 往々にして数で勝る現場スタッフさんたちの声は大きくなりがちで「あの人は現場のことがわかっていない。」と大合唱が発生したりもします。
もちろん中にはおバカな上司というのも確実に存在していて、どこをどうつついても現場スタッフさんたちの意見が正しいということもままあります。 でもね、逆にスタッフさん達はもっと大きな視野を持って全体を見渡していないことが多いのも又事実だったりします。 要するに一面だけ捉えれば、もしくは目先の問題の解決だけを考えたらスタッフさんたちの言うとおりだったとしても、問題の根本解決を目指すとしたら異なるアプローチを模索しなければならないことがあったりすることもあるんですよね。 でも、それを「いいから言われた通りにやれ」と鶴の一声方式の命令で押し通すとろくな結果を導かない・・・・・。 だからと言ってそれをみんなが納得できるまで説得していたら時間が足りない・・・・・。
結局、その解決策は最低限でも現場のリーダー的な存在(この水滸伝で言えば呼延灼、関勝、秦明といった隊長クラスの人たち)から「この人の言うことだから・・・・・・」と信頼を得る以外に道はなかったりするわけです。 でもそのためには日頃からそういうリーダー的な存在の人たちとどれだけコミュニケーションを図っているかに全てがかかっていて、呉用さんみたいに忙し過ぎて何でも自分がやらないと気が済まないタイプだと難しい・・・・・(苦笑) ある意味では宋江さんみたいにどこか暇そうにしていて鷹揚なところがないとねぇ。 結局、この段階での呉用さんは水滸百八星の第3位という高位にありながら、やっていることはプレイング・マネージャー(それもメチャクチャ優秀な)の域を出ていないことに問題の根本があると思うんですよね。
そういう意味ではこの問題が発生した時に呉用さんを軍師から外す決断をし、皆の居並ぶ前でそれを言明した宋江さんは素晴らしかったと思います。 ようやく彼が梁山泊のトップである意味がここで理解できた・・・・そんな気がするんですよね~。
さて、もう一つのお気に入りのプロットが武松・李逵の凸凹コンビ vs. 宋大公(宋江のお父さん)の触れ合いのシーンです。 青蓮寺の魔手から宋江さんのお父さんを守るために派遣されたこの凸凹コンビが覚悟を定めて頑なになっている老人の心をほぐしていくシーンは戦・戦のシーンが続くこの巻の中で極めて温かみに溢れ、ほっとさせてくれるものだったと思います。 特に李逵の純粋さには誰も勝てないなぁと思わせるあたり、素晴らしいと思いました。 原典の李逵は単なる暴れん坊だったのにねぇ・・・・・(苦笑)
さて、まだまだ立ち上がらない童貫元帥がこの先、何をきっかけに、そしてどんなタイミングで立ち上がるのかを楽しみに14巻へ進みます。
Posted by ブクログ
双頭山の攻防(主に守り)がハラハラさせ過ぎる。
最初の奇襲で既に人数的な絶望感。
更に敵の指揮官は堅実で
無駄な損害を出さない戦法を取ってくる。
どう考えても八方塞がり。
関勝が加入したばかりだから
魅せ場が多いかと思いきや
まさかの敵の引き立て役に。
流花寨、双頭山、北京大名府を
跨いだ複数地域での攻防だけでなく、
水軍の調練・整備、宋江の父の最期の見届けといった
様々なイベントも同時期に発生する。
梁山泊もここまで大規模になったか、という感じ。
シミュレーションゲーム的な臨場感。
ただ、これからは所謂108星のメンバーの
加入よりも死亡の数が多くなっていくのかと思うと
悲しくなる。
韓滔→彭玘、孔明→童猛といった、仕草や性格の継承が
今後多くなっていく気がする。
Posted by ブクログ
あいかわらずおもしろい。梁山泊軍も、なかなかうまくいかなくなる。宗はやっぱり大国で、いかんせん人はいる。少数精鋭とはいえ、なかなか難しい戦況が続く。ワーカホリックな呉用さん。己のフィールド以外に顔を出して、周りからちょっと顰蹙を買ってしまう。専門は専門に任せましょう。
多数の死者が出てしまい、梁山泊側の人はどうなるんだろうと心配に。
Posted by ブクログ
今回は禁軍と梁山泊軍の初の大きな対決が中心でした。禁軍の底力により双頭山が壊滅状態になりましたが、落とされるまではいかなかったというギリギリのところで梁山泊軍が持ちこたえたというところですね!
また水軍の対決がクローズアップされた巻でもありました。
これからいよいよクライマックスに向かってくるところなので、早く続きが読みたいです。
Posted by ブクログ
大刀・関勝が宣賛らを伴って梁山泊に加入。
趙安が流花寨に進軍する隙に、董万が密かに双頭山を強襲。命をかけて双頭山を守る朱仝の壮絶な最期。
この巻でもっとも印象深いのは、合戦後の会議で宗江が呉用を実戦の軍師から解任した場面。
流花寨死守という呉用の命令のために仲間を救えなかった隊長たちの憤りを汲み取った見事な判断。頭領自らが引導を渡すことでこれ以上の追及はしにくい、そして呉用の孤立も防げる。
実社会でもよく見かける現場と事務方の対立と重なる。まさにリーダーの真価が問われるところ。