8篇の物語が収められている。
今回の物語に特徴的なのは、「小説とは何か」という疑問だ。
「青と赤の物語」では、物語が禁止された世界を描いている。
物語があるから悪いことをする人がいる、そんな考えを持ったエライヒトたちが物語を禁じてしまったのだ。
全く因果関係はないのに、AだからBと決めつけてしまっ
...続きを読むたのだ。
物語は、文学は、何の役にも立たない。
本当にそうだろうか。
物語は時に残酷なものも、悲しいものも、苦しいものもあり、そんな世界を目にするのは時には恐ろしい。
けれども、そんな世界があるから救われる人もいる。
物語に書いてあることは、どんな物語にせよ、誰かから、読者に、あなたに、向けたメッセージだからだ。
困難な世界に立ち向かったり、悲しみと対峙したり、失敗し、絶望することもあるかもしれないが、それだけが物語の価値ではないのだ。
「ゴールデンアスク」は物語を作る側、つまり作家の姿が描かれている。
よく、登場人物たちが勝手に動きだす、なんて言うけれどきっとこんな感じに違いない。
作家が言う言葉にイラつきながらもいちいち納得させられる。
本を読め、というのは大人が安心したいだけ、なんて。
「あかがね色の本」も同じく作家の側からの物語。
言葉とは難しいもの。
人との関係も難しいもの。
だからこそ、言葉を発し、相手に伝えること、そしてその言葉を信じることは尊い。
あかがね色の本。
きっとこの本はこうしてたくさんの人たちに影響を与えた。
今までも、きっとこれからも。
世界を共有する、それは、人と人とがつながること。
その結晶の一つがが、あかがね色の本だったのだ。