千田嘉博のレビュー一覧
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NHKで戦国時代の城郭の解説には必ず出演される著者の贅沢な作品。
旅先の城を見る程度の城ファンの私でも、読み始めると止まらないぐらい面白く幅広い。
研究者としてだけでなく、著者の城郭への愛が溢れ、知的好奇心を刺激してくれる。
入門編にとどまらず、海外との比較もあり、この著者の研究範囲の広さに驚きでもあった。今後も、城郭というワードが出てくるテレビ番組にはこの著者が当面活躍されるだろう。
著者は知識を楽しそうに語っている著者の風景が目に浮かびつつ、日本史好きは勿論、城っていいなと思った程度の人でも楽しめる城(郭)入門書である。
城郭のためだけの旅行もやってみたくなる悪魔の書でもある(笑)
機 -
Posted by ブクログ
日本の歴史
教科書にまとめたものは綺麗に繕ったもの。
しかし纏まるまでには幾つもの見解と事実があった。
古すぎて調べようがないこともある。
こうだと決めつけてかかる人。こうだったら良いとばかりに美談にする人。
それで現在の歴史知識が出来上がっている。
この本には当時は調べきれなかったことや、新しく発見された事実などから、歴史的事項を再度検証している。
大化の改新辺りのところはなんとも古すぎて繋がるのは大変だったと思う。
サラッと過ぎていた歴史的な出来事の新しい発見とエピソードや裏話。
読みやすくまとまっている。
乃木将軍の二百三高地攻略は深い。
人柄だろう天皇からも愛され同期からも敬愛 -
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文献のみでなく現地の調査など多角的に城を研究する城郭考古学、その魅力を余す所なく伝える良著。
古代の遺跡に比べて発掘調査の軽視されてきた城の調査。レーザー測量などの技術も活用しようやく進展し始めた城郭考古学。客観的な証拠の数々により従来の通説を覆す可能性も秘めている。
織田信長の城。家臣との関係が同盟的なものから次第に権力を集中させる過程が家臣の屋敷跡から明かされる。豊臣秀次が行った聚楽第の要塞化の痕跡。秀次謀反の企ての大きさ、処罰の厳しさなど謎が繋がる。
日本だけに留まらず、世界の城との比較も含め、包括的に城郭考古学を紹介した作品。
また城についての研究では実際に現地を訪れ、攻める立 -
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ネタバレ大河ドラマ「真田丸」を楽しむために是非お勧めしたい、読みやすい学術書です。まず真田丸が大坂城の丸馬出しとして、城に接続していたという従来の説を信じていた、私しの様なひとにお勧めします。千田氏の説によれば、真田丸は完全に大坂城とは独立した出城であった。信繁(幸村)が徳川軍を打ち破るために周到に選んだ土地に、鉄砲戦が主力となるため二層の塀に銃眼を開け、櫓を要所にたて、武者走りによって移動を行うことを可能にしていた。出城に籠城することは信繁が自らを的として徳川の大軍に対峙することであり、丸馬出で迎撃するのとは随分と信繁の戦術も違って来る…
次にお勧めする点は、信繁の真田丸築城の原点が、信州にあると -
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本書はお城巡りをしている方は、直ぐに読むことをお薦めします。またこれからお城巡りをする方には先ず読んでからお城巡りを、と何れにしても本書は織田信長が近世城郭〈石垣や瓦を使用したという定義とは違い、城主と家臣の館を並立的では無く、天守閣を中心とした権威を象徴する求心的な構造を持つ城と城下町〉を創築したことを、信長誕生の城から安土城までを、発掘調査や文字史料などで丁寧に解説されています。
今後は安土城に先立ち150メートルの直接的な大手道を持つ小牧山城や、安土城の天主閣に使用された懸け造りが見られる福山城、戦国期拠点城郭であった吉田郡山城や置塩城などの登城がより楽しみになりました。 -
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読み切ることを一旦断念しました。お城は好きですが、鑑賞することが好きで、お城の詳しい構造などは知らず、想像が出来なかったため文章が頭に入ってきませんでした。写真とかで解説してある初歩的な本を読み再読したいと思う。
城郭考古学の第一人者である千田先生の著書。著書からいろいろな話を引用され1冊にまとめられているため、同じ話が複数回出てくることもある。
城郭考古学とは、城を復元することとは、領主と家臣の関係性が顕著にわかる織田信長以降の城郭構造、城から見る光秀の考え方、聚楽第跡からわかる豊臣秀次の謀反計画、豊臣秀吉の本拠地など、興味深い話が多く、城の遺構、城郭の構造、資料などから武将の思惑や事件の新 -
購入済み
城めぐりファン必読
テレビ出演が多い筆者のため、すでに知り得た情報は少なくない。それでも体系的に整理されているのでより理解が深まった。山城ファンとしては共感できるところが多く、今後ますます存在感を高めて頂き遺構発掘、保全に貢献されることを期待したい。
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城の魅力を語る新書。戦国時代までの城と近世の城は印象が異なる。しかし、石垣や天守閣などの外形で区分することは本質を掴めない。近世の城は大名が頂点となり、家臣に君臨した。織田信長が天主に居住した安土城が典型である。戦国時代までの城も大名が中心であるが、家臣との連合政権の色彩があった。本丸と有力家臣の曲輪が併存していた。信長の城の形は豊臣秀吉に継承され、全ての大名が秀吉の家臣になり、全国に展開された。
これは世界の城と比べた日本の異質性になる。ヨーロッパでも中国でも中東でも城は町を守るものであった。日本で町を守る城郭は小田原城総構えなど例外的である。支配者だけが守られれば良いという日本社会の後進 -
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日本史はあまり得意ではないのだが、戦国武将好きな息子と一緒に、主にNHKの歴史番組を見ているうちに千田先生の存在を知り、少年のように楽しそうにお城のロケをしているのを拝見してすっかりファンになってしまった。
この本もそんな千田先生のお城愛があふれていて、かつ、現在の日本のお城或いは城跡の保存の在り方について、学者として言うべきことははっきり言う箇所も随所にみられ、納得の一冊ではあった。
ただ学問的には、千田先生の学説の中には「最近の有力説」ではあるけれども、学会でオーソライズされたいわゆる「通説」とまではなっていない、という説もまあまああるようなので、それらについては他の先生たちの本にも触れて