九段理江のレビュー一覧

  • 東京都同情塔
    多様性を謳い、すべての人々のあらゆる立場に配慮「しなければならない」現代社会がもたらす一つの未来予想図だと思う。
    私は常々、今の世の中は寛容を強要する不寛容な社会だと感じていて、できるはずもない全方位への配慮の押し付けに息苦しさを覚えている。それでも真っ当な大人の一人として、出来うる限りの思慮深さを...続きを読む
  • 東京都同情塔
    現在〜ちょっとだけ未来の話
    言葉とコミュニケーションとAIがテーマ

    何でもかんでも外来語にしたり差別的でない(とされる)表現にすればいいのか。
    高校の時に「言葉が世界の物事を切り取る」みたいな内容の評論を授業で読んだことを思い出した。
  • 東京都同情塔
    現実では白紙撤回されたザハの国立競技場でオリンピックをした東京という世界線が非常に好みだった。ザハの国立競技場だったらどんな東京になってたかなと想像するのが楽しい。そして東京に新しい塔が建つのなら…?
  • 東京都同情塔
    独特の世界観があり、目の付け所が面白い。
    言葉とは何か、言葉の在り方を問いかける今の時代こその作品。
    答えはなく、読者がどのように受け取るか。
  • 東京都同情塔
    紙面から溢れそうな夥しい量の言葉たち。
    手で掬ってみると指の間からスルスルとこぼれ落ち、頭には入ってきません。
    唯一手の中に残ったものは、とても杓子定規な解釈による理念でした。


    この作品はAIに侵食されゆくかもしれない、"ヒトと社会の未来"が描かれています。
    作中にはAIが幾度となく登場します。...続きを読む
  • しをかくうま
    盛り沢山すぎて頭の中がまだ整理しきれていない。
    感情や思考が言葉によってラベリングされることで腑に落ちると言うのは納得。
    今回も登場人物ヒやビやマがもはや男女どころか人かどうかも初めはわからないので感情移入できず、俯瞰で物語を眺めることとなった
    もう一度読みたい。
  • しをかくうま
    表紙のデザインはエドワード・マイブリッジが複数台のカメラを使用して撮影したギャロップの連続写真に由来する。時間がテーマの一つとなる本作に即した的をいた装丁である。
  • 東京都同情塔
    人間の使う言葉の話。安直に思い浮かぶのはバベルの塔。AIが忌避されているけど、今まで生きてきた経験値で当たり障りない言葉しか発言できないのなら、人間の使う言葉だってAIと大差ない
    人間の平等性含めて、すごく面白く読むことができた
  • 東京都同情塔
    “言霊”という言葉が頭の中に浮かんだ。この作品では言葉とは何かを表現している。言葉には意味を示す対象があるが、それは本当に存在しているのか、誰が分かるというのだろう。そして人間が使う言葉とAIが生成する言葉の羅列は同じ言葉なのだろうか。言葉には命が宿っているかもしれない。人間の行為を越える存在の言葉...続きを読む
  • Schoolgirl
    「School girl」では、14歳の娘をもつお母さんの想いと映像で語っているyoutuberの娘の想いを交差しながら読むことが不思議な感覚でした。
    さらにそこに太宰治「女生徒」の話しが出てきて、時間軸的にも面白く描かれていました。
    まだ「女生徒」読んだことないので、読んでからまたこの本を読み返し...続きを読む
  • しをかくうま
    「詩を書く馬」「死を欠く馬」と書けるタイトルをはじめ、全編に仕掛けが隠されていて難解だけど、その難解さも含めて面白い。詩人、哲学者、映画監督、競走馬などの膨大な固有名詞と、物語の広がりに圧倒された。

    九段さんの作品はどれも主張の強い女性が出てくるけど、根安堂太陽子・千日紅は特に突拍子もない言動が強...続きを読む
  • Schoolgirl
    すべての元・14歳女子たちへ。

    さきほど『東京都同情塔』で芥川賞を受賞された九段理江さんの前著。こちらも同賞(第166回)の候補作になっている。

    令和を生きる少女の実存的不安と、母娘の葛藤を描く。
    その鮮やかさに、こちらは眩暈のような錯覚を覚える。

    タワ...続きを読む
  • Schoolgirl
    よくよく考えると、ストーリーも人物造形もそう斬新でもない話なんだけど、太宰治の『女生徒』を使ったところがこの小説の「なんかエモい」感を出している。
    九段理江さんの作品はこれまで『School girl』『悪い音楽』『しをかくうま』を読んだ。たぶん九段理江さんはこれからどんどん評価が高まって、文学史に...続きを読む
  • Schoolgirl
    すごく面白かった。表題作の「school girl」と「悪い音楽」の二作品が入っている。特に「悪い音楽」が好きだった。主人公のソナタは、人の心が分からない音楽教師。人の心は分からないが、教師としては職務を淡々とこなしている。世の中では、心!心!心!と、とかく心の大切さが言われるが、本当に心はそんなに...続きを読む
  • Schoolgirl
    理屈に合う話をしている。が、直情剥き出しの主人公に何故か共感しない。苛立ちや違和感を抱きつつも読む手が止まらない。釈然としない魅力があり、後を引かない読後感。
  • Schoolgirl
    太宰は偉大だな、と。この母娘、ものすごくよく似ている。明晰夢を見ているような人は、確かにいる。
    好みとしては「悪い音楽」の方が好き。笑える。
  • Schoolgirl
    「School girl」
    14歳の聡明な少女と、専業主婦の母の設定、太宰治「女生徒」を下敷きにしたところなど、いい感じの小説で、それぞれの気持ちも「わかるわー」となる。
    女3代の因果、次の代はどうなるのかと思うが、もう産まない、ここで止まる可能性も高いよな。少子化って母と娘の物語も家族の物語も縮小...続きを読む
  • Schoolgirl
    高橋源一郎の飛ぶ教室で紹介されていた本。

    ラジオで紹介されていた内容から、もろ芥川賞っぽいちょっと不思議な小説なんだろうと思ていたけれど、2作とも秀作でした!
    源一郎さんが推していたのも眉唾物かなと・・・いやいや私もこれからの作品に期待しています。

    「悪い音楽」中学生と先生の掛け合いが絶妙。
    ...続きを読む
  • Schoolgirl
    2作収録。『school girl』→母と娘の関係は複雑だ。非常に賢く、意識高い系の中学生の娘。しかし彼女はクソ生意気で専業主婦の母親をバカにしている。ただ母娘共通しているのは太宰治の『女生徒』に感銘を受けたところ。とりあえず『女生徒』を事前に読んでいて本当に良かった。さもなくば3ページで挫折してい...続きを読む
  • Schoolgirl
    表題作は芥川賞候補とのこと。

    あ、おもしろい。

    ざっくりとしたイメージとして、直木賞=エンターテイメント、芥川賞=文学的、という印象を持ってしまっていて、どうしてもまず読むならとっつきやすい直木賞からみたいなところがあるのだけれど、芥川賞系な本作は意外なほど読みやすかった。

    とはいえ、Aの立場...続きを読む